見出し画像

まさかの急性心筋梗塞その1

2019年10月21日、月曜日午前8時。 いつもと同じように朝のギンジ(ワンコ5歳)の散歩を済ませて、いつものようにYシャツにアイロンをかけ、朝刊に目を通そうと思っていた時。 胸を締め付けられるような痛みが始まった。 ちょうど1週間前の土・日の朝にも同じような痛みがあって、その時は30分ほどで治まった。 またあの痛みか嫌だなあ、冷や汗出るし、手は冷たくなるし、辛いし・・・なんて考えていたら、あの時と比べ物にならないほどの痛みが襲ってきた。 胸を前からと背中から巨大な万力で、しかも棘だらけの万力でゴリゴリ締め付けられるような、激烈な痛み。 息をするだけでも激痛が。 両膝をつき、両手を前について体を支える形で動けなくなった。 額から冷や汗がぽたぽたと落ちて、両手が氷のように冷たくなっていく。 ああ、これはまずい、かなりまずい事になっている、どうしよう、救急車を呼んだ方が良いんだろうか。 頭の中は意外と冷静に状況を観察している。 右手のすぐ横に携帯電話がある。 これで救急車を呼ばないと、と思っても痛みで1ミリも動けず手を伸ばせない。 カミさんが洗面所で身支度をしている。 早く終わって気が付いてくれないかなあ、気が付いてくれないとまずい事になりそうなんだけどなあ、と考えているうちに痛みがだんだんと首の方に上がってきた。 首が苦しくなって、あごが痛くなって、左肩が痛くなって、背中にも痛みが広がっていった。 ああ、もう息をするのも辛くなってきた、まずいまずいまずい、と思っていた時にカミさんが身支度を終えて「お待ち~♪」と洗面所から出てきた。 「あれ?どうした?ねえ、大丈夫??!!」 やっと気が付いてくれた。 「・・きゅう・・きゅう・・しゃ・・・」 「救急車??!!今呼ぶから、しっかり!!!」 まるで映画かドラマのような見事な切羽詰まった金切り声だなあ、と頭の中だけは冷静だった。 顔は汗だくで歯を食いしばって、蚊の鳴くような声しか出せないくせに。 カミさんが119番したところ、近くの消防署の車は出払っていて、まちなかの本署から行くので時間がかかる、との事。 「早く来てください!!!」と叫ぶカミさん。 「15分かかるって、大丈夫?!我慢できる??がんばって!!」と背中をさすりながら叫ぶカミさん。 背中痛いんだけど、痛すぎて言えない。 15分経っても救急車が来ない。 「どうしたんだろう?まだ来ないよ。ちょっと見てくる!!」と玄関から外を見に行ってしまうカミさん。 おいおい、俺もしかすると死にかけてて、いま目を離すともしかすると死に目に会えなくなっちゃうかもしれないよ??とか冷や汗流しながら考えていた。 ほどなくサイレンの音がして、カミさんが「こっちです!!!」と叫ぶ声も聞こえた。 救急隊の方が家に入ってきたが、「どうしましたか~?」とかなりのんびりした雰囲気。 名前、年齢を聞かれ、とぎれとぎれに答えるのがやっと。 その間に血圧を測られて、指先で血中酸素濃度を測るクリップみたいな機械を指に付けられて、着々と搬送の準備が進められていた。 毛布でくるまれて、ストレッチャーではなく、2人に抱えられて救急車へ運び込まれた。 隣の家の旦那さんが「だいじょうぶかい?」とそばで心配そうに見ていた。  カミさんは自分の車で救急車の後ろをついてくる、という事になった。

近くの病院には断られたようで、20分ほどかかる総合病院へ運ばれる事になった。 救急車に乗せられた頃から少し痛みが治まってきた。 救急隊員の方から聞かれた、MAXを10とすると今の痛みはいくつ?という質問は表現しやすくて良いな、と思った。 「7くらいです。」と答えてしばらくすると病院へ到着。 降ろされて処置室へ運び込まれた頃には「5」くらいになっていた。 注射でもされて薬貰って昼には帰れるかなあ、今週は仕事詰まってるしなあ、なんて考えていたら点滴が開始され、心電図を取られたあたりから雲行きが変わってきた。 先生の人数が増え、エコー検査が始まった頃にはモニターを見ながら「これは・・・」「心電図の○○点が・・・」「至急奥さんを隣の部屋に呼んで下さい」 あれれ、なにかまずい事がおきてる??と思っていたら「しばらく動けなくなるので、おしっこの管を入れますね~」と看護師さんに着ているものを全部脱がされる。 え?おしっこの管?しばらく動けない?なんで??と少々パニクっていたら、「はい、息を吐いてリラックスしてくださいね~」とあそこを引っ張られて、管を突っ込まれた。 「いでででで!!!」なかなか入らず、胸の痛みを上回る激痛! 何度かチャレンジするもぜんぜん入っていかず、ベテランの看護師さんにバトンタッチ。 ディズニーの悪役キャラのようなメークの看護師さんがにっこり笑って「ちょっと痛いけど我慢してね~」 ああ、これは絶対やられちゃう、と覚悟したが痛いものは痛い。 膀胱の中までしっかりと管を挿入されたようで、下腹部がものすごく痛い。 「はい、おしっこ出てきましたよ~、ちゃんと入りましたからね~」 放尿感がずっと続く違和感と鈍くて重い痛み。 これは大変な事になっちゃったな、まいったな、と思っていたら先生から「準備できたので、すぐやりますね。」「何をですか?」「緊急の状況なので、手術します。」「手術?!」「虚血性心疾患、狭心症の状態なので、カテーテル手術を行います。奥様には説明しましたので、手術室に移動しますね。」「・・・あ、そうなんですか・・・」 手術? カテーテル?狭心症??心臓病なの?? 思いもよらない言葉の連続に思考停止状態。 さっきの看護師さんが「がんばってね」と送り出してくれた。 「がんばって」??まさかこれよりもっと痛い事が待ってるの?? 心臓の手術するんなら全身麻酔だよね、寝てるうちに手術が終わって、気が付いたら病室のベッドの上、というパターンだよね、落ち着け落ち着け、大丈夫だ、全身麻酔だ、安心だ!と自分に言い聞かせながらストレッチャーで3階の手術室へ運ばれたのであった。 〈つづく〉

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?