「マリオカート8 デラックス」は、親子で遊べる初めての「マリオカート」かも
Nintendo Switchの「マリオカート8 デラックス」は、ほんと素晴らしいゲームですね。
そんなこと、おまえに言われなくても、とっくに世界中が知ってるよ! だから世界中のゲームファンが夢中になっているんじゃないか! ――と言われたならば、たしかに返す言葉はありません。
それでも、今回の「マリオカート8 デラックス」が、シリーズ史上もっとも「初心者向けのマリオカート」であり、シリーズ史上もっとも幅広い年齢層を楽しませてしまうゲームであることについては、もっともっと絶賛の言葉とともに語られていいんじゃないかなぁ、と思うのです。
5歳くらいなら問題なく遊べると思います。もしかすると、3~4歳の子供でも遊べるんじゃないかな。コントローラーを握るのがやっと、という年齢の子供であっても、ちゃんとゲームを楽しめるよう、このゲーム、いろんな魔法がかかっているんです。
なので、その素晴らしさを、強く語りたいと思っている今日この頃なのです。では、ひとつずつ、ポイント別に解説いたします。
ポイント1・ハンドルアシスト機能
「マリオカート8 デラックス」には、ハンドルアシスト機能というものがついています。
ひらたくいうと、マシンがコースアウトしないよう、自動的にハンドルを切ってくれる機能です。ボーリング場で、低年齢の子供たちが楽しめるよう、ガターに落ちないよう「バンパー」が出てくる機能がついているレーンがあったりするでしょ? あれと同じようなものだと思ってください。マシンがコース外に出てしまいそうになると、くくくっ、と自動的にハンドルが切られて、コースに戻してくれるのです。
え? 勝手にハンドルを切ってくれるの? それって、いくらなんでも過保護すぎないか? と思う方もいるでしょうが、それはゲームに慣れているからこその、いわば傲慢な意見なんですよね。
ゲームに慣れ親しんでいると、ついつい忘れてしまいそうになるのですが、ゲームが下手な人って、ほんと驚くくらい下手です。たとえば、ゲームが下手な人は、レースゲームで、まっすぐマシンを走らせることができなかったりするんですよ。
マシンを直進させることなんて、スティックに触れることなく、アクセルを踏めばいいのですから、誰でもできるはずだ――とゲームに慣れている人は思うわけですが、いやいや、初心者は「触れなくていい」と言われてもスティックに触れるし、触れたが最後、左右にふらふらと蛇行して、まっすぐな道で何度もコースアウトするんです。わたし、ゲーム関連の仕事を何十年もしてきたので、そんな大人たちを、これまでたくさん見てきました。
大人ですら、そういう人はいるんですから、ましてや、小さな子供たちなんて、みんなこうなっちゃうんですよ。まっすぐ走れないんです。レースにならないんです。
レースゲームというのは、みんなで走って一等賞を競い合うというゲームですから、つまりは「かけっこ」と同じです。小さい子供たちでも、その楽しさを味わえるべきジャンルのゲームなんです。にもかかわらず、これまでのレースゲームは、「マシンをまっすぐ走らせること」ができる人にしか楽しめないゲームになっていて、小さな子供たちを切り捨てていたんですよね。
だけど「マリオカート8 デラックス」には、ハンドルアシスト機能がつきました。
どれほどゲームが下手な人であっても、ちゃんとレースを楽しめるようになっているのです。これは、ほんとに素晴らしい機能だと、わたしは思います。
なお、補足しておきますと。
上手くなってくると、この機能は邪魔になってきます。たとえば「あえてコースの外に飛び出る」というテクニックが使えないので、コンマ一秒単位で鎬を削りたいプレイヤーは、OFFにしたほうが速く走れるわけですね。
ポイント2・オートアクセル機能
自動的に、アクセルを踏み続けてくれる機能です。そこそこゲームに慣れた人にとっても、すごく便利な機能でもあります。「マリオカート」シリーズって、原則的にアクセルを踏みっぱなしにするゲームですからね。
通常のレースゲームでは、アクセルを離して減速したほうがカーブが曲がりやすいわけですが、「マリオカート」は逆です。アクセルを踏んだままドリフトした方が鋭角に曲がれます。このため、レース中、みんなアクセルを踏みっぱなしになるんです。
オートアクセル機能は、それを補助してくれる機能です。そこそこ上手い人でも、これはONにしたままでも問題ないでしょう。
とはいえ。
本当にガチで対人レースする場合、「わざと減速するほうがいい」という場面も出てきますので、この機能もOFFにしたほうがいいです。トップと僅差の2位で走っているとき、背後から「トゲゾーこうら(1位のマシンだけを狙って飛んでくるアイテム)」がやってきたとき、爆風に巻き込まれないよう、あえて減速して距離をとる、みたいな場面がわかりやすいでしょうか。
ポイント3・ハンドルアシスト+オートアクセル
さて。上記の2つの機能を、両方ともONにすると、どうなるのでしょうか。
ハンドルアシスト機能をONにすると、マシンはコースアウトすることなく走り続けます。オートアクセル機能をONにすると、マシンは勝手にアクセル全開で走ってくれます。
はい。これによって、マシンは勝手に走り、レースに参加してくれるのです。しかも、けっこう優秀に走ってくれます。
・グランプリモード(1人プレイ用のレースモード)
・排気量50cc(もっとも低速のレース)
・キノコカップ(もっともシンプルなコースでのレース)
という条件下で、ハンドルアシスト機能とオートアクセル機能の両方をONにしてみましょう。そして、コントローラーから手を離してしまいましょう。すると、どうなるか?
マシンは勝手に走り、コースアウトしそうになると勝手にハンドルが切られ、自動的にレースをしてくれます。4つのコースでのレースが終わったときの総合成績は、だいたい1~3位くらいにおさまるはずです。レース中にLボタンを押すことだけを解禁し、的確なタイミングでアイテムを使いさえすれば、総合成績でトップになることも可能です。
わたし、これを試してみたとき、その結果に心から感動しました。
だって、極論、何もしなくても、抜きつ抜かれつの白熱のレースになるんですからね。自動的に上位争いしちゃうのですよ。
つまり、もっとも初心者向けのグランプリであるならば、コントローラーを握るのがやっと、という年齢の子供であっても、てきとうにスティックを倒して、マシンをふらふらと走らせていれば、コースアウトすることなくレースを完走でき、ちゃんといい成績で終えられるよう、きっちりと設計されているってことです。
これって、デパートの屋上などにある、お金を入れるとゆらゆらと揺れるだけの、低年齢向けの自動車の形をした遊具と同じこと。これらの遊具を、子供たちは、運転した気分になってハンドルを切るだけで楽しめてしまうわけですが、それと同じことを「マリオカート8デラックス」は、レースゲームの中に取り込んでいるんですね。
だから、これは3~4歳の子供でも楽しめる、もしかすると史上初のレースゲームなんじゃないかなぁ、そこが素晴らしいよなぁ、と、わたしは強く思ったのですよ。すべての「マリオカート」シリーズを経験している者として断言しますが、「マリオカート8 デラックス」は、シリーズ史上もっとも「初心者向けのマリオカート」です。
結論・だから親子で楽しめる
さっきも書きましたが、レースゲームというのは「かけっこ」みたいなものであり、子供でも楽しめるべきゲームです。
なのに、親子でプレイするのが難しいゲームでもあるのです。レースゲームは、ゲームの腕の差が如実にあらわれるジャンルですから、たとえばわたしが小さな子供(にかぎらず、ゲームが上手くない人)と「マリオカート」をしたら、絶対にわたしが勝っちゃうんです。
「マリオカート」は、うしろを走っ入るマシンほど「強烈なアイテム」が入手できるようになっていて、それによって多少の実力差があっても逆転できることもあるのですが、それはあくまでも多少の実力差しかない場合の話。わたしがゲーム初心者とレ―スをしたら、猛烈な差をつけてぶっちぎってしまいます。
なので、わたしは初心者とレースゲームをするときは、ちょくちょく「接待プレイ」をすることになります。手加減するわけです。ときに接戦を演じて、あと少しで勝てたかもしれないなぁ……と思わせるていどの差をつけつつ勝ってみせたりするわけですね。わたし、こういうプレイが、けっこう得意です。
とはいえ、そういう接待プレイができるのは、前述したように、その人が「マシンをまっすぐ走らせることができる」レベルにないと不可能です。マシンがちょくちょくコースアウトしてしまう人が相手だと、接待しようがないんですよね。
だから、Nintendo Switchの「マリオカート8 デラックス」は、ほんと晴らしいゲームだと思うんですよ。
どんな初心者であっても、絶対にコースアウトしないし、アクセルを踏みっぱなしで走ってくれるのですから、これなら接待するのは簡単です。初心者の人が「なんか、いい勝負ができた」と思えるような、そんな勝負を演出することが、いくらでも可能です。
だから、小さなお子様がいる方は、ぜひ親子でプレイしてほしいなぁと思うのですよ。これまでのレースゲームとは違って、お子様のマシンがしょっちゅうコースアウトしてしまい、それを理由に「つまらない!」とコントローラーを投げ出してしまう心配は、ほとんどないゲームですからね。
あとは、大人の側がほどよく手加減してプレイしてあげれば、その子は、「もうすこしで大人に勝てたのに!」と、きっと楽しくゲームに夢中になってくれることでしょう。
このように、Nintendo Switchの「マリオカート8 デラックス」は、どんなに小さなお子様とのプレイであっても、ちゃんとレースが成立するように設計された、ほんと奇跡のようなゲームなんですよ。ああ、これぞ史上初の「真の意味で、親子で楽しめるマリオカート」だよなぁ! と、感心してしまった次第です。
補足ポイント・さまざまなギミックについて
最後に、コースレイアウトの秀逸さについても、ちょっとだけ触れておきます。
ポイント3の項で紹介したように、グランプリモードのキノコカップで、ハンドルアシストとオートアクセル機能をONにして、コントローラーから手を離してプレイしてみると、このコースレイアウトの秀逸さが、よくわかります。こうすると、ただ眺めているだけで、ゲーム内に出てくるギミックの大半を体験できるよう、ちゃんと設計されているんですよ。
・マリオカートスタジアム……自動的に「ダッシュ板」に乗れて加速できる。ちょっとしたジャンプ台でのジャンプも体験できる。
・ウォーターパーク……水の中での走行が楽しめる。またカイトによるジャンプも楽しめる。
・ドッスンいせき……反重力ゾーンに入り、壁を走れる。
なにひとつ操作しなくても、いきなりマシンが加速したり、ジャンプしたり、壁を走ったりと、マシンが面白い挙動をするのを目撃できるようになっているわけですよ。いやはや、とてつもなく配慮されたコースデザインだなぁ……と感心するしかありません。このゲームの開発スタッフは、ほんと凄いわ。大リスペクトです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?