野安の電子遊戯工房 ~犯罪者がアニメファンだったときのメディアの反応について~
殺人事件などが起きたとき、「犯人はアニメファンだった」ことが判明すると、その点がピックアップされ、アニメが犯罪を誘発したかのようなイメージを漂わせた意見が、ときどき大手メディアで流れることがあります。
これは興味深い現象だよなぁ——と、いつも思います。
根拠もないまま、アニメファンは犯罪者予備軍であるかのような印象を発信されても、「こいつ、馬鹿じゃないの」としか思えないわけですが、世の中には馬鹿がたくさんいるから、そういう意見の持ち主がいるのはしょうがありません。
ただ、とっくに21世紀に突入している現在、いまなお、そんな意見がテレビで流れてしまうことがあるのは、すごく興味深いことだと思うんですよね。
かつては、テレビゲームも、そういう扱いを受けていました。犯罪者が「事前に凶器を準備していた」ということについて、それはRPGで武器を買いそろえるかのようであり、まさしくゲームの悪影響である——といった意見が報じられたこともあったほどです。笑っちゃうくらい滅茶苦茶な論理に基づいたバッシングです。
でも、いまどき、そんなことを大手メディアで発信する人は、ほとんどいなくなっています。
これはゲームだけの話ではありません。かつては「ロックを聴くようなヤツは不良」だったし、「ギターを弾くようなヤツは不良」だったし、それらを青少年と触れさせないようにすべきだ、といった意見が、堂々とまかり通っていた時代もありました。
でも、そういった「馬鹿げた意見」ってのは、時代とともに消えていったんですよね。いまどき、若者がギターを弾いていたからといって、色眼鏡で見られることは、ほぼなくなっています。
こういった例と比較すると、アニメって、ほんと特殊なんですよね。
なにしろ、犯罪が起きたとき「叩かれる」というポジションから、いまなお完全に脱却できていないまま、現在に至っているのです。これって、すごーく興味深いことですよね。
でね。
これって、じつはアニメ業界の落ち度んじゃないかなぁ、と、わたしは思うんですよ。
というのも、いまなおアニメが叩かれ続けている理由のひとつは、アニメ業界が、「きちんと反論してこなかったこと」にあるように思えてならないんです。
テレビなどで「アニメファンは犯罪者予備軍である」といったニュアンスのことが報じられたら、その都度、「その根拠を示してほしい。なんの根拠もないままの意見であるなら、それはわたしたちの作品を愛してくれる皆さんに対する中傷であり、即時の撤回と謝罪を要求する」と申し入れなくちゃいけません。
テレビゲームに関していうと、かつて、その役目の一部を、ゲーム雑誌が担っていたんですよね。
たとえば、ファミ通というゲーム雑誌がありまして、その業界内政治力を理由に、最近では悪く言われたりすることもあるんだけど、もちろん「いいこと」もたくさんしています。そのひとつが、大メディアでゲームバッシングが起きるたび、ひとつひとつ潰しに行ったことなんですね。きちんと正面から正統なクレームをぶつけることで、メディアからの「いわれなき悪意ある意見」を減らしていったんです。
ちゃんとファイティングポーズをとる業界には、大手メディアは、おいそれと手を出さなくなるものなんですよね。そうやって戦う姿勢を見せる努力を、アニメ業界は、ちょっとばかし怠ってきたんじゃないかな、と思うのです。
というか。
これってアニメ業界だけじゃなく、映像産業全体で取り組むべき課題ですよね。本来は。
なにしろ、邦画の売り上げ上位をアニメ作品が席巻するようになっているわけですよ。米アカデミー賞にもアニメ作品の部門が作られる時代ですよ。ならば、大手メディアによるアニメファンに対するいわれなきバッシングに対しては、映画配給会社が、
「わたしたちの作品を愛するお客様に対して、根拠のない中傷はやめていただきたい」
と、正面からクレームをつけるべきですよね。実写映画を撮られている監督の方々も、俳優の方々も、同じ映像作品を作っている仲間として、ことあるごとに「根拠なく、アニメファンを悪く言うのはやめてほしい」と発信すべきですよ。
そうやってファイティングポーズをとり続ければ、ものの数年で、アニメファンに対する根拠のないバッシングなんか、大手メディアから消えるんじゃないかなぁ。大手メディアって、きっちりとした正当なクレームに対しては、けっこう素直ですからね。
とまあ、馬鹿正直な正論を書いてみたわけですが。
とはいえ、本当は、ベテランのアニメの制作者が「アニメばかり見るようなヤツはダメ」みたいなことを口にしちゃったりするのを、とにかく黙らせるのが先決だったりするのかもしれませんね(笑)。
まあ、他にも、すこしだけ言いたいことはあるけれど、無駄に敵を作りたくないので、このへんで止めておきましょうか。わたし、そういうところが小市民なのです。
(2018/05/22)
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