貧乏でも食べたい
農家のセガレ、赤村君とフルーツが喰えないという話しをする。赤村君曰く、今年は特に異常なんだとか。
っつーか、買えなくなったよな。フルーツ。手頃に喰える価格のものがない。
一昔前だと、駅前なんかでイビツだったりキズモノだったり未成熟だったりの果物を売ってたもんで、そんなもんで栄養補給をしていた。キズモノでも、味が悪くても、1部傷んでいても、好きな果物だったら大した問題じゃなかったんだな。
俺は桃、特に硬い桃に目がなかったんで、桃を見れば必ず箱買い。夏は食事が桃だったもんだ。酸っぱくて硬くても問題ない。
赤村君が言うには、まず、四方山色々有象無象がうるさい。
隣より安く売るとうるさいし、規定とやらの大きさに合ってないとうるさいし、イビツだとうるさいし、キズモノはうるさいし、虫食いだとうるさいし、傷んでいるとうるさいし、色が薄いとうるさいし、甘味がやたらないとうるさいし、あぁうるせぇよ黙って喰えようるせぇよってくらいうるさい、らしい。
自然のものを完璧にコントロールなんて出来ない、らしい。
それに、安く売った場合、安定して大量に売れないと利益が出ないから、フルーツ離れの進んだ日本では安売り作戦は続かない。
客のコントロールも不可能。
結果として、なんとか付加価値をつけ、高値で売るのが1番間違いがないらしい。
で、貧乏人はフルーツを喰うな、と、自然になってしまう。農家だって儲けて、自分の子供に良いもの喰わせたいしな。
また行政も敵に回りがちなんだとか。
『オマエラ死ねよ』って役人はいないようだが、ガイドラインみたいなもんから一歩外れると、途端に立ち行かなくなるくらいガンジガラメなんだと。
ルール、ルールと杓子定規に線を引きまくった結果、より、事態が昏迷を深めてしまったそうな。
えすでーじーずとか、大人の事情もからむしな。
とはいえ、自分で果物を作る土地も知恵もなく、栄養補給に錠剤を充てがうのも肝臓壊したり腎臓こわしたり、様々な問題があるから、
バベルの塔のように高く高く価格の上がったフルーツを、泣きながら黙って喰うより仕方がない。
神様、これは我々に下された罰なのですか?
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