脈
血を見るまで掴まれて、地面と衝突する半歩手間まで揺さぶられないと、この口を開く事は出来ない。
散乱した光を真正面から受け止める。
そこで初めて屈折を確認する。
きっと今なら、たとえ暗闇の中だろうと、その胸ぐらを観測出来る。その爪の先まで再現出来る。
いっそ失いたかった。そうはさせなかった。それこそが本当だから。
二日を過ぎても剥がせなかった湿布や、取り込めないまま雨の日を迎えた洗濯物とか。換気を怠った数日前のこの部屋も、きっとそうだ。
内臓を焼いて歩くアルコールも。それでも耳を傾けざるを得ないその声も。
分かってる。
分かってた。
分からない。
きっとずっとそうかもしれない。
だから手をつなごう。
その目を知ってる。
起き上がれるまで起き上がらなくていい。
起き上がれるまで。
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