高尾瑠とは?-「不敵な笑み」から漂うSB像- by T

高尾瑠とは何者か。DAZNの画面に映る彼を見て、ここ最近毎試合筆者は思う。彼がアップでカメラに映されるシーンは幾度となくあるが、ほぼ毎回共通していることがある。

そう、彼は不敵な笑みを浮かべているのである。なんなら表情とその直前のプレーの顛末を合わせて見れば、ヘラヘラしているように見える時すらある。

「ヘラヘラしてないよ!そもそも笑ってなどいない!」と思う人がいるかも知れない。しかし、筆者には笑っているようにしか見えない。

さて、彼のプレーについて。ディフェンス面に関しては、ここでは触れないでおこう。着目は、ポゼッションにおいて彼が果たす機能である。

高尾の特長のひとつ。ボールロストが少ない。最終ラインでボールを回しているときに、高尾にややファジーなボールが入ることがままある。そうなると高尾は、絶妙な置き所にトラップしてプレッシャーを躱し、簡単なボールを周囲につける、というのが言わば「お決まり」になっていると思う。これこそが高尾の真骨頂であろう。

少し前までのガンバ大阪には、遠藤保仁が居た。無論近年はその役割が低下減少傾向だったとは言え、彼がチーム全体のパス回しを安定化させていたのは言うまでもない。

勿論今のガンバも、山本や矢島と言ったパス回しのスタビライザーとなり得るボランチを擁している。しかし遠藤保仁の穴を「完全に」埋めてしまえるボランチなど、高望みと言うほかない。もし居たとしてもすぐに海外行きだろう。

遠藤保仁なきガンバには、ボランチ以外のポジションにパス回しでの主役級ロールを任せるだけの理由がある。そしてそれが高尾の役割なのだろう。

右SBというポジションは確かにその役割に適していると思う。SBは最終ラインであると同時に、3列目にあたる高さを取ることもできる。CBやボランチからすれば、GKの次に安心してパスできる場所ではないだろうか。そして、左サイドはどちらかというと突破するサイドという位置づけがガンバにはある。

これは宇佐美、倉田という選手がいる以上自然な流れだ。であるならば、左SBにはオーバーラップで違いを生み出すことが求められる。実際、福田と藤春の2選手の起用にはそういった意図があるだろう。

かくして、右SBにパスワークの安定化への寄与を要求するのが現ガンバにとって適している。ここで、筆者はもう一度高尾の表情を指摘したい。あの表情こそ、今求められる役割への資質を証明しているのではないか。私は、遠藤保仁がそうだったように、彼にも"余裕"があるのだと見る。だからこそ、「トラップではがす」と言ったプレーがしばしば見られるのだろう。

そういう文脈で、彼は神戸の西大伍に似ているように思う。西が神戸に移籍した際、偽SBという言葉がたびたび聞かれた記憶があるが、高尾は偽SBをこなしている、と言えるかも知れない。

三浦昌子キムという3CBを採用した(出来た)一時期、ガンバはその豪華守備陣に反して芳しくない成績だった。これはその3人を使えば高尾を使えないというジレンマによるものだったのではないか。

今現在台所事情もあり、高尾は安定して出場を続けている。仮にチーム好調の要因に高尾があったとして、豪華CB陣が全員帰還したあと、高尾をどう処遇するのだろうか。私の推測が正しいとして、宮本監督は確信犯的に高尾に役割を付与しているのだろうか。その答えは、あの3人が揃えばわかることだろう。

いずれにしても、高尾と3人のCBの行く末に注目したい。ちなみに、筆者は独断と偏見で、高尾が将来代表入りすると確信している。

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