【ウォー・オブ・シャドウズ、ザ・アウトカム】#2 (忍殺二次創作)

「グワーッ!」エンマソルジャーは自らの左手のエンコ(小指のことである)をケジメし、それを白い布に包んで懐にしまった。彼は常にケジメが行えるようにドスと板を持ち歩いている。彼が所属していたヤクザクランで「かんたんケジメセット」として配給されていたものである。

「ハァーッ……」エンマソルジャーは慣れた手つきでケジメした小指を中心として左手に包帯を巻いていく。タタミ二畳前には葉巻をくわえたハーフの少年と、傷だらけの身体の上からジューウェア型ニンジャ装束を纏ったニンジャが居る。エンマソルジャーはドゲザした。

「すンません、ラオモト=サン」「御託は良い」ラオモト・チバはグンバイをエンマソルジャーに向け、冷徹な目で彼を見た。「おめおめと戻ってきた理由、筋が通ったものだろうな」「えェ」エンマソルジャーはドゲザしながら言った。ネヴァーモアが懐疑的に見つめる。

「その前にラオモト=サン」「なんだ」エンマソルジャーはドゲザを終え、セイザしながらチバの目を見た。「タバコ、吸っても良いですか」これに対しネヴァーモアが強烈な視線を向ける。チバはこれを制した。「お前は、ソウカイヤ時代もそうだったのか?」「そうです」

チバとエンマソルジャーは暫し視線を向け合っていた。一分後、チバはグンバイを降ろしてエンマソルジャーに言った。「構わん。ただし、一本だけだ」チバは葉巻を指で掴み、煙を吐き出しながらエンマソルジャーを見た。エンマソルジャーは拳をタタミに押しつけ、頭を下げた。

エンマソルジャーは懐からタバコを取り出す。銘柄は「ドサンコのヒグマ」だ。彼はそこから一本だけ取り出すと、火を点けた。「フー……」彼のグレーのヤクザスーツには重金属酸性雨がしみ込んでいる。透けた白いYシャツからは上腕二頭筋に彫られた牛頭馬頭のイレズミが見える。

「……命名教会のゴッドファーザー=サンは実際用心深い男でした」エンマソルジャーが口を開く。「それで?」「ハイウェイを走行中、ヤツが雇ったと思われる傭われニンジャ達に襲われましてね」「それで貴様は尻尾を巻いて逃げたと?」「…似たようなもんですな」「フン」

チバは葉巻をくわえる。「それで、ニンジャ達の名前は?」「チカテツ、バタリングラム、ハタモトライノ、です」エンマソルジャーは疲れに喘ぎながら述べる。「……どれもセクトのミッションを邪魔するニンジャ達だな。それで、どうした?」「分かりません。…ですが」「が?」

エンマソルジャーが落ちた灰を自らつかみ取る。「アマクダリ・ネットでアクシスのホンマルから連絡が有りましてね」「……なんだと?」チバが怪訝な目を向ける。「内容は」「……もう一人アクシスを派遣する、とのことでした」エンマソルジャーは静かに言った。

「それが誰なのかは分かりません」チバはそれを聞くと、苛立を一瞬表情に現した。エンマソルジャーは知っている。チバに実権がないことを。真の実権はあのアガメムノンが握っているという事を。しかしエンマソルジャーはソレを口に出さなかった。帝の忠犬と彼は視線を交わした。

「……わかった」チバが切り出した。「お前は休め。エンマソルジャー」「それはできません」エンマソルジャーが立ち上がった。「……これは命令だぞ、エンマソルジャー」「スミマセン。それでもです」エンマソルジャーはスーツを整えた。「…何故だ?」「理由はあります」

エンマソルジャーの目は燃えていた。彼の身体からはソンケイのオーラが溢れ出ている。彼がヤクザであった頃、必死に積んだソンケイだ。「俺は根っからのヤクザなんですよ。ラオモト=サン。ニンジャである以前に、俺はヤクザなんです。これは俺のケジメなんです」

エンマソルジャーは続けた。「エンコ詰めただけで、ケジメがとれますか?とれないんですよ」彼は頭を下げた。チバはそれを一瞥し、呆れた声で言った。「……勝手にしろ。僕はお前がブザマに死のうと、脳の片隅にも置かん」エンマソルジャーは「ハイ」と答えた。

エンマソルジャーは退室した。フスマを閉める際、彼はネヴァーモアと再び視線を交わした。彼らは同じヤクザ出身のニンジャ同士、何かを通じ合わせた。チバは静かになった部屋で呟いた。「……ケジメの血痕くらい拭いていくのがマナーだろうが。バカなヤツだ」

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ジャージャカジャカジャカジャカ!!「うるせえ!」ジューテイオンがシートを蹴りつけた。「お前バカか?」デモニックグレイヴが気だるげに返した。「大体よォー、なんで俺たちまで巻き込むんだ?」ジューテイオンがデモニックグレイヴに訪ねる。「そらぁ、アレよ」「ア?」

デモニックグレイヴがデータ素子を睨みながら言う。「何かあった時に散開できるだろ。……お前アマクダリと一人で戦えっつーのか?アホか?」「アホじゃねえ!」ジューテイオンが噛み付く。「イヤーッ!」「グワーッ!」頭突き!ジューテイオンはシートに身体を沈ませる。 

「でもよー」ブラッディスウェットが運転しながら訪ねる。「そのイグザイラー=サンっていうニンジャ、ホントにアマクダリに泡拭かせられるようなモンなの?」「あの神父がそう言うんだからそうなんだろ」デモニックグレイヴが言う。「信用ならねえ」と、ジューテイオン。

「でもよ」ブラッディスウェットが言う。「俺、アマクダリなんかとかち合うの嫌だぜ」「ビビってのか?」デモニックグレイヴが腕を組み、彼を睨んだ。「別にビビッてねェけどよ」「じゃあ、なんだよ」「俺はニチョームの面々みたいになるのは、嫌なんだよ」

「安心しろよ」デモニックグレイヴが携帯UNIX端末をブラッディスウェットに見せた。彼は端末に映っているIRCログを見て、絶句した。「オイッ!お前、どうやってコイツとコンタクトとったんだよ!」「なんだよ!」ジューテイオンが見る。「…ア?コイツだと!?」

「あの神父様はすげえぞ」デモニックグレイヴはにやりと笑った。「アマクダリだろうがなんだろうが、な」彼はUNIX端末をジャケットの中にしまう。「さあ飛ばすぜ。合流地点はマルノウチだ!飛ばせ!」「わーッたよ畜生が!飛ばせばいいんだろ!」武装SUVが走り出す!

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同時刻、命名教会では激しいイクサが繰り広げられていた!ムシュスーとエボニーアワビの活躍によって未だ教会内に敵は攻め込んできていないが、突破されるのも時間の問題だ。「イヤーッ!」エボニーアワビはガルシアと彫られたカタナを振るった!

「イヤーッ!」ダークサザエはブリッジ回避!「ガルシアか!」ダークサザエは下卑た笑みを浮かべながら言った。「ザイバツで支給されているカタナだろう。よく手に入れたものだ」「ルートはお教えしませんよ」エボニーアワビは追撃態勢に入る。「必要も無い!」

ダークサザエはルーンカタカナで「ウ ミ ノ サ チ」と刻まれた巨大なカタナを構える。「中々入れさせてはくれないらしい」隣にエメラルドブルースが立ち、チェーンブレイドを構えた。後方にはバリスタがいる。「イグザイラーはここにいるはずだ。必ず押し入れ!」

「イヤーッ!」エボニーアワビがカタナを水平に構える。これはサンダン・ツキ!「イヤーッ!」キィンという金属音と共に、サンダン・ツキは二発目で止められる。ダークサザエ!ウミノサチを盾代わりにし防御!「イヤーッ!」その上からエメラルドブルースが剣を振り下ろす!

「イヤーッ!」「グワーッ!」ムシュスーがボーの端を持ちツキを繰り出す!エメラルドブルースは腹を殴打され落下!「イヤーッ!」バリスタがクナイ・ダートを十発投げる!「イヤーッ!」ムシュスーはこれをボーを回転させる事で防いだ!タツジン!

「イヤーッ!」エボニーアワビがガルシアを水平に振るった「イヤーッ!」ダークサザエは跳躍!「甘い!イヤーッ!」ムシュスーがボーを突きだす!「イヤーッ!」それを復帰したエメラルドブルースが妨害!カマキリ・トビゲリ!「グワーッ!」ムシュスーが吹き飛ぶ!

だがムシュスーは空中で体勢を立て直し、教会の外壁を蹴って追撃!「イヤーッ!」エメラルドブルースは襲いかかってきたボーをチョップで受け止める。「イヤッ、イヤッ、イヤーッ!」ムシュスーはボーを巧みに振り回し、更に追撃!「イヤーッ!」敵も応戦!

「イイィィィヤアァァァーッ!」ムシュスーは目にも止まらぬ高速ボー捌きを披露!「イーヤヤヤヤ!」エメラルドブルースもまた、高速でポン・パンチを繰り出す事により応戦!しかし!「グワーッ!」競り負ける!「グワーーーーーッ!」ガガガガガ!

エメラルドブルースが吹き飛び、バオバブの木に衝突する。「イヤーッ!」ムシュスーが追撃の如くボーを回転しながら接近す。「イヤーッ!」エメラルドブルースはチェーンブレイドを構え、ボーと激しく打ち合う!「イヤーッ!」「イヤーッ!」

「イヤーッ!」ムシュスーがボーに備わった秘密のスイッチを押す。ガコン!ボーが半分に割れると同時に、その両方の先端から刃が出現する。 両刃のナギナタめいた武器を二つ持ち、ムシュスーはそれをくるくると器用に回す。タツジン!

「曲芸師が!」エメラルドブルースは吐き捨てるとチェーンブレイドを硬着させ、横から斬り掛かる。「イヤーッ!」ムシュスーは跳躍回転し、ダブル・ボー・ブレイドを振りかざした。ZBBBBBBBN!高速のカラテ!「アバーッ!」エメラルドブルースに深い傷!ムシュスーはカイシャクせんと差し迫る。

「イヤーッ!」だがエンデューロが突如エントリーし、エメラルドブルースの腕を掴みリキシャーへ投擲!「アバーッ!」「これ以上一人でも死なせれば、ビズにならないものでな」エンデューロは再びリキシャーを戻し静観に入る。「ウヌーッ!」エメラルドブルースが呻く。

「ハ、簡単にやられますな!」ダークサザエが嘲笑し、ウミノサチを構えた。巨大な刀身に彫られたルーンカタカナが怪しく発光すれば、対峙するエボニーアワビを紫の光で照らしてゆく。「だが安心しなさい。全てこの俺が倒してやろう……!」ダークサザエは叫んだ。

「イヤーッ!」再びのサンダン・ツキ!「イヤーッ!」ダークサザエはブリッジ回避!「イヤーッ!」エボニーアワビは腹を突き刺さんとする!「イヤーッ!」ダークサザエはそれを回転し回避!「イヤーッ!」倒れた体勢から対空トビゲリ!「グワーッ!?エボニーアワビが蹌踉めく!

「イヤーッ!」ダークサザエがウミノサチを横に薙ぎ払う。「イヤーッ!」エボニーアワビは急なしゃがみで回避!しかし反動が襲う!「イヤーッ!」間髪入れずダークサザエが追撃!「イヤーッ!」「グワーッ!」ダークサザエの腹部にケリが直撃!「他愛無し!」

「イヤーッ!」カカカッ!バリスタがクナイ・ダートを投擲しエボニーアワビを拘束!「イヤーッ!」ムシュスーがボーを構えクナイ・ダートを取り除かんと「イヤーッ!」バリスタが妨害!両手にクナイ・ダートを構え、奇妙な型をとる。「ヌゥーッ!」

「イヤーッ!」バリスタは踊るようにクナイ・ダートを投擲!投擲!投擲!「イヤッ、イヤーッ!」ムシュスーはボーを回転させ弾き返す!「イヤーッ!」バリスタはこれをステップで回避すると、その場に有ったハカイシを投擲!「グワーッ!?」これはボーでは防げない!

「イヤーッ!」エボニーアワビは身体を起こす!「イヤーッ!」「グワーッ!」だがダークサザエは彼の胸部を踏みつけ、それを防ぐ!「イヤーッ!」ダークサザエがウミノサチを振り下ろす!これまでか!?だがそのとき、エボニーアワビの腰に吊るしたカタナがひかった!

シュイイイイン……エボニーアワビが腰に吊るしたカタナの名は妖刀『アカガイ』。それが今、妖しげに赤く発光しているではないか!「ア?」ダークサザエがウミノサチを止めた。「……クーックックック!そうか!そうか!そうかそうかそうか!ウワサは本当であったか!」

「なんだと」エボニーアワビが喘ぎながら答える。「探し求めたぞ妖刀アカガイ……それは俺がもらう!」ダークサザエがアカガイに手を出す!「イヤーッ!」その時だ!厳格なカラテシャウトと共に、ダークサザエの視界を、ゴッドファーザーの足が覆い尽くした。

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「何ィーッ!」ブラッディスウェットがハンドルを切る。ギャギャギャ!武装SUVが急カーブし、ビルに激突する。「グワーッ!」「畜生!なんだってんだ!」ジューテイオンが飛び出し、前を見た。おお、見よ!目の前に経つのはグレーのスーツを着たヤクザである!

「ドーモ、エンマソルジャーです」鋼鉄製メンポにタバコを差し込んだニンジャは荒々しくアイサツをした。その左手は包帯で巻かれており、ケジメした痕が見られる。「ドーモ、ジューテイオンです、あちらはデモニックグレイヴ=サンとブラッディスウェット=サンです」 

ジューテイオンは武装SUVから這い出てきた二人のメタルなニンジャを紹介した。武装SUVは半壊している。どうやらブラッディスウェットがブレーキをかけた際、エンマソルジャーが攻撃を仕掛けてきたらしい。車体側面に強烈なケリ・キックの痕が見られた。

「ほう、テメエ、元ソウカイ・ニンジャだな」エンマソルジャーがジューテイオンを見ながら言った。「ア?……何故分かる」「知ってンだよ……お前がソウカイヤに居た頃から」エンマソルジャーはメンポをとってみせた。彼の右頬、そこにはソウカイヤ紋の小さなイレズミがある。

「ヤベェ!」デモニックグレイヴが叫ぶ。「データ素子が!」「嘘だろ!」ブラッディスウェットが半壊した武装SUVを起き上がらせながら言う。「俺は確かに手元に」「探してるのはコイツか?メタルの蛮族ニンジャ」エンマソルジャーが右手を見せた…データ素子がある!

「ご丁寧にカーブしたときに手放してたぜ」エンマソルジャーがデータ素子を首から吊るしたカプセルに入れる。「や、や、ヤッチマッタ!」デモニックグレイヴが叫ぶ。「何やってんだバカ!」ブラッディスウェットが叫ぶ。「うるせェ!」それを、ジューテイオンが一喝した。 

二人はジューテイオンを見た。彼の目はいつにもなくシリアスであった。「おいデモニックグレイヴ=サン。…チカテツ=サン達を連れてこい」ジューテイオンが煤汚れたオリガミ・メールを投げつける。エンマソルジャーは、奥ゆかしくソレを見ていた。「これは」「素子は俺が取り返すからよ」

「一人でやる気かよ!」ブラッディスウェットが「俺も残る!」と前へ出る。だが「いいから行けッてンだよイディオット共が!俺だって長い事ニンジャやってンだよ!死ぬ訳ねえだろうが!」ジューテイオンが更に一喝!「ファック・オフ!」デモニックグレイヴが駆け出した。

ブラッディスウェットも、ジューテイオンの迫力に負け走り出す。彼らが渡されたオリガミ・メールに記された名前は三人。「チカテツ」「バタリングラム」「ハタモトライノ」彼らは元々この先でハスカールというニンジャと合流予定であったが、変更だ。ハスカールには既に連絡済。

「所在地まで書いてやがる」オリガミには詳細な住居が殴り書きされていた。ここから近い。走り去っていった二人を見届けたジューテイオンは、どこからか取り出したのかトドロキ・ツルギを構える。「クッ……腑抜けたな、ジューテイオン=サンよ」「アァ?」

エンマソルジャーはメンポをつけ直した。「一人でやるなンて、ソウカイ・ニンジャらしくねェよ」「うるせェな」ジューテイオンは挑発を一蹴した。……ソウカイヤはもう滅んだんだぜ。ゴチャゴチャ言ってねえで、カラテを構えろよ!」「アァ、そうだな……」

エンマソルジャーはボックス・カラテを構える。ジューテイオンは走り出す。「イヤーッ!」ジューテイオンがトドロキ・ツルギでツキを繰り出す!「イヤーッ!」エンマソルジャーはこれをスウェイで回避!「イヤーッ!」高速カラテパンチ!「グワーッ!」ジューテイオンが呻く! 

「イヤーッ!」ジューテイオンは即復帰し、ボックス・カラテの死角である足下へケリを繰り出す。しかし「イヤーッ!」エンマソルジャーは突如ボックス・カラテの構えを解き、特徴的な蹴りのカラテスタイルを取り反撃!「何ィーッ!?」「テコンドーって知ってるかお前?」

エンマソルジャーは片足を曲げ、ジューテイオンを威嚇した。「テコンドーだと?」ジューテイオンが息を吐いてトドロキ・ツルギを構え直す。「そうだ。パンキドーの影に隠れたからな。俺は嫌いなんだよパンキドー。サボターが嫌いだったのもある。あのファッキンロシア野郎」

「イヤーッ!」ジューテイオンがトドロキ・ツルギを振るいだす!ゴオオーン!バスドラムめいた轟音が鳴り響き、巨大な音の衝撃波がエンマソルジャーを襲う!「グワーッ!」エンマソルジャーはたまらず吹き飛ぶ!「イヤーッ!」ジューテイオンはザンシンをきめた。

「イヤーッ!」エンマソルジャーが起き上がり、ボックス・カラテに切り替える。高速連打ブロー!「イヤーッ!」ジューテイオンは左手でカウンター・カラテを繰り出す。「イヤーッ!」エンマソルジャーは即座に切り替え、前蹴りでこれを受け止める。「「ヌゥーッ!」」

「イヤーッ!」ゴオオーン!トドロキ・ツルギが音の衝撃波を繰り出す!「イヤーッ!」だがエンマソルジャーは咄嗟にジューテイオンを踏み台にすると、衝撃波の範囲外である上方へと跳躍!「チィーッ!」「イヤーッ!」間髪入れずエンマソルジャーの踵落し!「グワーッ!」

「弱ェ!」エンマソルジャーが倒れたジューテイオンを蹴り飛ばす。「グワーッ!」ジューテイオンは蹴り飛ばされ、うつ伏せに。そこからゆっくりと立ち上がろうとするも、力が入らない。彼は膝立ての姿勢のままエンマソルジャーを睨みつける。「チィーッ……!」

「……」エンマソルジャーは落ちていた金属パイプを持つ。「テメェはニンジャとしても半端者だ。ソウカイ・ニンジャがどうかも関係ねェ……ガッカリしたぜ。バタリングラム=サンのほうがまだ根性はあったぞ」エンマソルジャーがパイプを引きずりながら近寄っていく。

「ニンジャッてのはよ」エンマソルジャーがタバコを加える。「ヤクザとは違う。イクサに負けたヤツが敗者になるんじゃねえ」彼は呻くジューテイオンを見下ろしながら言った。「最後まで、カラテを構えられなかったヤツが負けるンだよ」タバコの灰が落ちる。

「アッコラー?そうだろが」「グゥーッ……」ジューテイオンの目にはまだ火が灯っている。「……ニンジャの世界にK.O.はねェ」エンマソルジャーはタバコを捨てた。「俺はな、ジューテイオン=サン」彼の目は、シリアスだ。「指の一本や二本失おうがよ……」

「どれだけ蔑まれようと、どれだけ笑われようと……そんな事は、構いやしねェんだ」エンマソルジャーは持った金属パイプを、両手で握りしめる。「命がある限り、俺は何度でも這い上がって、カラテを構える。それがどれだけ惨めだろうが、なんだろうがだ」

「だからよォ」パイプを握りしめる。「テメェみたいな半端者が…一番許せねえんだよ!」エンマソルジャーの表情が強張る…おお、ナムアミダブツ!これはまさしく「閻魔」!「死ねやボケがァァッ!イヤーッ!」パイプを振り下ろす!「イヤーッ!」ジューテイオンはこれを防御! 

「イヤーッ!」ジューテイオンはトドロキ・ツルギを手放し、零距離トビゲリ!「グワーッ!」エンマソルジャーが蹌踉めく!だが彼は執念深くボックス・カラテを構え突撃!高速ブロー!「イヤーッ!」「グワーッ!」エンマソルジャーが叫ぶ!「カラテを構えろやァッ!」

「ウオオオーッ!」ジューテイオンが強烈なカラテパンチを繰り出す「イヤーッ!」エンマソルジャーはこれを防御!だがジューテイオンはそれを上回る反応速度で足下を狙い攻撃!「イヤーッ!」エンマソルジャーはテコンドーに切り替え前蹴り!だがジューテイオンは受け止める!

「さっきからうるせェんだよ……半端者だのなんだのよ!イヤーッ!」「グワーッ!」おお、これはジュー・ジツの禁じ手であるパイルドライバー!「グワーッ!」エンマソルジャーが頭部から血を噴出させる!「舐めんじゃねえぞ!」ジューテイオンが中指を立てた! 

「イヤーッ!」ジューテイオンはカイシャクの足を振り下ろす!「……ザッケンナコラー!」だがそのとき、エンマソルジャーはニンジャですらトリハダを感じてしまうほどの、強烈なヤクザスラングを叫んだ!「ウッ!」ジューテイオンが一瞬怯む!

ジューテイオンは避けようとした。確かに意識した。しかし意識したことが問題であった。既にエンマソルジャーは立ち上がっている。彼は身を捻らせ、強烈な回し蹴りを繰り出したのだ!「イイィィヤアァァーッ!」「グワーーーーーッ!!!」ジューテイオンが壁にめり込む!

「ウオオオーッ!」エンマソルジャーが雄叫びをあげ、ヤクザスーツの上着を脱ぎ捨てた。ネオンの光に照らされるのは、両腕の上腕二頭筋に彫られた牛頭馬頭、そして背中に彫られた閻魔のイレズミ。ジューテイオンが壁から飛び出す。「体力だけは立派じゃねかッコラー……!」 

エンマソルジャーが凄む。「俺ァさっきいったよなァ!どれだけ這いつくばろうと、カラテを構えていりゃァ……男は負けねェンだよ!」エンマソルジャーは今迄の二つのスタイルではなく、無骨なヤクザ・カラテを構えた。「全くその通りだ……」と、ジューテイオン。

「……」「……あァ、確かにテメェの言う通りだぜ」ジューテイオンがトドロキ・ツルギを構えた。「ニンジャはカラテが全てだ。確かにテメェの言う通りカラテが構えられなくなったその時点で負けだ」「その通りだ」「だから……俺もそれを見習わせてもらうぜ。第二ラウンド、始めようぜ」

ジューテイオンはカラテを構えた。エンマソルジャーはジューテイオンの目からソンケイを感じ取った。「イヤーッ!」エンマソルジャーが仕掛ける!ヤクザキックだ!「イヤーッ!」ジューテイオンは思考よりカラテが動いた!トドロキ・ツルギを地面に突き刺す!「何!?」

ゴオオオオオオオーン!!ジゴクのツインバスドラムめいた轟音がエンマソルジャーを襲う!「グワーッ!?」「イヤーッ!」ジューテイオンはその隙を狙い、エンマソルジャーの腹部にトドロキ・ツルギを突き刺した!「グワーッ!」ジューテイオンは、データ素子を奪い取る。

……イィィヤアァァァァァッ!!!」地面の轟音、それはエンマソルジャーの突進ですら怯ませるもの。それを直に流されれば……!ゴオオーン!轟音!「アバババババババババーッッ!」エンマソルジャーの体内で轟音が反響!反響……おお、ナムアミダブツ! 

「アバッ、アババババババーッ!」トドロキ・ツルギが引き抜かれてもなおエンマソルジャーは地面へと横たわり、激しく痙攣!だが!KBOOOOOOM!突如爆発!「チィーッ!」ジューテイオンはトドロキ・ツルギによる音の衝撃波でそれを防護!一体何者か!

KBOOOM!KBOOOOM!既に整備もされず獣道同然となっていたアスファルトにヒビが入る!強烈なミサイル攻撃だ!ジューテイオンは爆風の中からミサイルを発射した何かを見た。おお、ナムアミダブツ……それは人型!ニンジャだというのか!?「何モンだ…!」

爆風の中から姿を現したのはジューテイオンの直感通りニンジャであった!「ドーモ、バンカーバスターです」「チッ!ドーモ、ジューテイオンです!」ジューテイオンがトドロキ・ツルギを構える!「アマクダリか!?テメェは!」「大凡その見解で問題有りません」

バンカーバスターは胸部コンテナよりマイクロミサイルを大量発射!「イヤーッ!」ゴオオーン!しかし音の衝撃波には届かない!「アバババーッ!」痙攣していたエンマソルジャーがミサイルの爆発の影響で吹き飛ぶ!その先は……タマガワ!「ヤ!ラ!レ!ターッ!」 

エンマソルジャーはタマガワに落ちる!「イヤーッ!」ジューテイオンがデータ素子の入ったカプセルをしまいこみ、跳躍!「イヤーッ!」バンカーバスターはフルフェイスメンポの液晶に映ったアマクダリ・セクトのエンブレムを発光させながら後退!

「仲間割れかッ!?」ジューテイオンがトドロキ・ツルギを振りながら問う。「いいえ。エンマソルジャー=サンは任務遂行不可能だと判断し、自主的排除を行った迄です。作戦実行の出来ない劣性遺伝子は排除。オーケー?」バンカーバスターは無機質な声で答えた。

エンマソルジャーは既にトドロキ・ツルギによる轟音を体内に流されている。あの状態で生き残るのはほぼ不可能に近い。だがジューテイオンは、男の決着をつけられなかったことに歯がゆい思いをした。バンカーバスターは全身をサイバネ化した、もはや生身ですら無いニンジャだ。

「データ素子奪回任務を再開、遂行します」バンカーバスターが背中からサイバネ・ウイングを展開し、ブースタを吹かしながら滑空してくる!「イヤーッ!」ジューテイオンはそれを回転回避!「ヘッ……本当は逃げることなんてしたくねえが」彼は己を傷を見た。

IRC端末には分かりやすく「合流成功」の文字が。「バンカーバスター=サンよ!このまま鬼ごっこと洒落込もうぜ!」ジューテイオンは駆け出す!運良くバイク発見!彼はそれにまたがると、全力でアクセルを踏んだ!「目標逃走開始。追撃します」

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ゴッドファーザーはザンシンをきめた。おお……一体何が有ったというのか!?エンデューロはすみやかに倒れ臥すバリスタとダークサザエを回収すると、リキシャーに乗せる。「……」彼は無言のままリキシャーを引き、ネオサイタマ方面へ走っていく。

「神父!」エボニーアワビがイヤシを終えて神父に問いつめる。「何故情報を!」ゴッドファーザーが柔和な笑みを浮かべながら答えた。「そうせねば、皆死んでいたでしょう」「ですが!」「それに」神父が遮った。「既にこの事は協力者の皆様方に連絡してあります」

ゴッドファーザーが続ける。「いいですか、エボニーアワビ=サン。暫くはこの教会は襲われません」「え?」「貴方とムシュスー=サンはこのままある人物と合流し、アマクダリを妨害してください」ゴッドファーザーが厳格に言う。「その人物とは?」「ハスカール=サンです」

ハスカール。金さえあれば傭える非常に強力なニンジャ。アマクダリ・アクシス上位陣とも互角に戦えるほどの実力をもったニンジャ。エボニーアワビはゴッドファーザーの提案に驚いた。その名前を聞くとは思っても居なかったからである。 

元々ハスカールとの合流をするのはデモニックグレイヴ達であった。しかし、想定外の乱入者により中断。それを伝えられたゴッドファーザーは、ハスカール合流者の変更を提案し、許諾された。それがエボニーアワビとムシュスーである。追加金は必要なかったようだ。

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ヨロシサン・プラント。ここに一人のニンジャが運び込まれた。そのニンジャの身体は重金属酸性雨と、何らかの要因による振動を直に浴びた事でボロボロとなっており、辛うじて顔が判別できるほどの酷い損傷であった。そのニンジャは嗄れた声で言う。「なおせ」と。

「アイエエエ…この損傷では難しいですよ」「うるせェ!治せ……俺を戦える身体にまで治せ!」ニンジャは嗄れた声で叫ぶ。ヨロシサンの従業員達は失禁し、おとなしく指示に従う事となった。すぐに治療が始まった。そこに何らかのアクシデントがあろうと、ニンジャには構わない。

「殺す……」ニンジャは上の空で呟いた。「殺す……」エンマソルジャーは復讐の炎に身を焼いた。「殺す……!」彼の背中の閻魔がその目をぎらつかせた。「必ず殺す……!」怨魔が身を捩らせた。「殺してやる!」エンマソルジャーは治療の最中、ニンジャソウルと向き合った。 



【ウォー・オブ・シャドウズ、ザ・アウトカム】#2 おわり。#3 につづく 




 



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