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"Virgin of Nuremberg" MV公開に寄せて

https://youtu.be/6qOw3ONjCkw

ノウルシの新曲のMusic Videoが解禁となった。
名を「Virgin of Nuremberg」という。
直訳は「ニュルンベルクの処女」。
過激な言葉だけれど、これは有名な拷問具の名称だ。
国や地域によって呼ばれ方は異なっていて、こちらの方が聞いたことのある人は多いと思うけれど、別称を「Iron Maiden(アイアン・メイデン/鉄の処女)」という。

マリア像をかたどった棺桶の蓋の内側に棘が付いていて、中に人間を入れて蓋を閉じると棘が突き刺さるという寸法。

過激なモチーフ。

しかしそれ以上に、過去の人間たちが、拷問具という残忍な道具に、聖母マリアという「神聖なるもの」をかたどったその歪な神経こそが最も過激であるように思える。
人間の悪性。

人間は複雑な生き物だ。

「明るい人間」とか「暗い人間」なんていないと思っている。
それはあくまで他人と比較した場合の相対的な程度の話であって、全ての人間に明るいタイミングと暗いタイミングはあるのだ。

同じように、全ての人間に善と悪の両方が兼ね備わっているとも思う。
また、全ての人間に美しさと醜さの両面があるとも思う。
そもそもが善悪だとか美醜だとかいうものは抽象的な概念だから。

それなのに、人間はその悪性を頑なに押し隠し、綺麗なふりをする。
スクリーンの向こうの役者のように。
しかし、幕を隔てたこちら側、観客たちは、それが演技なのだということは最初から了承済みで、騙されたふりをして楽しんでいる。

多かれ少なかれ僕らは美しいし醜い。
それはもう動かしようもない事実で、残念だけど受け入れるしかないのだと思う。

ノウルシのMV第一作、昨年末に公開した「the girl is insomnia」は綺麗でキャッチーなドリームポップ・シューゲイザー。

「綺麗だったね」と、朝焼けに目を奪われる少年と少女の一幕から歌は始まる。

前作で僕らのことを知ってくれた人の中には、ノウルシに綺麗なイメージを抱いていた人もいるのではないかと思う。
それは決して間違ったイメージではないし、紛れもなくノウルシというバンドの一面ではある。

ノウルシという、控えめだが綺麗な花を咲かせる植物があるが、こいつは毒を有していて、おいそれと触れられない。

同じように、ノウルシというバンドにもまた綺麗で優しい一面と、暗く激しい一面がある。
以前からライブを観に来てくれている人には周知のことかも知れないけれど、ここまで振り幅の大きいバンドなのだということを知ってもらいたくて、今回、この曲をMVにした。

前作はしっくりこなかったけれど今作はドンピシャ、という人もいるかも知れない。
前作は好きだったけれど、今作は好きじゃないという人もいるだろう。

今作が表に出ているものとしては最新曲となるので、今後のノウルシはこういう方向に行くのか、とも思われるかも知れないけれど、そういうわけでもない。

ノウルシの持つ二面性を二つのMVで知ってもらって、ようやく自己紹介が済んだと思っている。

この二作のどちらとも全く異なる方向性の曲も既にできているし、今後も自分たちが素直に良いと思えるものを作り続けて行く。

今回、ノウルシってこんな曲もやるのか!
と驚いた方は、次にどんな曲が来るのか、これでいよいよ分からなくなったのではないかと思う。
良い意味で、期待と予想は裏切り続けたい。
音楽とは、というか、表現とは、いつだって自由であるべきだ。

植物の名を冠しておきながら、どこまでも人間くさくて、複雑で単純で、そして不器用に茎を伸ばし続けるノウルシの今後にご期待ください。

Vo/Gt. タジリシュウヘイ

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