新説・アリとキリギリス
勤勉なアリは、冬を越すために必要なものを春、夏、秋と集めては貯めていた。
キリギリスはというと、冬を越すよりも前に荒んでしまいそうな心を慰めるために歌を歌っていた。
「何故冬の準備をしないんだ、遊んでばかりで情けない!」
「遊んでいるわけではないさ。そうだ、君達のために歌うから何か食べるものを分けてくれないか?」
アリは、馬鹿馬鹿しい!とあしらってせっせと働く。
キリギリスは相変わらず歌を歌った。
やがて冬が来て、当然のようにアリはキリギリスを見捨てた。
戸外で凍えて飢え死ぬキリギリスの体がカサカサと朽ちていく間、アリは働いて貯めた備蓄で暮らす。
「外に出られないからする事がないな」
「こんなこともあろうかと、キリギリスの歌を覚えておいて良かった!歌ってやろうか?」
「そりゃあいい、この冬くらいは楽しめそうだ」
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