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2022年11月農業体験民宿始めました。

山梨県南アルプス市で果樹園を運営している農家の7代目 小野 隆です。
小野洋蘭果樹園という名前で出てますので、検索していただければ出てきます。あと電気自動車関係のnoteも書いてます、

小野

さて、このnoteは、農業体験民宿について、どうしてこんなことを始めたのか?どのくらいお金がかかるのか?どのような手続きが必要なのか?
民泊と、民宿でどう違うのか?農業体験民宿を始めるにあたって自分自身が??でひとつひとつ動いていった事を書いていこうと思います。

運営についてと、なんで家探しを始めたか

まずお話を進める前に、この宿の経営者は、私ではなくて、妻の名義で確定申告を行っています。つまり妻の個人事業ということになります。

息子が3人、長男は私と農業を経営し、次男が大学を卒業し公務員に、末っ子は高校を卒業し地元の医療機器製造メーカーへ就職。つまり子育てが終了して、少しほっとしたタイミングで、コロナのパンデミックが日本中を席巻しました。観光果樹園も、お客様を制限し、観光地に出荷していた特産のジャムは販売するお土産屋さんが店を閉め、何とか仕事を繋いでいった2022年の春、山梨県庁近くで安い1戸建てが無いか物件探しを始めました。

息子たちが就職して、自宅から職場までバス通勤を行っていましたが、そんな中で、賃貸で仕事場の近くにアパートでも借りたいという話が出る中、
何気なしに中古の1戸建てを検索すると、中には総額300万くらいの物件が・・・。えっ?こんな値段でも出ているの・・・もちろん甲府駅周辺にはさすがにそんな格安物件はありませんでしたが、調べてみると500万以下の中古住宅も探せばそれなりにあるのです。就職したての息子が賃貸で何年も借りるつもりなら、いっそ中古住宅を購入して、息子が他の地域に転属する際には、住宅ごと貸してしまうのも選択肢としてありかもしれない。

という感じで、予算500万円近辺、県庁へ通勤に便利なバスの路線か甲府駅から通勤できる周辺での物件探しをまあ消極的に行っていたのです。

そんな中で不動産屋さんを回っていた中に、ちょうど長男の同級生が勤めている不動屋さんに出会い、そんな縁で希望の条件を話していた際に話が出たのが、この「上石田のおうち」でした。


上石田のおうち

建築は平成11年と、古民家というほど古くもなく、夫婦で生活している平屋の1戸建てですが、体調を崩した親の介護に便利なように、息子夫婦が県外から二人を呼び寄せて、自分たちの家で面倒をみるということになり、自宅を早く手放したいというお話。早速現地を見に行くと、現在もお住まいになっていることから、家自体はしっかりしていて、コンパクトながら古びた感じもない和風の家でした。ぜひこんな人に住んで欲しいと、580万の希望価格からさらに50万安く契約してくれるという話になり、リフォームが全く必要ない状態で、ほぼ希望通りの価格の家が見つかりました。

自分が使うか、人に貸すのか、それとも

6月に契約を行い、家主さんの引っ越しに合わせハウスクリーニングに入ってもらいました。そのタイミングで障子と畳の入れ替えは実施しました。
もともとそんなに早く家が手に入るとは思っていませんでしたが、では息子引っ越すために家賃を負担するかというと、自分の持ち家には当然家賃補助なんて出ませんから、タダなら喜んで使うけどというもっともな意見。とはいえ、折角の便利な家をそのまま賃貸で貸すと自分たちも活用できないし・・・

それなら流行り出した民泊施設として、自分たちも利用しながら宿泊してもらえばいいんじゃないと軽い気持ちで民泊について調べてみました。

住宅宿泊事業法、いわゆる「民泊新法」

2018年6月より施行された、一般の住宅を宿泊施設として運営し、有料で宿泊客を泊めることが出来る施設のルールを決めた法律になります。
この法律の管轄は山梨県ですと観光文化スポーツ総務課になります。まあ県の観光部署が担当という事ですね。民泊新法による宿泊事業は、知事への届け出で営業ができます。届け出ですから、宿泊施設としての要件を満たしていれば、必ず営業できるということですね。後述の旅館業法による宿泊事業は許可制ですから、申請をして許可証が発行されないと営業が出来ませんので、開業までのハードルがかなり低いのが特徴です。

もちろん旅館業法と比較してハードルが低い分、制限もあります。いちばん分かり易い制限が年間の半分しか宿泊させることが出来ない180日ルールがあります。お住まいの場所によってはさらに短くなるところもありますが、甲府市の場合は180日になります。

それよりも私たちが民泊を行おうと考えた時にハードルになったのが、民泊新法における、宿の管理の方法でした。

民泊には大まかに分けて2つのタイプがあります。
①家主居住型 ②家主不在型
の2つです。家主が住んでいる家の一部をゲストに貸すのが①の家主居住型ですが、これはだれでもなれます。許可も資格もいりません。
ところが②の家主が住んでいない家を貸し出す場合には、宿泊したゲストの管理をきちんとしないと近隣住民や地域とトラブルを起こしたときに問題が発生してしまうので、家主不在型の民泊施設には住宅宿泊管理業者を置かなければなりません。

この住宅宿泊管理業者は、法人でなくとも個人でもなれますが、
個人で住宅宿泊管理業者の登録をする場合、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。

  • 住宅の取引又は管理に関する契約実務を伴う業務に2年以上従事した者

  • 宅地建物取引士の登録を受けている者

  • 管理業務主任者の登録を受けている者

  • 賃貸不動産経営管理士の登録を受けている者

無理やんこんなの、普通の農家がこの要件のどれか一つでも持っているはずなどありません。
ちなみに2025年からはこの要件が緩和されて講義を受講することで資格を取れるようになるみたいですが、2024年現在はいまだに一般の人が住宅宿泊管理業者になるのはハードルが高いですね。

ということで、自宅ではない少し離れたところの住居で自分だけで宿泊業を営むなら、民泊はどこかに管理を頼まなければならないということが分かりました。

さてではもう一方の旅館業法はどうでしょう。

旅館業法は3つ。旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業

こちらは1年を通じて営業できます。というよりできなきゃ困りますよね。
ただし消防法上の規制が厳しい事。営業が届け出ではなく許可制である。
住宅専用地域では営業できないなどのハードルが高くなっています。

また旅館・ホテル営業には、フロントが必要で、さらに1室が7㎡以上の広さも必要です。まあこれははなから除外される許可要件ですね。
また今回は下宿営業も趣旨がちがいますので、残った簡易宿所営業の要件になります。
実は2016年の規制緩和で、この簡易宿所は取得がしやすくなっています。以前は客室に必要な延べ床面積の要件が33㎡以上というのがあって、これは10坪以上ですから、20畳以上の客室が必要だったのです。現在は一人当たり3.3㎡以上の客室になっていますから、今回購入した家ですと、客室に使えるのが、8畳の和室と6畳の洋室の2室ですから、ちょうど7人分の広さがあることになります。

もう一つの選択、農業体験民宿

さて、冒頭に述べましたが、私は農業を職業としています。そして農家の場合、この旅館業法の規制緩和対象となる、農業体験民宿というカテゴリーがあるのです。農家民宿(農林漁業体験民宿)というらしいのですが、もともと農家が自分の家に宿泊者を泊めるために、簡易宿所の必要要件である床面積33㎡以上という要件を規制緩和し農業者が農業体験を行うなどの要件を満たせば、33㎡以下の農家住宅の一部で宿泊できるようにしたというものだったらしいです。しかし33㎡要件はすでに農家民宿以外でも緩和されていますので、実際農家民宿として簡易宿所を取らなくても大丈夫なのですが、消防法の要件が緩和されているなど多少ハードルが下がる部分があるようなので、折角農業者なのですから、この農林漁業体験民宿(私の場合は農業なので農業体験民宿)にチャレンジしてみる事にしたのです。

さて、ここから、小野洋蘭果樹園の宿泊部門として農業体験民宿の開業までの取組が始まりました。不動産の購入が2023年6月30日、そこから宿泊業の許可日が2023年11月1日なります。まずは開業までの約4カ月について見ていきましょう。

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