見出し画像

セミノンフィクション小説「無力の力」(2)

第1章 白いスーツの男 第2回 1993年夏、札幌大通り公園の街角


「ほらあ、お金ちゃんと持っているじゃない?最初から出せばいいのに、ケチるから痛い目に遭うの?分かってる、ああ?」

1993年、夏。

当時17歳の私は札幌の中心街に遊びに来る十代や二十代の娘を狙って、数人で組んでカツアゲに精を出していた。

まず前から歩いて来る娘たちにワザとぶつかって、難癖をつける。

例えば、

「痛ぁい、どうしてくれるの?肩けがしちゃったみたい・・・ねぇ治療費ちょうだいよ、ええ!?」

といったように。

この時、素直に財布を出したらお金を貰ってバイバイ。

でも時々、逆に凄んでくる娘たちもいる。
そういう時は後から横から悪友たちが数人出てきて袋叩きにする。すると、まず100%素直にお金を出してくれる・・・という、卑劣な行為を繰り返していた。カツアゲなんて言葉はマイルド過ぎる、それは犯罪者そのものの行為だった。

お金が入るとカラオケボックスに行って酒を飲んで大騒ぎ。日によってはトルエンを吸引したり、風邪薬を大量に飲んだり咳止めシロップをぐびぐびと飲んで、いわゆる「ラリる」こともあった。

もちろんボックスの中ではセックスをするのも日常茶飯事、まさに私は不良少女の典型だった。

夜は夜で住んでいた児童養護施設から抜け出して暴走族の集会に参加して女王様扱い、時には別のチームの女性と喧嘩・・・高校には通っていたものの出席もそこそこに、学内でも問題を起こして2年時に中退というものだった。
私が後に北海道大学に進学したのは、いわゆる大検によって大学受験をする資格を得ることによるものだ。

一体何人もの人を悲しませたのだろう・・・今でもその自身の数えきれない数々の悪事に対する罪悪感に苛まれ、深夜に目が覚めることが度々ある。犯罪行為をしても何とも思わない犯罪者は確実に存在する。しかし私は真逆であって30年経っても心が痛む日々を過ごしている。

そんな最低な日々を過ごしていたある日、私は「すすきの」で、背の高い中年の男に呼び止められた。

その男、否、恩人との出会いが私の人生のターニングポイントだった。

(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?