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セミノンフィクション小説「無力の力」(1)

第1章 白いスーツの男 第1回 2023年9月

今年の夏は特に暑かった。

否、9月に入っても、この暑さはまだ夏真っ盛りだ。年齢のせいにはしたくはないが、年々暑さが体に堪えてきている気がしなくもない。
その47歳というある程度の年齢の一方で、私は精神的には未熟なところがある・・・私は梨花という名前の双子の姉に精神的に依存しているのだ。

私と同じ47歳だと言うのに、やることなすこと情熱的で社交的の極み、そして太陽のように周りの人の心を照らし続ける姉。対象的に私は容姿は姉と瓜二つ、いわゆるモデル体型だというのに、ジクジクと様々なことを熟考し、仕事のスキルも淡々と積み重ねていくタイプだ。

仕事といえば、私の仕事は警察官僚、否、警察庁入庁だが国家公務員一般職試験から官庁訪問の末に入庁した「準キャリア」なので、総合職試験で入庁した「キャリア」とは出世コースが少々劣る。なので、この「霞が関における官僚」と堂々と霞が関に棲む人間たちに言えるかどうかは分からない・・・民間の人からみればそんなことはどうでも良い話だけれども。

昨日、土曜日。

私は姉ととことん、呑み、この日曜の朝まで語り明かした。そして、姉に詳しく話して居なかった私の過去を事細かに姉に話すと、あの涙とは無縁な明るい姉が涙ぐんでしまった。

驚いたのは、私が十代の頃、不良少女として「札幌・すすきの」にたむろしていた頃に、「姉の恩人の、ある人物」と私も知り合っていたことだ・・・そしてその人物は、私にとっても恩人だ。

今の東京とは比べ物にならないが、その人物と出会ったのも札幌にしては妙に暑い夏だったものだ。

そしてあの藤堂さんも同時期に「札幌・すすきの」で知り合っていたことがわかった・・・彼は私と知っておきながら昨日までその事実を隠していたのだ。

プラグラマティックな私にとって余り信じられないことでもあるが、やはり

「人というのは何らかの共通項があると惹かれ合う」

というものなのだろうか?

余り過去を振り返らず過去を人には話さない私だけれども、姉には話すこと
が出来た・・・姉と再会するまでの、私の人生を。

(続く)

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