見出し画像

プロの積み重ねと努力。試合10秒前の闘い。

noteに対するたくさんのコメントありがとうございます。文章見てもらえるの本当に嬉しいです。

さあ今回は試合内容よりもそれ以外のところを主に書きました。終始ウメハラさんすごい、ウメハラさんすごいと言ってますが大げさではなくリアルに感じた感想ですので、そう思ったんだーくらいに見てもらえたらありがたいです。

ではちょっと長いですがよろしくお願いします。

『第2節の収録後』

第2節の終わりでウメハラさんに飲みに行かないかと誘われた。酒好きアピールをしてて良かったと思った。

過去に酒で失敗して、財布3つ、スマホ4台無くした事のある僕だが‥飲みすぎて電車で乗り過ごし、千葉、神奈川、栃木、茨城と関東ほとんどの駅に行き着いた事のある僕だが‥この時ばかりは酒好きで良かったと心から思った。

飲みに行き、ウメハラさんにこんな事を聞かれた。

「普段どんなお笑いをやってるんですか?」

僕は漫才が多いですと答えながらもこう思っていた。

〝いや、おれの話なんか興味ある?〟

前途したように、酒失敗談しか語れない僕のような売れてないダメ芸人にとって、ウメハラさんのような成功者は眩しすぎる。
だから必然的に

おれなんかの話興味ないでしょ
とか
話聞いてもらう時間申し訳ない

などと考えてしまう。しかしウメハラさんは、どんどん僕を掘り下げる質問を続ける。

「ボケですか?」
「ネタ作る方ですか?」
「ライブとかやってます?」

記者並みに質問を投げかけてくる。聞けばウメハラさんは人間好きらしく人に興味があるからいろいろ聞いてくれるらしい。
僕は単純に嬉しかった。スーパー成功者がゴミ芸人と向き合って正面から対峙してくれている。この人は決して見下していないのだなと感じた。

ウメハラさんは質問を投げかけてくれるだけではなく、こちらから聞いた事にも真剣に答えてくれる。ウメハラさんとの会話で特に印象に残っているのが、メモを取っているという事だ。
ウメハラさんは気づいた事などを逐一メモして大事な場面で確認しているらしい。トッププロの、こういうひた向きな努力を重ねる姿勢はとても刺激になる。さすがだなと益々尊敬し見習おうと思った。

翌日ウメハラさんのツイッターを開くべく何気なく〝梅原大吾〟と検索をかけた。
するとウメハラさんの著書がヒットした。

「勝ち続ける意志力」

ほぅ。なんとも興味深いタイトルだ。若干二日酔いの気だるい状態だったが、五分後には書店に着き本を手に取っていた。
買って読んでみた。本の中にはメモをとる事を習慣づけていると書かれていた。この本が発行されたのは五年ほど前だが、今までずっと、そういう小さな努力を続けているのだと改めて感心させられた。

他にもとても為になる事がたくさん書いてあった。変化をするべきとか芸人にも当てはまる事がいろいろ書いてあった。気になる方は是非とも読んでほしい。
もし読んだ事をウメハラさんに伝えられたら
「ありがとうございます。一冊買っていただいたので僕に50円入ります」という小粋なジョークが聞けるかもしれない。

またもやウメハラさんにモチベーションを上げてもらった。やる気に満ちた僕はストリートファイターの練習に取り掛かろうとしていた。
この日はあらかじめウメハラさんから練習メニューが送られていた為、それに取り組む事にした。内容は以下の通りだ。

「練習メニュー

1起き上がり&飛びをガードした後Exミキサー出す

2ジャンプ攻撃をちゃんと当てる

3ダッシュイーグルスパイクの精度を上げる」

またもや送られて来たのは基本的な内容だった。
気合いを入れて練習した。練習したが、、
この基本的な物すらなかなか上達しない。自分の下手さがとにかく歯がゆかった。
多分これを見越してウメハラさんは詰め込まないように配慮して、基本的な練習メニューのみを与えてくれたのだろう。

毎日数時間練習したが大して上達しないまま時間は過ぎ去り、あっという間に第3節収録日が訪れた。

『第3節』
収録前の楽屋でウメハラさんにこう聞かれた。

「どうですか?調子は」

練習で技について、よくわからない事があった為その事を問いかけてみた。

「この技、出来る時と出来ない時があって何が原因ですかね?」

するとウメハラさんはタダ答えを教えてくれるだけではなく、仕組みまで事細かに説明してくれた。しかもこんな初心者にだ。普通初心者に専門的な事を言っても、どうせわからないだろうと細かく説明しないと思う。

例えば小学生にじゃがいもの調理を教える時どう言うだろうか?

〝この芽の部分は食べられないから、しっかり取ってね〟

これだけ言えば充分だと思う。
しかしウメハラさんの場合はこんな感じだ。

〝じゃがいもには芽って言うのがあるんですけど、その芽には天然毒素であるソラニンやチャコニンが多く含まれているんですよ。これらを多く含むジャガイモを食べると、吐き気や下痢、おう吐、腹痛、頭痛、めまいなどの症状が出ることがあります。だから芽を取り除いてください〟

ハッキリ言って小学生にここまで伝える必要はないと思う。
同様に初心者にもゲームの仕組みまで伝えなくても答えだけ教えれば充分だったと思う。こうすれば解決しますよ。と
しかしウメハラさんの教え方はそうではなかった。ウメハラさんの事細かな教え方を聞いていると、ゲームへの理解を深めてほしいという思いがひしひしと伝わってきた。現にそう言った仕組みを覚えると飲み込みも早くなる気がした。

ウメハラさんは勝つための作戦や戦術の練り方がすごい。現にそれで最強国定を倒す事が出来た。しかしこれだけやってれば勝てるという教え方だけではない。基礎を固めて、しっかり伸ばそうとしてくれる。
忙しいプロがそんな事までしてくれるのが僕は嬉しかった。本当に頑張ろうと思った。

さあ試合開始。
まずはビギナー戦。相手はモデルのパッツンヘアー宮田くん。とにかく優男という印象。

僕はこの時の事をよく覚えている。
試合直前の八田さんからのインタビューで足の震えが止まらなかった。
国定に勝った事で
〝勝ちを期待されている〟と思ってしまったからだ。
国定戦はどうせ負けると気楽に臨めた。
しかし国定に勝ったとなれば他には負けられないと、勝手に気負ってしまった。

試合開始。
指が思うように動かない。出したい技が遅れる。メンタルでこんなに左右されるものかと改めて実感した。試合はなんとか勝てた。勝てたが思うように動けなかった。

ここで僕は理解した。ただのゲームじゃない。これはスポーツだと。
今回記事でいろいろ書いてきて伝えたかったのはそこである。

基礎の反復練習。
情報収集をしてメモを取る。
モチベーションのコントロール。
コーチングの仕方。
必要とされる反射神経。
メンタルの強さ。

どれもスポーツにおいて必要な事だ。
決してスポーツとゲームで優劣をつけるわけではない。ただ競技としてのゲームを知らない人がかなり多い。
ゲームをあまりやらない人がゲームの試合を見たとき
〝座って指を動かしているだけだろ〟と思うかもしれない。現にそう言っているのを聞いた事がある。

しかし実際ゲームの大会では、日々の努力やプレッシャー、メンタル、色んな物との戦いが渦巻いている。
記事を通して、そういう部分もみなさんに伝わったら嬉しく思う。

さあ、続いてハイクラス。オニキ君の試合だ。この日からはオニキ君の試合にも真剣に注目した。
ウメハラさんはオニキ君の事を実力は申し分ないと認めている。やはりここで大事になってくるのは〝メンタル〟だったり〝普段の調子を出す〟という事だった。
オニキ君は負けてしまった。しかしなんて深いんだと思った。実力があっても負けてしまう。
ここでもスポーツとの深い結びつきを再び感じた。

そしてエクストリームクラス。ウメハラさんだ。さあ今日はどんな試合を見せてくれるだウメハラさん。あの覚醒した集中モンスターは現れるのか。そんな事を考えながら後ろから眺めていた。

試合はいつもスタッフさんの誘導で始まる。
「ではキャラクター選択画面で待機してくださいー」
いつものアナウスが入る。

するとここでウメハラさん。なんと、スマホを取り出しLINEを開くのだ。

えぇぇぇぇぇぇーーーーーーーー

うそやん!あの集中力は?!
何?!今からどっかのお姉ちゃんにでもLINEするの?ウメハラさん!!大丈夫?!しっかりして!

こんな事を思いながら動揺していると以前したウメハラさんとの会話を思い出した。

梅原「気になる事とか発見があると〝LINE〟にメモするんですよ」

はっ!!LINEに!!

その時はメモをLINEに?と疑問に思ったが、どうやら画面のスクロールの感じを見るとLINEでうまく項目分けをしてメモとして活用しているようだ。

スタッフさんの
「対戦開始10秒前です!10.9.8..」

試合開始10秒を過ぎても、じっくりメモを読み万全を期すため備えている。

「3.2.1」

カウント3秒前あたりでようやくスマホを置くと一呼吸。「フゥッ!」と一瞬で集中を高めた様子でウメハラさんは試合に臨んだ。

試合は負けてしまった。トッププロ同士の試合は、いくら万全の状態で臨もうが確実な勝利は難しいと聞いた事がある。上に行けば行くほどそうなのだろう。

ただ今回試合内容より凄いものを見せてもらった。試合直前までメモで万全な状態を作るところ、あの時言っていたメモの実際の活用現場。

本来1人の試合であれば、試合の少し前にスマホを確認してから試合に臨めばいい。だが今回はビギナーとハイクラスへのアドバイスがあり自分にだけ集中するわけには行かない。
そこで見せた試合直前1.2分の時間の使い方になんとも感銘を受けた。

努力と積み重ね。とても大事な物を学ばせてもらった。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?