天才じゃなかった

私は何者でもなかった。自己と世界の摩擦に苦しんでいるのではなかった。本当は人に嫌われていないか不安なだけだった。自罰的な思考に苦しめられているわけではなかった。自罰以上に他罰を恐れていたから、自罰で先回りしていただけだった

私は、面倒くさがりだけど人より優秀に思われたくて、人に嫌われたくないけど好かれるのも面倒で、コンプレックス商法が嫌いだけど、美しくなれるなら脱毛も矯正もAGAも肉体改造もやりたくて、知識は欲しいけど努力したくない。そういう人間だった。

天才でも秀才でも、ましてや自ら命を絶つほど追い詰められてもいなかった。

私は、本当にどこにでもいる人だ。 

怒られたくない以上の感情がない。飲み込めるだろうか、このしょうもなさを。

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