平野レミさんの言葉

最愛の夫を失った平野レミが、上野樹里から言われたこととは?「『思い出はつかめないから嫌だ』って話したら…」
2021年4月3日 16:00TOKYO FM+TOKYO FM+
アーティストの坂本美雨がお届けするTOKYO FM「坂本美雨のディアフレンズ」。3月24日(水)の放送は、料理愛好家・シャンソン歌手の平野レミさんが登場。3月9日(火)にエッセイ集「家族の味」(ポプラ社)を出版した平野さんが、2019年に亡くなった夫・和田誠さんとの思い出や、息子・和田唱さん(TRICERATOPS)と、妻の上野樹里さんとのエピソードを語りました。


平野レミさん

◆和田唱・上野樹里夫妻との食事で…

坂本:レミさんは探求心が旺盛ですよね。

平野:そうよ! レストランでおいしいものを食べると困っちゃうよね。例えば、ニンニク醤油なんかも、“何が入っているんだろう?”って思って、いろいろ試したものよ。和田さんが帰ってくると「これでいい?」「いや、ちょっと違うね」なんて言いながら、それでとうとう美味しいニンニク醤油が出来ちゃったりね。それが楽しくて楽しくて。

坂本:和田さんも同じくらい好奇心があったんですね。

平野:和田さんも食べることが大好きだったからね。美雨ちゃん、旦那さんを大事にね。(和田さんが)この世の中から煙になったようにいなくなっちゃって。あんなに好きで好きで、大好きな人がいなくなっちゃったんだから。もうこれはたまんなくて、会いたくて会いたくて、ますます好きになっちゃうんだけど。


会えないってのは、これは苦しいわよ。今まで和田さんの手のひらに乗って、自由に好きなことをやっていたのに、その手のひらがなくなっちゃったから、これからやっと一人前になるって感じ。ここからが私の本当の人生よ。大人になるきっかけだね。


坂本:家で食べるご飯って変わりましたか?

平野:そうね……ご飯はちゃんと食べてるわよ。おいしくできると「はい、和田さんもね」って言って、写真の口元に持っていくの。篠山紀信さんがいい写真を撮ってくれたから、その写真に向かって「お父さんも食べて」って。そうすると、心なしか笑っているみたいなの。

坂本:そうかぁ。声が聞こえるようですね。

平野:そうそう! お茶は毎日淹れて、一度も欠かしたことがないし。

坂本:ずっと喪失感を抱いていらっしゃるんですね。

平野:諦めたほうが楽なんだろうけど、諦めきれないっていうか。諦める薬があったらいいのにねぇ。いつになったらこういう気持ちが晴れるんだろう。でも知り合いに「寂しくてしょうがない。思い出はつかめないからいやだ。悲しい」って言ったら、「息子さんがいるじゃないですか」って言われたの。

たまたまその夜、うちの(和田)唱と、(唱の妻)上野樹里ちゃんが、私のことをご飯に呼んでくれたので、「思い出はつかめないからいやだ」って話をしたら、(樹里ちゃんが)「ほら、唱さんとレミさん、手を出して握手して!」って言って、握手をしたの。

(幼い頃は)小さいもみじのような息子の手が、しっかりした手になっちゃって。息子が、がっちりした手で私の手をぎゅっと握ってくれたの。そのときに「つかめるものがあった! 半分、和田さんだ!」って思ったらうれしくなって、心のつかえがすとーんと取れちゃったの。

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