松本山雅2018シーズンのまとめーその1

大雑把に今シーズンがどんなものだったかを記録しようと思う。

選手の移籍

守備側では那須川と安藤、後藤が退団。怪我の多かったこともあり、ある程度は仕方なかったがそれぞれ特徴を持った選手であった。入団は浦田と安東となる。特に後藤in浦田outで高さの面では収支マイナス。しかし浦田の攻め上がりは後藤にはないことと、去年の編成上の問題で左CBの駒が足りないことを考えれば妥当な選択か。左WBは那須川から下川へ変わる。ここも両者の特徴は異なり、クロス精度の那須川と上下動できるタフネスとアタッキングサードでの仕掛けができる下川の対比を見ると、より多くのボールと人を相手陣地に送り込みたいのだろうというのが見て取れる。
また、夏の移籍で今井を獲得。3CBは浦田、橋内、飯田、當間、安川で回していたが夏以降にけが人が続出。本来はフィジカル自慢のサイドバックだった今井を右CBとして起用することで左の浦田とともに上がれるサイドCBを備えることになる

中盤は前年後半から出番が減っていた宮阪が大分へレンタル、武井が引退ということで中盤の構成力は低下する可能性があった。代わりに入団したのは藤田。スペースケアに長けたボランチで若干岩間とキャラがかぶる。しかしボールの出してとしては岩間より上で縦にパスを通せる器用さも持っている藤田は和製カンテとして1人で2人ぶん守れる選手を獲得した。

前線では鈴木武蔵がレンタルバック、ダビィが契約満了で出番の少なかった選手を整理した形。代わりに入団したのは永井、前田直輝、前田大然、中美と非常に豪華な顔ぶれなのが今年の特徴になる。特にシャドーは既存選手も含めて前田直輝、前田大然、中美、工藤、石原、セルジーニョとむしろ過剰気味。ただ、シーズン当初までは3142の2トップ2インサイドハーフの4枚を攻撃に当てるつもりだったこともあり、そこへの手当が大きくされた選手編成となっている

出場選手の移り変わり

最初の2戦のみ352でそれ以降はいつもの3421で臨んでいる。この変更の割りを一番食ったのが永井である。もともと2トップ向きの選手で前線に1人でなんとかするタイプではない。さらに352の時も2トップを組んだのが高崎と永井で、そもそも高崎が1トップ向きの選手で2トップでは相方の永井とポジションが被ったりして役割がはっきりしなかった。また352でのアンカーの役割は重要で1人で2人ぶん守れる藤田といえどタスクをこなせなかった。そのためやることのはっきりしている3421に第3節とかなり早い時点で変更している。個人的には永井と大然の2トップは見てみたかった。

GKは最後の3試合を除き守田で固定できたことは大きかった。191cmの長身を生かしたセービングとクロス対応でリーグ最少失点34に抑えたことはJ2優勝の原動力になった。また39節大分戦で負傷した守田に変わり3試合に出場した村山は無失点でシーズンを終えることになる。今シーズンは怪我明けのリハビリから始まり、終盤は第2キーパーとして挑む難しいシーズンだったが立派に役割を果たした。さすが選手会長。

3CBは浦田、橋内、飯田を基本軸にけが人に合わせて當間と安川が出場している。しかしその當間と安川自身が怪我で出られないことが多く、その場合は岩間が臨時CBとして出場している。左サイドの浦田と安川の怪我が多く、また夏の移籍で今井が加入したこともあり橋内が左、中央、右と最終ライン全てのポジションでプレーしており大車輪の活躍である。

結局3CBは浦田、橋内、飯田、今井の4人で回すことになる。浦田と今井は攻め上がりに、橋内はスピードあるカバーリング、飯田はハイボールの跳ね返しに特徴がある。リーグ終盤にはこれらを対戦相手に合わせて起用するようになる。

左WBは石原が基本線。シャドーのメンツが足りない場合にはシャドーに石原が入り下川が左WBに起用される。どちらも攻撃に特徴のある選手で守備重視の安川やつなぎ重視の安藤を起用していた時期とは狙いが異なる。特に石原の成長が著しく、攻守両面での活躍がみられ素晴らしいシーズンになった。下川はいいところもあるが悪いところもある。豊富な運動量でアタッキングサードまでボールを運ぶことはできるがそこからのクロスとシュートの精度が低く、ため息で終わってしまうことが多い。ここは改善点である。

右WBは岩上と隼磨がスタメンを分け合うことになる。岩上がスタメンの場合は左WBやシャドーへ正確なサイドチェンジを送りチャンスを作り出した。隼磨の場合は主に守備面での貢献が大きい。岩上がスタメンを失うことになる第30節横浜FC戦では1人少ない横浜に対してかなり低いポジションどりで却ってピンチを招くことになる。岩上はメンタル面で波があり後ろ向きになると立て直せない印象がある。隼磨は安定感のあるプレーでチームを落ち着かせることができる選手であるが、入団当初のような多彩なクロスと精度はみられなくなっている。膝や目の手術などが影響しているのだろうが少々寂しい気もする。

ボランチは藤田とパウリーニョが基本線。夏の天皇杯でパウリーニョが負傷してからは岡本と岩間が出場機会を得ることになるが、リーグ終盤は岩上がスタメンに落ち着く。右WBでスタメンを失った岩上がいない場合、FKのキッカーがセルジーニョになりセットプレイの精度が下がることが影響しているのかもしれない。今年のMVP候補はボランチの藤田。中盤で事前にピンチの目を摘みマイボールにしてくれるのは非常に助かる。運動量が豊富なことと、比較的怪我が少ないこともあって今後の松本山雅の中心選手として活躍が期待される。

シャドーはあまりスタメン固定できた選手はいない。割合として多いのはセルジーニョと大然であるが怪我の影響でこのコンビでのスタメンは16試合に留まる。また、夏の移籍で前田直輝と工藤が退団すると一気に手薄なポジションに早変わりしてしまう。特に引いた相手に対して打開できるスキルを持っていたこの2人がいなくなったことはチームとして大きく、それ以降の得点数が減っている。

今シーズンのシャドーでの最重要人物は前田大然となるだろう。類稀なスピードで相手ディフェンダーをかき乱し、ビルドアップの出口として機能した。大然の先発試合の勝ち点率は驚異の2.46である。アジア大会の招集があり、さらにそこでの怪我で出場機会が減ったことによる山雅としての損失は大きかったと言わざるを得ない。

1トップは我らがエース高崎が基本線でコンディションに応じて永井が出場している。高崎の特徴は強靭なフィジカルによる前線でのポストとサイドへ流れてのキープであるがそこからのシュートの精度が悪く7得点で終わっている。特にプレスの激しい相手との対戦ではビルドアップするよりもロングボールを送る回数が増えるため高崎の起用が優先される。永井は1人でなんとするというより周りとの関係性の中で良さが出るタイプ。あまりプレスをして来ずにミドルゾーンで構えるタイプの相手では優位性がある。アウェイ大宮戦のように(退場者が出たこともあるが)ある程度スペースがある状態でボールを持てると良さが出る。

最終的には勝ち点1の差で優勝が決まっており所属選手誰1人欠けても手にできなかった栄光であろう。また来年も期待したい

その2に続く


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