『かもめ食堂』『東京オアシス』

小林聡美さんのファンなのに、そしてあんなに話題になってた時には観なかったのに、『かもめ食堂』のDVDを買ってようやく観た。
なんか、じんわりした。
聡ちゃんの存在感はすごい。すごいこの人。
表情かなぁ。抑えたような、言いたいことはあるけどあえて言わない感じ。呑み込んでる感じ。自分を律する感じ。

動画配信サービスで『東京オアシス』も見たんだった。
これも、人との距離感が聡ちゃんにしか出せないように感じたんだ。
近くはない。でも遠すぎもしない。
呼びかければ応えてくれる。でも時々は知らんぷりする、そういう感じ。
見てるよ、でも見てないよ。
押しつけのない、サラリとした感じが、それこそサラサラ流れる風のようだ。

前に、聡ちゃんの出演するお芝居を滋賀まで観に行った。生で聡ちゃんが観られることにうれしくて高揚して、ドキドキした。
映画やテレビで観る聡ちゃんだった。
そのお芝居はあまり台詞がなくて、身体の動きがたくさんあった。動きもなんか、聡ちゃんだった。ぜんぶまるごと聡ちゃんだった。
お芝居のあとに特別にトークコーナーがあって、話す聡ちゃんの声を聞けてこれまたうれしくて高揚して、ドキドキした。
お芝居が終わって話しているけれど、どこからどこまでがお芝居で、どこからが素なのかぜんぜんわからない。

その前にも、大阪で聡ちゃん主演のお芝居を観た。これもそんなに台詞が多くなく、流れるような舞台設定を流れるように動いていたのが印象に残っている。

どれも、受け止めてくれる度量や器量、みたいなものを感じたんだ。
軽やかでサラサラしているんだけど、ぐっと肚に力を溜めて、覚悟をしているように思えた。
流れの中に深い箇所がある、渓流のようだ。中に潜れば渦を巻くような深い部分があって、視界も薄暗く圧力もあって自由自在には動けない。
だけど川の表面に出れば、流れは清くて速くて、陽の光を反射してキラキラしている。

来たかったらおいでよ。
見ていてあげるよ。
でも無理強いはしないよ。

いつも聡ちゃんからはそんなふうに感じる。
いつのまにか、聡ちゃんの人となりなど知らないままで、聡ちゃんならどうするのかなぁ、と想像するようになった。
そしてそれはうまく想像できないままだ。でもまぁそれでいいんだ。

憧れの人がいるって、いいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?