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景品表示法における表示主体(小売店)

問題となる状況

景品表示法(不動景品類及び不当表示防止法 以下「景表法」といいます。)では、「事業者」が不当な表示を行うことを禁止しています(景表法第5条)。
小売店が自ら製造した製品・商品を消費者に販売する場合には、当該小売店が景表法上の表示主体に当たることは当然です。
もっとも、実際の商流では製造業者、卸売業者などが介在しており、不当表示を直接的に製品・商品に付したの製造業者や卸売業者という場合も少なくないと思われます。
例えば、本当はルーマニア製の衣料品なのに、卸売業者が「イタリア製」と表示したタグや下げ札をつけて小売店に販売し、小売店がそのまま消費者に販売しているような場合です。このような場合、生の事実としては、小売店は消費者に不当表示がされた製品・商品を販売しているだけであって、自ら直接に不当表示を行った訳ではありません。
では、こうした場合の小売店は、景表法上の表示主体に当たらないのでしょうか。表示主体に当たる場合があるとすれば、どのような場合でしょうか。

判断基準

景表法上の表示主体は「不当な表示についてその内容の決定に関与した事業者」とされています(消費者庁Q&A)。
つまり、上記の例であっても、表示主体と判断される場合があり得るということです。
そして、「決定に関与」とは、自ら又は他の者と共同して積極的に当該表示の内容を決定した場合のみならず、他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた場合や、他の者にその決定をゆだねた場合も含まれるとされています。
また、その不当表示があることについて故意又は過失があることを要しないともされています。
つまり、上記の例でいうと、例えば次のような場合には、不当表示があることについて故意又は過失がなかったとしても、小売業者が表示主体とされるということです。

  • 商談の結果、小売業者がイタリア製という表示をするよう依頼した場合

  • イタリア製であるという誤った説明に依拠して小売業者がイタリア製という表示をするよう決定した場合

  • 白紙委任的に表示内容の決定を委ねた場合

消費者庁Q&A

裁判例

ベイクルーズ事件(東京高裁平成20年5月23日判決  平成19(行ケ)5)

ベイクルーズ事件(東京高裁平成20年5月23日判決  平成19(行ケ)5)

まとめ

上記のとおり、景表法上の表示主体に関しては、景表法の趣旨・目的から幅広に解されているうえ、故意又は過失を要しないともされていますので、結果責任に近いものとなっています。
また、景表法上の表示主体に当たらなかったとしても、不当表示がされた製品・商品を取り扱うこと自体が信用棄損等のレピュテーションリスクにつながる恐れがあります。
したがって、小売業者としては、自社が販売する商品について不当表示がないかどうか、常に注意を怠らないようにするとともに、疑義が生じた場合には事実確認や暫定的な措置など迅速に対応することが必要でしょう。


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