百様の孤独

 鬱勃たる日々のわずかな希みは、前進する足取りが未だ確かにあることだと思う。ただの主観だけど、僕は確かな足取りで明日へ向かっている。

 その道には誰もいない。僕はまぶたを閉じて、陽の当たる小道を歩いている。香箱座りのネコがあくびをしながら僕を見ている。そんな光景を思い浮かべる。春までもう少しのある日のような。
 しかし、遠くには戦争がある。もっと遠くには悲恋の男女がいる。超人的な英雄がいる。
 空を仰ぐと鳥たちが言葉をかけてくる。より高くでは星々の間を行き交う宇宙船が浮かんでいる。
 側には誰一人としていない。しかし、それを孤独だと言うには、いささか安直だ。
 孤独とは外的に一人ぼっちであることでなく、内的に一人ぼっちであることと考える。

 ツァラトゥストラは山に篭ってもなお、孤独ではなかった。言葉を発さぬものたちに囲まれていたからだ。

 僕はこう言った。

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