退職エントリ

現状にべつに不満はないのですが
(というかできればずっと今の環境がいいんですが)
任期数年を残して助教を退職し, 
べつの機関へ任期付技術員として移ります.

任期は短くなるし, 
助教という役職もなくなるし, 
研究分野を変えることになるので

今のポジションでなんかヤバいことあったのか

って思われる方がいらっしゃるかもしれない
でもそうじゃないよってことと, 
転職することになったキッカケをいくつか記録しておこうと思います.

コロナもあって個人的に今回の転職の話をする機会がなかった友人・知人・知り合いの研究者の皆さま宛へのご報告エントリです

もうちょっと突っ込んだ話が聞きたいひとはTwitterでDMかメールください.
Gmailはそのまま使います


任期付き職

一応テニュアトラックということになっていて
毎年研究費もいただいて
授業もdutyはないですが本人が希望すれば教育経験も積める

実際にかなり研究環境が良くて
おかげさまで論文もそこそこ出すことができました
グループ全体で1報/年くらいのこの業界で
自分が深く関わった2年間で片手を超えるだけ出せたのはそういう自由さと潤沢な研究資金および環境のおかげでした
あと良好な人間関係


ただ実態としては誰もテニュア審査を通さないテニュアトラックなわけです
これを糾弾する人もいますが
研究資金を渡して, 
助教としての研究以外のdutyをなくして, 
研究成果を期待し, 
配置定員の枠があれば自大での採用を検討って
これ本来の特任助教の事のようだと思ってます

元々テニュア審査は期待せず
ただの任期付ポジションだと思って赴任したのでこの点では不満はなかった


学内で新しい研究室が立ち上がってそこのポストがあくかなぁと思っていた時期もありましたが諸々あって見送り

(a few person応募のテニュア職を短期間で見たり見なかったり.)


10年制限

任期付で雇用されている場合って10年超えられないんですよね
研究室は資金がそれなりに恵まれていたので
もし現在の助教ポジションでテニュア審査落ちたあとでも
特任助教や特任准教授としてだったら雇えると言っていただけました

でもそれでも10年の壁は越えられない

配置定員枠が空かないと
任期付教員としてしか雇ってもらえないわけで
そうすると着任から10年がmax

配置定員はというと
(あんまり詳しく書かないですが)
ここ2年で順番待ちしてた人たちが昇格したばっかりなので
まぁ10年経っても空かないのが目に見えてる

というか10年後は何してるか

10年経ったら研究の方向性や手法も変わっているかもしれないし
今の研究室も出入りがあってポジションが空くかもしれない

それはもちろんそうなんだけど
後述する理由で
この先数年が分からんってのは人生設計できないなとも思った


実験装置はさすがに耐用年数を超え
いまの環境で戦うのは段々と厳しくなってきている
予算はたくさんつけてもらっているものの
最終的には特推レベルのものが付いて大幅改善しないと
海外勢が新規検出器を作るのを横目に
段々と性能が落ちてくのを補償していくしかない

じゃあそういう大型予算取れるかっていうと
そうでもない
我々以外でも大型予算を欲してる研究はあるし
というかみんな欲しいか

10年後に大学を移らなければいけないって段階で
今とは違う研究になることは必至だけど
一体ほかに何をやるんだろう?

どうせ10年後に研究内容変えるなら
若いうちに変えた方が良いような...

若手重視政策

なんか分からんけど
JSTの次世代なんとかとか
破壊的イノベーションとか
比較的若めの研究者向けの政策が増えてきている気がする

とてもありがたいんだけど
いわゆる団塊の世代がちょうど"若手"じゃなくなったあたりから上記が始まっていて不憫
自分が若手じゃなくなったときまで
定年まで何か政策があるだろうか?
40超えたらポイっとされない?
配置定員はそれくらいの年齢まで順番待ちで全然空かないけど

あと最近は退官/異動後のポストが空くかと思っていたら
女性限定公募として出てきたりして
なんだかなぁと


女性比率, 若手比率を高いほうが評価されるが
予算と配置定員枠が限られてる条件での最適解は

任期付で女性/若手を雇って, 若手じゃなくなったら10年制限でサヨウナラってなるよな...

まぁこれはまた別のお話なので.

家とか子供とか(人生設計)

任期付きポストだとローンが組めない/組める?

妻とそろそろ子供が欲しいな
なんて言っていました

でも数年後にはどこにいるかわからん
という状況ではなかなか難しい
企業の出向と違ってあとで戻ってくるなんてことはないし
自分の親が転勤ばかりで小さい時に辛かったので
あんまりそういう風にしたくないなとも。

家も欲しいな
なんて話していました

でも何年そこにいるか分からんのに家買ってもねぇ
というかローン組めるのか?

実際にはローン組むことはできるみたいです
ただ大学を移るたびに転職扱いになるので
実際には着任して2年目以降なら組める
(けどそこからあと何年そこに居ますか)

自分が転勤した場合
妻は今の会社を辞めることになる
なんか申し訳ないなという気持ちがすごい
あとそうなったらたぶんどう頑張っても世帯年収が大きく下がる

次のポスト

今住んでる地域で新しく施設を作るらしい
20年以上運転予定なものの
現在いるスタッフでは定年を迎えるらしい
で, 建設時からずっとみてくれるスタッフ(これまでの経験問わず)を募集してるらしい

最初はふーんって他人事だったけど
なんか色々とタイミングが良かった

単年度更新の任期付とはいえ
任期無し転換が可能で,
というか長期で見てくれるスタッフを探しているのでたぶん更新されるはず

技術員とは言っても研究者番号はそのままで科研費応募もできるし
今の科研費を継続できるということを強調された
まぁ正直助教という肩書きが欲しいわけじゃなくて, 研究活動が面白いと思ってこの道来ているので肩書きはどうでもいい
給料が悪くなかった(これは重要)

転職

こんな感じで決めた

独り身だったらたぶん続けていた
正直10年経たなくても他のテニュアトラックに乗れただろうし, 研究内容が多少変わってもたぶんどっかでうまいことやっていけると思う
でも家族がいるので出来るだけ今住んでいるところから動きたくなかった

10年制限がなかったらたぶん続けていた
それなりに体力ある研究室だし, 肩書きにこだわらなければ任期付ポストでずっと続けていくこともできた
でも再雇用上限があるからこの選択肢はなかった


漠然とした, 数年後どこで何してるか分からないという将来への不安定さがあった
職を失うほど無能じゃないと思ってるが
家族を持つことの基盤としてはあまりに危ういとも思った

現状に不満はありません, このまま続けられるのなら.

不安を解消してくれて,
何にも知らない人でもウェルカムしてくれるところがあった

今のポストでやれる解析と論文投稿はわりとやり切った感があって一段落していた

いいタイミングでお話しを伺えたことが
今回転職を決めたきっかけでした






(もう日本は基礎科学をやるだけの余裕がない国になってしまったんじゃないだろうか. できるだけ即死は避けて軟着陸させようとしているのならばまぁ上手くいってるんじゃないだろうか...)

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