Tupac Makaveli The Don "The Way He Wanted It" Volume 2

Assassin (DJ King Assassin)がExecutive Producerを務め、Affiliated Recordsというレーベルから発表されたMix Tape、『Tupac Makaveli Tha Don "The Way He Wanted It"』の二作目(以下、「Vol. 2」)の各曲目について調べてみた。

1. The Killuminati

Performed by Makaveli.
Produced by Mike Mosley for Steady Mobbin Productions.
Mike Mosley制作…、ほんまかいな。と思っていたら、七曲目"Cradle 2 the Grave"の終わりあたりに「Mike Mosley … Assassin … Steady Mobbin …」と言っているのが聞こえた。「Da Incredible Liferdef」の「Liferdef」はこのシリーズの「Book 1」の冊子に拠ると「Liferdef UK」という新しいレコードレーベルのことのようで、同社がAssassinに総指揮を依頼し、米西海岸のGangsta Rapから選りすぐって貰ったものを一つの作品にして発表しているらしい。

2. Livin The Thuglife (feat. Assassin)

Performed by Makaveli & Assassin.
Produced by Assassin for Da Incredible Liferdef Steady Mobbin Productions.
なんかどこかで聴き覚えのある歌詞…と思ったら、"R U Still Down ? (Remenber Me)" ('97)の"Open Fire"と同じだった。"Open Fire"の制作者はAkshunという人で、同作附属の冊子に拠ると同仁はSpecial EDのDJ兼楽曲提供者とのこと。ネットで"Open Fire"の原曲を調べてみると、"R U Still Down"に収録されているのとほとんど変わらない…。ということは、"Livin The Thuglife"と題されたこの「Vol. 2」の曲はRemixなのだろうか。それにしても「Livin the Thuglife, Livin the Thuglife, Hey!」というのが"Open Fire"にはないのは、この部分だけどこかから引っ張ってきて取ってつけたのか。謎。
最後にしっかり「Open Fire…」といっているのが聞こえるからやっぱり原曲は"Open Fire"なんだろうな。

3. Throw Ya Gunz Up ! (feat. Redman)

Performed by Redman & Makaveli.
Produced by Assassin for Da Incredible Liferdef Steady Mobbin Productions.
Edited and arranged vocals by Hakaveli aka DJ Hack.
Signatures Havikk, Macadoshis of Thuglife, Money B of Digital Underground.
調べてもOnyxしか出てこない…。曲頭でSouth Central CartelのHavikk(と思しき人)が喋っていてるのが同仁の制作かと思いきや違うのか…?
Redmanの歌い出し、特徴的すぎて誰か別の人のMix Tapeでも聴いた覚えが、と思ったらDJ Green Lanternの"Sirius Bizness"だった。ということはRedmanがそのVerseを披露したというよりは、元の曲があって、それをAssassinが引っ張ってきただけなのでは、と思い聞こえたままに歌詞調べてみると案の定、2004年発表の"Ill at Will EP"収録の"The Saga Continues (Da Countdown)"。'04発表時2Pacは当然他界してこの世の人ではないから、つまりこれは共演ではなく後からくっつけたということになる。

4. Thug Style

Performed by Makaveli.
Produced by Assassin for Da Incredible Liferdef Steady Mobbin Productions.
Edited and arranged by vocals by Hakaveli aka DJ Hack.
Signature Jade Foxx.
二曲目同様、こちらも'97作"R U Still Down"に同題の曲がある。同作の制作はWe Got Kidz Productionsで、原作はChris Rosser/ Conrad Rosser (Bread & Water)とある。前者We Got KidzはThe Outlawzのメンバーの一人、E.D.I. Meanが立ち上げた制作チームなのか、'98年から法人登録され、同仁がCEOに就任している。
https://opencorporates.com/companies/us_ca/C2026086
後者Bread and Waterに就いては全く不詳。

5. Hotel California

(Intermission break)
Performed by Kyle Rifkin.
Kyle Rifkinなる人物に就いては不詳。"Hell Up in Harlem" ('07)という作品を一つ出しているらしいが、それ以外に情報が出ない。このシリーズの「Book 1」に客演しているのが数曲みられる。

6. Watch Me ! (feat. Big Daddy Kane)

Performed by Big Daddy Kane & Makaveli.
Produced by Assassin for Da Incredible Liferdef Steady Mobbin Productions.
Signature by Rob Base from Da Incredible.
'96年3月7日に録音された楽曲で、原題は"Wherever U Are"(或いは"Wherever U R (Sho' Shot)")というらしい。原曲にはコーラスなしでラップのみだが、「Vol. 2」版には男性のコーラスが入っている。Death Row Eastというレーベルを新たに設立する構想が2Pac殺害直前に持ち上がり、Digital Undergroundのダンサーをしていた頃に知り合ったBig Daddy Kaneをその新レーベルに引き込もうと2PacがSuge Knightに推したらしい。それで、Mike Tysonの試合を一緒に観戦したりしながらDeath Rowと親睦を深めたBig Daddy Kaneが2Pacと制作したのが原曲。原曲の制作者は絶対Assassinではないだろうと思いながらも情報皆無で真相不明。

7. Cradle 2 The Grave (feat. Thug Life)

Performed by Makaveli & Thuglife, Rated R, Big Syke, Mopreme, Macadoshis.
Produced by Big Syke & Pro J for Genuine Ent.
何故「Thuglife」(グループ名)と「Rated R, Big Syke, Mopreme, Macadoshis」(メンバー)を並列にするのか分からないがそれは
さておき、この曲にはPro(fessor) J(ay)版とMoe-Z(.M.D.)版というのが存在し、後者は"Thug Life" ('94)収録版。'94発表の単曲"Cradle to the Grave" SIDE Aには四曲収録され、
1. Moe-Z Clean Version 4:50
2. Moe-Z Album Version 6:13
3. Moe-Z Instrumental 6:13
4. Professor Jay Version 6:18
と記載がある。"Thug Life"収録の曲は6:13、「Vol. 2」版は6:17。"Thug Life"の冊子にはProduced by Professor Jayとあるが、誤記載か。どちらが原曲なのかは不明。

8. Sucka 4 Luv (feat. Kyle Rifkin)

Performed by Makaveli & Kyle Rifkin.
Produced by Sho-Down for Rock It Productions.
Edited and arranged vocals by Hakaveli aka DJ Hack.
同名でネットに出回る原曲はGrover Washington, Jr.の"Just the Two of Us"を元ネタに使っているので、こちらは恐らくRemix。因みにネタをBobby Caldwellの"What You Won't Do for Love"に換え、曲名を"Do for Love"に変えたのが死後発表の"R U Still Down ? (Remenber Me)" ('97)に収録されている。制作者はSoulshock and Karlinだが、後にJ Dillaが、自身の制作したThe Pharcyde "Y? (Remix)"を盗用された(クレジットに記載がないまま発表された)と主張し訴えたらしい。
Kyle Rifkin(と思しき人)が歌うコーラスはLuther Ingramの"(If Loving You Is Wrong) I Don't Want to Be Right"か。原曲にこのコーラスはない代わりに、"Do for Love"と聞こえる。Bobby Caldwellの曲とは別のようだが、元ネタが分からない。
Sho-Downなる人物(団体?)をDiscogsで調べると、存在するにはするが、2Pacとの関連性が見出せない。

9. Thugz Get Lonely 2 (feat. Assassin, Gonzoe, Mexicali)

Performed by Makaveli, Assassin, Gonzoe, Mexicali.
Produced by Assassin for Da Incredible Iiferdef Steady Mobbin Productions.
死後にEminem総指揮のもと制作発表された作品"Loyal to the Game"にも同題の楽曲(ft. Nate Dogg)があり、同作の冊子には原曲制作者としてLive Squadと記載がある。原曲はPrinceの"If I Was Your Girlfriend"をネタに使用しているらしい。しかし、原曲とEm版は確かに違うネタでも歌詞が同じなのに、「Vol. 2」版はそもそも歌詞からして全然違う。どこから湧いてきた曲なのか詳細不明。
Gonzoeなる人物はDiscogsに拠るとL.A.の人で、元々Ice Cube繋がりのKausionというグループに所属。いつ頃からか2Pacと親交を深め、The Outlawzにも加入し、2PacからKing Ritzyという二つ名まで貰っていたそうな。
Mexicaliに就ては情報なしだが、California出身のメキシコ系アメリカ人のお友だちを連れてきて参加させたくらいだろう、どうせ。

10. Shock G'z Wordz of Wizdom (Interlude)

Produced by Shock G for Undergraound Railroad.
Shock GがAssassinの名前を呼んでいるのが聞こえるので、恐らくこのMix Tape CDの制作中に吹き込んで貰ったものか。

11. World Wide Dime Pieces (feat. Nice and Smooth & ODB)

Performed by Nice & Smooth, ODB, Makaveli.
Produced by Assassin for Da Incredible Liferdef Steady Mobbin Productions.
ネット上に出回る原曲とは使っているネタが違うため、AssassinのRemixか。また客演の顔ぶれも異なる。Greg Niceは間違いなさそうだが、Smooth Bはいないし、O(l' )D(irty )B(asterd)も出てこない。というか、「Vol. 2」に聞こえる声も本当にODBなのか疑問。確かに「Let me lick you dooooown!!!」はODBにもきこえるが、まさかそこだけ聴いてODBだと勘違いしたのだろうか。実際、ネットにある原曲の客演一覧にいるのはCapital LSという人で、Genius LyricsでもGreg Niceの次はCapital LSになっている。ただ、Capital LSについては情報みつからず。

12. Thug 4 Life (feat. Havikk)

Performed by Makaveli & Havikk from South Central Cartel.
Produced by Cynikal Productions/ Speedy.
Edited and arranged vocals by Hakaveli aka DJ hack.
Signature by Gonzoe.
HavikkはSouth Central Cartelのメンバー。同グループのHavocc(Havocc and Prodejeの片割れ)とは別人。Mobb DeepのHavoc(相方はProdigy)とも勿論別人。ややこしいわ。
そしてこの「Vol. 2」版はやはり原曲ではなくRemixらしい。原曲はDeniece WilliamsのSlip Awayを使ったもっと疾走感ある曲調で、より2Pacらしい感じがする。なぜ死後に出されるRemixがどれもネトネトした気持悪い曲調なのか理解できない。何より2Pacの声とか歌詞に全く合わない。EminemのRemixは中でも2Pacを完全無視しているとしか思われないくらいの論外さだが、同題の曲がやはりEminem総指揮作品"Loyal to the Game"に収録されている。

13. Westcoast Gangsta Team (feat. S.C.C., Ice-T, Spice-1, MC Eiht)

Performed by Makaveli, Big Prod, Havikk, Ice-T, Spice-1, Mc Eiht.
Produced by Prode'Je for Ganksta Made Productions.
Big ProdはProdejeのことで、Prode'JeもProdejeのこと(かと思われる)。ややこいわ。因みにS.C.C.ことSouth Central Cartelにはもう一人Young Prodejeなる人物も在籍している。人を喰ったようなメンバー。
この曲はS.C.C.の二作目" 'N Gatz We Truss"に収録されている"Gangsta Team"を改題しただけのもののようで、客演している殿原の顔ぶれも同じ。

14. Big Tyme (feat. Live Squad)

Performed by LiveSquad & Makaveli.
Produced by Randy "Stretch" Walker for LiveSquad Productions.
これはクレジット嘘つきすぎ。原曲と全然違うし、客演はLive Squadだけになっているのに実際は明らかにまだ他に誰かStretchの前に一人いるし、しかもMajestyが削られて別の誰かに置き換えられている。なにより、曲調がダサい…。Remixする意味あったのか甚だ疑問…。

15. Gotta Get Mine (feat. MC Breed)

Performed by Big Ballin Ass Breed & Makaveli.
Produced by Breed and the D.F.C.
MC BreedのCDでではなく、8 MileのOSTでしか聴いたことないが、ほぼ同じかと思われる。Mix Tape用に若干変えられているところもあるように思うが。

16. Fuck'em All (feat. Outlawz)

Performed by Makaveli & Outlawz.
Produced by Warpath !
Warpath !なる人物の情報は調べても出て来なかったが、この人が制作した楽曲は完全にRemix。原曲は恐らくJohnny "J." Jackson制作に依るもので、2Pac死後の作品"Better Dayz" ('02)に収録されている。Warpath !版は元々曲頭にWarpathに依る語りの部分があり「Warpath Remix … home boy Assassin from Bay Area」と言っているのが聞こえるが、その曲頭の語りが削られている。なんだ、Remixとバレるとまずいことでもあるのか?

17. Untouchable (feat. Lefteye)

Performed by Left Eye & Makaveli.
Produced by Thugmusic.
TLC内に軋轢が生じていた(と言われる)頃にLeft Eyeが発表した初作"Supernova" ('21)に収録の楽曲。2Pac死後に発表された"Pac's Life"にも同名の楽曲(Swizz Beatz Remix)が収録されているが、いづれも原版ではない。但し、Left Eye版はほぼ原曲に近い。原曲にはThe Outlawzが参加している。