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~学びの大事さ~ 歳をとって、あとからわかること

~モデルに学ぶ~

私が、プロセス改善の世界に入ったのは、2002年頃であったと思います。大学を卒業し、サラリーマンになってから、20年ほど、技術者として製品の量産開発や研究試作品の開発や海外製品の生活研究などを担当していました。

それが、突然、上司から“SPIという仕事の話があるねんけど、やってみる?”と電話がありました。“SPI”ってなに?でした。

実際に担当してみると、全社的にSW-CMMを取り上げ、プロセス改善を進めるということがわかりました。さらに、アセスメントもするらしい。確か、1990年頃に、PMMという質問票を見たことがあり、何を書いてあるのかほとんどわからず、どれもチェックがつかなかったことを思い出しました。

それの親戚か??そこから、SW-CMMとの格闘が始まります。

幸い、プロセス改善の社内のコミュニティがあり、社内の各部門から同じような立場で集まった仲間がいました。ほぼ、初めて会う人ばかり。その仲間で、夜遅くまで、飲みながら、SW-CMMの解釈談義に花が咲きました。構成管理って何?品質保証は聞いたことがあるけど、何すんの?わからないことばかりでした。

それまで、SW開発の経験はわずか、入社2年目に開発した4ビットマイコンのアセンブラと研究試作品を動かすためのアセンブラ。量産になったのは、入社5年目、これもまた、4ビットマイコンのアセンブラ。たったこれだけです。いずれも、コードをパソコンに打ち込むだけで、悩むと、フローチャートを書いて、全体を眺めて、再び、コードを打ち込む作業。ソフトウェア要件やソフトウェアアーキテクチャ設計なんて、全く知らずに、過ごしてきました。

それが、いきなり、開発プロセスを作ったり、SW-CMMによるアセスメントを実施したりです。そのとき、わかったのは、学びはとても大事だと思いました。しかも、同じように悩む仲間と一緒の学びはさらに良い!

だんだんと、モデルが好きになってきて、四六時中、モデルの意味や解釈を考えていました。仕事の対象を好きになることが、学びが苦にならないポイントだと、今も思っています。

それから、3年ほど経過し、全社のSEPGを担当している時に、モデルをCMMIに切り替えて、また、格闘の毎日。わざと、わからない言葉で記述しているように思えました。これも、なんとか、仲間との学びでなんとかしのぎました。モデルから学んだことは、今の仕事に活きています。

~経験に学ぶ~

2005年に初めて、JASPICの研究員になりました。

それまで、SEPG Japanの第1回から参加していて、よその会社はこんなことをやっているということは知っていましたが、ふーんというぐらいで、あまり中身がわからず、参考にできないでいました。

しかし、実際に、プロセス改善のコミュニティの場に入ってみると、驚きの連続。みんなが、先生に思えました。分科会の議論の楽しかったこと。朝から、夜中まで、ずっと議論のしっぱなし。高級な議論だけではなく、雑談みたいなところから、いろいろなものを得ることができました。

2011年ぐらいまで、熱心に、分科会で議論をしてきました。学びの場を提供しているJASPICは、プロセス改善にとって、ノウハウの宝庫だと思っています。プロセス改善には教科書はないのです。自分と人の経験から学ぶしかない!今でも、JSAPICの研究員でいます。経験に学ぶことは生涯続くのです。

~国際規格に学ぶ~

2009年に、私にとって大きな転機がありました。当時、車載機器の開発部門に異動しており、機能安全規格 ISO26262との出会いがありました。国際規格との出会いです。それまで、アセスメントモデルばかりでしたが、国際規格と格闘することになりました。

最初は、孤軍奮闘していましたが、徐々に、社内の有志を募り、仲間で学びを始めました。しかし、翻訳し、字面を追うだけで、真の意味合いの理解は難しかったです。その後、2012年に、自動車製造者やサプライヤの機能安全担当が集まり、機能安全規格の解釈を行うコミュニティに参加することになりました。

その後、ISO 26262の第2版の規格審議が終わる、2018年まで継続し、ここで、大いに議論し、多くのことを学び、私自身の機能安全の活動に大きな意味がありました。平行して、2011年から、ISO 26262に対する非安全の開発をカバーする、アセスメントモデルのAutomotive SPICEのコミュニティに参画しました。以降、10年たった今も継続しています。

Automotive SPICEやISO 26262、それらに大きく関連する、ISO/IEC 15288、ISO/IEC 12207、ISO/IEC 29148、ISO/IEC 42010、ISO/IEC 330xシリーズなどの国際規格は、グローバルで、高い知見を有するエキスパートが作成に関与しています。

そういった規格を分析したり、お互いの関係を分析することは非常によい学びになります。国際規格は正しい方向を照らしてくれます。

~最後に~

プロセス改善を推進するには、現場で起こっていることを対策するだけではなく、正しい方向に向けていける知見が必要です。

それには、常に学びの姿勢を忘れずにいることがたいせつです。先達が経験を基にまとめた情報について、自ら学びを求めることがとても大切です。さらに、ひとりぼっちで学ぶのではなく、コミュニティに身を委ねることもよいですね。

(株式会社エーアンドエス・コンサルティング  安倍秀二)