青春かくれんぼ(物語)

私たちはあるかくれんぼをしている。
ルールは簡単。鬼は大人。制限時間は大人になるまで。子供の闇を隠し通せばいいだけ。私たちが漫画で読むような完璧な青春を過ごしていると大人たちに思わせられればいいだけ。

まず、下駄箱に本音を隠す。そして、建前を履く。同じことをしている子を探し、その子とお弁当を食べる。1人の心を許した友達を作るよりも建前だけで繋がれる友達を沢山作る方がいい。文化祭でお揃いの髪型をすることでしか繋がれない友達であっても。

次に、トイレに暗い過去を隠す。もしくは流す。これで下水処理場の大人が何も気づかず処理してくれる。明るさだけで出来た体で挨拶をし、勉強に励み、公園を走り回る。

最後に、人と違うところを机の奥に隠す。分厚いわりに役に立たない国語辞書で押さえておけば出てこない。みんなと同じように学校に来て、授業を受けて、家に帰るのに人と違う部分が出てくるのはなぜだろうか。でもまぁ隠せばいいだけだ。

このかくれんぼに飽きてきたら、たまに失敗してみる。怒ったり、遅刻をしたり、サボったり。明るい子供、友達がいる子供がすれば許されるどころか愛嬌になる。学校行事は最初はダルそうにしながらも最後はしっかりと成功される。

これで私たちは健全な子供になれる。これが私たちの青春であり、大人が望む青春である。


そして、このかくれんぼに勝利する大人はほとんどいない。かくれんぼが始まっていることすら知らない大人か、気付いても気づかないふりをする大人ばかりだ。大人になると子供の頃に見えていたものが見えなくなり、代わりに見たくないものが見えてくるからだろうか。なんでも大人のせいになる社会が嫌になってしまったからだろうか。それでも世の中の真実を見、それに寄り添おうとする大人もきっといるはずだ。




さぁ、私たちはどんな大人になろうか。

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