見出し画像

フリーゲーム『さようなら海底へ』レビュー

このフリーゲームの作者様は*ミ様(@rnoonet)です。不思議な雰囲気のあるアドベンチャーゲームをご紹介させて頂きます。

画面をクリックしていく方式で、そのやり方でエンディング分岐が4つ発生します。海底を走る列車というものに、いつの間にか乗っていた主人公と、対面座席にいつの間にか座っていたヒロインが、何処かの目的地に向かって行くというストーリーです。

周回プレイ推奨となります。何度もこの列車を乗っていく内に、主人公たちの置かれている境遇が、やんわりと伝わってくるようになっています。とはいえ最初に明言しておきますと、どのEDを迎えることになっても、具体的なあれこれが分かる訳ではありません。このゲームは雰囲気を味わう、又は彼らの実際を推測するという他ないのですが、それでもプレイ後は、独特の満足感を得ることになるという、やはり不思議なゲームと言えます。

このゲームの説明文に、「この作品はフィクションです」とありますが、何とこれがゲーム攻略へのヒントとなっています。そうなのです、この作品は「ゲーム」なのだということが真ENDに相当するであろうEND4に辿り着くヒントとなります。ゲームであるということを踏まえて、その上で、少し頭を捻れば、するべきアクションと、解答は分かるでしょう。実に凝ったギミックだと思いました。

雰囲気もそうですが、テキスト自体も、何気ない会話であるようで、意味深さも感じられ、この作品の重要な訴求力になっています。もしかしたら「推測」すること自体が、このゲームの本体なのかもしれませんし、もしくは解釈をプレイヤーに委ねているといったものなのかもしれません。

イラストの雰囲気も線が綺麗に描かれており、その独特さに一役買っています。プレイ体験の中に、この作品の在り方の本懐はあるのだと、私は推測しました。是非とも、全エンドをコンプリートして作品としての全体を味わって頂きたいです。明快さに欠ける、と言われれば、反論できないことかもしれませんが、それでも解釈を委ねられた映画の如く、このゲームもまた、プレイヤー次第であろうことは、その製作意図に明確な、キッパリとした態度を感じます。私は、こういうゲームの在り方もアリだと思います。

この作品の舞台は、何処でもない何処か、という言葉がピッタリかと。出てくる用語も、不可思議な単語があったりするのですが、それがフレーバーとなって、その世界観を構成しています。案外に、万人向けに製作されているなと感じました。欲を言えば、主人公のバックボーン的なものがもう少しあれば、話についていきやすかったかもしれません。しかしそれでは、唐突にそこにいるという状況への没入感が薄れたかもしれませんし、そもそもこれは「ゲーム」ですので、余計な一言だったかもしれませんね。

全体的に青の色のトーンで構成された画面は、スマートな印象を与えてくれます。プレイ時間としては特に長くなることはないでしょうが、それでも、このゲーム体験は大勢の人に味わってもらいたいものでした。私からは多く語ることはありませんが、オススメしたいゲームとしては、もしくはその体験としては、太鼓判を押しても良いものだと思います。

何が実際で、何が夢のようなものなのか。その感覚の揺れと、列車の揺れが見事にリンクして、その夢心地がプレイ体験に昇華されています。効果音やテキストと共に、この世界観に浸ってみては如何でしょうか。

ブラウザ版、DL版ともに上記のリンクから行えます。素敵なゲーム体験をありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?