2019年

2019年


仏壇から線香の香りがする 「除夜の鐘って、何回だっけ?」この時期に物忘れが多くなってきた ばあちゃんの決まり文句 駅のホームでスーツケースを転がし 電光掲示板を眺め携帯電話と照らし合わせる人の姿 数日前のクリスマスが嘘のように染まってしまう年末感が漂う街は雰囲気は嫌いじゃなかった 手書きで『年末年始は休業します』と ばあちゃんの家に来たら 毎回通るお店の看板を見て ふと今年も終わることを実感した


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悩んで迷って手放した居場所は失ってしまえば怖くないことを知った 出来損ないの自分を誰かに見つけて欲しかった 物憂い暮れの春 「令和になっても仲良くしようね」なんてお決まりの台詞だということを知った 遅咲きの桜の木の下で僕の春は終わった

知らずうちに上がっていた鼓動のbpm フィルムみたいな朝焼けが山手線に運ばれる帰路 「お前弄ばれていたんだよ」そう言われて 振り返る駆け引きにはいつも負けてしまっていたことを思い出した帷子時 2番線で見送る君と1番になれなかった僕 糸が解れるように想い出の輪郭も失った

「サンボマスターが好き」そう言った俺を笑って 秋が1番好きだと言った レコード盤でレゲエを聴く ロックなあいつになりたかった 朝が来て欲しくないと願った 夜を使い果たした東北沢のレコードショップ

品川のマンションに向かう道すがら「世紀末のクリスマスに流れる音楽なんだ」って地球が滅亡されるとノストラダムスが予言していた1999年に生まれた あの子に教えてもらった カウントダウンが始まった 気づけば行方不明になっていた恋


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今年は年を改める回数が2回あって 来年は開催が18歳に決まった東京オリンピック 『僕たちはみんな大人になれなかった』あの頃読んだ台詞 今では少しだけ身に染みるようになった 相変わらず初めて会う人には「変わってるね」と言われることがあり それも嫌いにはなれなかった 文章は人の癒し方も心の代弁をしてくれることを知った 


でも、その分言葉で人を傷つけることをを深く知った 背伸びした恋愛より日常を非日常に変えてくれる そんな人が好きだということを知った 平凡な毎日を生きています そんな平凡な毎日を特別に描くように生きています 「今年に忘れ物はありませんか?」大晦日の特番で流れたワンフレーズ 忘れ物なんて抱えきれないものばっかりだよ


常識というレールから外れた 揺れるゴールとループするルーズなsome day すり減ってく日常 いつもなんでもない夜が不安でもがいた夜をかき消した なにもかも嫌になって どうしようもなく苦しくなって涙が止まらない日があって 深夜番組が終わったあと夢と現実のギャップで何も映ってないテレビを見続ける夜も来ると思う そんな時でもその後に 大切な人、大切な何かに出会えて生きてて良かったって思えるさ そうやって僕も信じて生きていくよ

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