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最近買ったBLの話

ややネタバレ注意。あとえっちな内容もあります。露骨表現もあるので苦手な人はプラウザバックよろしくお願いします。


商業BLを買う時に自分は割と作者で買ったりジャケ買い(この場合ジャケ買いという言い方が正しいのかどうかはさて置いて)が多いんだけど事実みんな絵が綺麗。好み。タイトル検索すると好みバレるやつ。
あとはどちらが攻めでどちらが受けかもちょっと気にするけど開いてみたら思っていたカップリングとは上下逆だった!っていうことはままあるのでそんなに当てにはしてないかな?
事実それでショックを受けたことは数えるくらいしかない。

①『俺様デレ期』野々宮ちよ子
②『咥え絵筆に化ける花』百々地さ和
③『セックスセールスドライバー』さばみそ
④『踊る阿呆と腐れ外道  上下』あかねソラ

※敬称略

今回は全部作家買い無しのジャケ買いだったから一種のギャンブルよね。ジャケ買いはギャンブル。表紙の絵は好みでも開いてみたらそんなに好きな絵柄じゃないこともままあるからね。なんて言うんだろう、表紙は写真写りのいいところだけしか見えないから。

①はとにかく頭を使わないでBLを楽しみたいならオススメって感じ。IQ3くらいしかない。10分くらいで読み終わる。面白いのは確か。
ハチャメチャに顔のいい残念美少年とクールな幼馴染(むっつりスケベ)のドタバタラブコメって感じ。
具体的には頭は悪くないはずなのに性的な知識がキスをしたら子どもができちゃう!レベルの受けと全ての性的な話題を避けに避けさせて天使を作り出そうとしたバカ…幼馴染がメインカップリング…

これ幼馴染がマジでやばい。受けがいかがわしい話題に触れないようスマホを持てないように根回ししたり保険の授業は具合の悪いフリをして付き添いさせてサボらせたり……やってることがストーカーそのもの……こわい……好き……おかげで出来た世間知らずの天使が攻の予想を遥か斜めに宇宙までぶっ飛んでしまったせいで攻めが振り回される様も見ていてたのしい。

この作品で好きなのは受けが世間知らずで自信満々のちょっとあれな可愛いあざとい系美少年なんだけどよくある女々しい可愛い受けじゃないところなんだよね。
めちゃくちゃ漢って感じ。
喋り方とかじゃなくて考え方とか切り替えの速さとか……。
最後の「学園のアイドルの座はお前に譲るからしっかり務めろよ!なんたって俺はこれからたった一人のものになるんだから!」ってセリフが凄い好き。

あとこれ最初から矢印が強固で安心して読める。
噛ませ犬ポジションの転校生はいるけどその場を引っかき回すのが好きなだけのちょっかいタイプだから気持ちが揺れたりとか最終的に本気になってた噛ませ犬が振られる……みたいな展開もない。いいアクセント犬。

個人的にBLもので多い(気がする)メインカップリング以外のサブカップリングが好き。
という話でこれその噛ませ犬と主人公たちのもう1人の幼馴染くんがいい雰囲気で終わるのがいいんだよね。
でもくっつくわけでもなければ匂わせも本編はなし。本編はあくまで同級生で噛ませ犬くんは幼馴染くんのそばに居るのが何となく落ち着くな〜(自分にきゃーきゃー言わないから)くらいだったのもいい。カバー下の四コマで「俺たち付き合っちゃう?」ってなんとなく噛ませ犬くんが幼馴染くんに言うシーンがちらっとあるくらい。くっつけーーーー!


②は逆に噛ませ犬くんが少し不憫かなって感じ。ただこれは銭ゲババアが悪いだけでメインカップリングの2人や周辺の良いキャラが悪い訳では無いからヨシ。
ちなみに背表紙にめちゃくちゃ好みの男の子がいて(うわー受け!!!かわいい!この子メインカップリングなの?表紙の受けの子と少し印象違うような……?でもメガネ外すとこんな顔になるのかな?)って買ったんだけど背表紙のどストライク男は噛ませ犬くんでした。
噛ませ犬くんのくせに背表紙メインを飾るな!!!(理不尽)

こんなこと書いたけど登場人物がみんないい人。銭ゲババアも嫌な奴に見えるけどまああの時代の芸者を切り盛りするババアだし当時はよくある判断じゃないかな。良い奴ではないけど悪いやつでもない銭ゲババア。
まあ実際主人公も性別偽って芸者やってたんだしイーブンな気もする。これもしバレた相手がやばい客だったら店もやばくなってた可能性だってあるんだし。よくバレなかったな。深く考えてはいけない。
でも喉仏気にしてそろそろ限界か……とか言ってたけどもしかして主人公声変わり前の子どもなの?倫理観やば。
稼いでくれるんならなんでも構わないって優しさだった迄ある。ないな。

それ以外の人はもうみんないい人。平和。だからこそ噛ませ犬くんが少し不憫なんだよな。いっそ糞オブクズ男ならスッキリできるんだけどな。

どれくらい不憫かと言うと男だって気づいて女将に相談して正規で旦那契約をしたにもかかわらず、抱く直前に攻めの乱入に遭い「こいつは俺のせいで金で女将に囚われてるんだ!諦めて欲しい!」って土下座され、まるで噛ませ犬くんが悪者のような展開に……。されたのにも関わらず「僕はなんてことを……!」って逆に頭を下げるんだからな。いい人すぎてまじで不憫。すでに旦那契約をした相手がいたなんて聞いてないし詐欺だよ詐欺。

個人的に好きポイントは自分の絵を「特別なものだから」って言われて喜んだりそれを売ったと知って「特別って言ったのに!」ってショックを受けるシーンです。

でもあらすじにも書いてあった「絵を描くために対象を舐めないといけない変態画家」という設定が全く微塵も活かされてないのは笑ってしまった。

カバー下のみんなのその後って設定図もすごい良かったからそのまま続編書いてくれないかなあ。

この人の絵柄見覚えあるんだよな……なにかどこかのジャンルでお世話になったことがあるのやも知らん。前前前世の付き合いかも知らん。

正式タイトルは『咥え絵筆に化ける花-《昭和ポルノグラフ録》-』です。読んで。

純粋に受けが可愛い。

③はいわゆる心の底からエッチなBLを見たいならオススメ。って言っても自分割合ストーリー重視派なのでこれもちゃんとストーリーとしての体裁はちゃんとしてるからね。
これはとてもとてもえっちです。
わかるよ、制服はエッチ、攻めの気持ちはよくわかる。配達員のおにいさんはエッチだよねぇ。筋肉もえっち。ムキムキじゃなくて肉体労働者特有の筋肉質な感じがえっち。よく分かっている。
あとテンポがいい。流れるように読めるしシリアス過ぎず平坦過ぎずかなり当たり本だった。ギャグのセンスがいいのは才能だと思ってる。
表情が上手いね。絵も上手くて綺麗だし。言葉の言い回しも凄い好み。この表情が上手いってのばかりは実際読んでもらわないと伝わらないのがもどかしい。ぜひ読んで。

言うほど肌色シーンは多くないけれどなんだろう雰囲気がね、エッチ……あと受けとか周りがあけすけなキャラだからなんだけど終始下品だからね。

数あるパワーワードの中から帯に選んだのが「鍛えた筋肉はふわふわなんだよ」なのもよく分かっていらっしゃる。これは編集有能。
年上の余裕ある受けに翻弄される年下わんこ攻めという究極の組み合わせですね。受けがケツで攻めを抱くタイプのBLです。と言っても抜き合い多めで本番少なめ。嘘。結構あるかも。②がほとんどないから比較できん。適度よ適度。

色々考えているように見えてわりと世界は単純だということを教えてくれるいいBLです(?)
とにかく頭を空っぽにしてハッピージャムジャムなBLを読みたいならこれって感じ。

強いて言うなら攻めの姿勢がけしからんかな。「入れる方ならできます」って姿勢がな。
「おしり弄られるのだけは無理、ナイ」って心底嫌そうな顔で言い切っていますがそれ貴方大好きな受けの先輩にやっているのですが???
昔彼女に掘られそうになってからトラウマって言うけどそれを相手に強いているって感覚は無いのかしら?
でもまあ受けが前立腺マッサージを人並みに嗜んでいるって前提と本人が「いーよ♡」って姿勢だったからまあ許容範囲かな。

人並みに前立腺マッサージを嗜んでいる世界線……?

あとこれも登場人物みんないい人。
もしかして嫌な人が出てくるタイプあまり当たらないかもしんない。フィーリングで平和な世界線を勝ち取れているな。
個人的には松尾兄貴が好きですね。趣味風俗開拓。

個人的には最終的に攻めが自分の人生に正面から向き合って答えを出した決意表明と性にフリーダムで余裕綽々の完璧な受けもちゃんと不安だったりちゃんと攻めが好きなんだってわかる表現が入れこんであるところが好き。

絵もストーリーも抜群に好みだったしこの人は次から作家買いしてもいいと思ってる。くらいには良。

④これは良作です。近年稀に見る大当たりです。僕の言うあたりとはクソデカ感情が脳髄をグチャグチャに揺さぶり読後感が超濃縮マムシ入り青汁を一気飲みせなあかんかった時のような感じです。胸焼けが凄い。胃が痛い。最悪。でも良かった。一度読んだら忘れられない傷跡として残るタイプ。

久方ぶりに商業BLを読んでぼろぼろ泣いてしまった。引け目なしにこれは良作。
酷く粘度が高くてドロドロとした重苦しいBL。
見る人によってはビターエンド。

ストーリーに敢えて触れずに言うならすごくお上品。えっち!!!っていうより耽美って感じ。雰囲気的には『櫻狩り』とかみたいな……。
というか商業BL漫画を卑下したり貶める意図はないけどこれは商業BLの枠を超えて純文学と言っても過言ではないと思う。えっちな純文学。

芳野は伊月への気持ちを無意識に押し込めてきたんだろうな。と思う。最初はきっと無意識だったと思う。同じような境遇の汚らしいガキ、拾われていなければそこら辺でのたれ死ぬのが関の山、自分と重ね合わせて同情していただけだったのに。アンパンあたりで忠誠を誓ってからは絶対に守らなければいけないという忠誠心と庇護欲と。
環に抱かれるようになってからは半分意識的に自分の中の情欲を見ないようにしてきたんじゃないだろうか。
自分だけはあいつらとは違う。傷つけたくない。そばに居るには自分はあくまで主人と従者の関係を壊してはいけない。しんどいよそれ。
でも伊月の気持ちを蔑ろにしてまで拒否をするのはもしかしたら「伊月が抱かれること」自体がトラウマだったのかもしれんな。
伊月を抱くことで自分がその他大勢と同じになってしまう、自分の気持ちを押し付けて伊月を穢してしまう、みたいな。
想いが通じあってしまった瞬間から吹っ切れるのも潔くて好き。「他の男に抱かれる伊月さまが嫌なら殴られてでも最初からこうすればよかったんだ」って躊躇いもなく両手両足の爪を剥すかね。凄いスッキリした顔してさ。惚れたら負けってどちらの言葉だったのかなんて考える方が野暮だけど恋なんてこれくらい馬鹿になった方が強いでしょ。

伊月の存在が芸術。
可愛い、美しい、儚い、あざとい、強か、賢い、可憐、優雅、艶やか、言葉では言い表せないけれど確かに伊月には人を狂わせる何かはあった。
でも本当は誰よりも愛されたくて認められたくてみすぼらしいあの頃に戻りたくないだけの生意気なガキだったんだと思うと泣けてくる。
モブに薬を打たれて酷く抱かれた後に「後生だから抱いてくれ」と芳野に縋った時も「見てくれるな、お前にだけはこんな姿を見られたくないんだ」と言った伊月も。

もう気持ちが抑えきれなくて文章にならないので思いついたままに書き連ねます。

「アンタを抱いているのは俺だ」って芳野が怒ったのはただ伊月が他の男に抱かれていたという嫉妬と、それではまるで自分が欲に溺れて伊月を傷つける大人と同じだと思われているのかという怒りだったのか?
伊月にとっては体を売ることが生きていく術で相手が気持ちよくなるよう媚びを売って抱かれることでしか何かを与えられる方法が分からなかっただけなのに。芳野に気持ちよくなってもらいたい何かを与えることで自分の気持ちを受け入れてもらいたいだけなのにという……。
すれ違いが切なくてよく描かれてると思った。
芳野はあくまで他の汚い大人たちのような醜い感情で伊月を傷つけるかもしれなかった自分が許せなくて伊月と距離を取ろうとするんだよね。
それを伊月は自分が穢れてしまったから嫌われて拒絶されたのだと思い込んでしまうという。
様式美と言ったらそれまでだけど王道は誰にでも愛されるから王道なのであってそれだけである程度芸術点は高いのだと思うのです。

主従という身分差がありつつ元はお互い同じ主人に拾われたゴロツキという共有する感情もあるのがまたいい。

環も環でちゃんと伊月を愛していたはず。きっと銃を突きつけられていやでも伊月はの代わりにはならない現実を突きつけられたんだよな。壊れた、って表現されてたけど自分はそれ以降の環は憑き物が落ちたようなスッキリした顔してるような気がする。一度ぶっ壊れなきゃ見えない世界もあるし環にはそれが必要だったのかな。そうして初めて環は伊月を伊月として愛おしんでたんだって気づけたし、伊月もそんな環の気持ちに気づけたんだと思う。

「伊月は何も悪くないからね」

って言うた時の笑顔で涙腺崩壊したわ。

「踊る」という表現が良かった話。
序盤で足の悪い伊月が芳野とダンスホールに行った際に芳野がモブと踊るワルツ。
「よたよた踊るなんてみっともない真似」という伊月と「よたよた踊ろうがお前の美しさは変わりない」という環。
その日の夜1人で月明かりに照らされながら踊る伊月の「踊る阿呆に夢見る阿呆同じ阿呆なら踊らにゃそん、そん」。
全てを手に入れて芳野と踊る伊月。
恐らくダンスも人並み以上に綺麗だったらしい環が今度は結城と2人よたよた踊るのにいちばん楽しそうで幸せそうだったり。序盤と真逆になったふたりだけど環が言った通りその本質は美しいままなはずだと思った。

環と結城の関係もよかった。
指切りの語源を聞いてお互いの爪を剥いじゃう無邪気さとかそれを信じて持っていた環と剥いだあとの爪が生えてこなかったらどうしようと心配していた結城との落差とか……。
結城の結婚式のあと爪を飲もうとして吐き出すシーンも良かった。

環がふっきれていくのを後目に結城の執着が強くなっていくのもいいよね。
環は伊月の反抗と別離で自分の気持ちにケリをつけて前を向いたけど、結城は後継を産むという長男の責務から開放された時にうしろを向いちゃったんだね……。

子どもを作ろう、って抱き合うふたりは何も知らない無邪気な幼少期に戻ったみたいでなんとも言えない背徳感があった。
「腹を下した、流産だ」って笑った環のスッキリした顔とそれを聞いた結城のドロドロした何かを隠せていない絶望した表情の対比も印象的だった。

4人の男が時代と身分と性別といろんなものに雁字搦めにされてもがき苦しみながら三者三様の答えを出すまでの純文学(えっち)だった。

ぜひ読んで欲しかった。。。
布教したその日に買ってくれた友ありがとう……。

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