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ぼっち在宅介護のオススメせん妄対策

《せん妄》ってご存知ですか?
私は知りませんでした。

高齢者に多い症状らしいですが、突然、時間とか場所、人がわからなくなる意識障害だそうで…認知症とも違うそうです。

若い方でも事故にあって瀕死の時とか、命の危機が迫ると脳が守りにはいるからなるようにも聞きました。

ずっとしっかりしていた寡黙系の父が、突然ベラベラ喋り出したのは寝たきり在宅介護がはじまって一年半くらいしてからだったでしょうか。普段無口な分、おしゃべりが止まらない様子にビビりました。

「帰るぞ!もうここはいいから!準備せえ!」

「帰るって、家じゃん」

「騙されんぞ、こんなにそっくりに部屋作りやがって。上着出せ!ズボンだせ!」

とうとう、父まで認知症になったかぁ…(泣)
と悲しみに暮れた日でした。


在宅介護がはじまった当初は、認知症の母も一緒のぼっちダブル介護でした。父は、母の認知症を認めたくない部分もあり、口が悪い部分は素直になれない性格だからと言ってあげたりしてました。
私たちは認知症と向き合うのが本当に素人すぎました。

けど、だんだん母のブラックな部分が大きくなってきて、振り回されるようになりました。
家の中で両親は睨み合い。気に入らないことがあると、動ける母は勝手に外へ徘徊。父は自室で頭から湯気をだしてました…
当時、彼の血圧は当たり前に200を越えたりしてました。

認知症だから…冷静であろうとした父は疲れが溜まっていたんだと思います。様子のおかしい母に大声を出さないように頑張ったりもしてました。が、もともとは《喝!》みたいな人でしたから、私がなじられるのを見て、声を荒げる日もありました。私は私で、母をこっちの世界に連れ戻したくて、きつい言い方をしていたように思います。(母には母の伝えたいことがあったんでしょうが、私には知識が足りなさすぎました)

そんなこんなで、やがて母がブラックを大放出して、別家族の元へ家出。父も私も悲しいやら、悔しいやら、うなだれてしまいました。
ですが、母との睨み合いが無くなったことで父の血圧は下がり、ホッとしたりもしました。

その時、私は欲張ってはいけないと覚悟しました。まず、父だけを見ることに専念することに決めたんです。

ですが、こちらの事情がわからない認知症の母が間をあけて、突然帰ってきたりすることがあって…予想もしていなかった父は、会ったショックから血圧がじわじわ上がりはじめ…ストレスから不眠の日々になりました。いつブラックな母が現れるかわからないという不安からだと思われます。
3日眠れず…疲れ果てて3日眠る。そんなサイクルになったある日、夜中に大声でベラベラ喋ってる男の声がして、様子を見に行くと…父が自室で1人で喋っていました…

ある日は、布団の端を揉み揉みしながら。
ある日は、一人で立てないのに、ベット柵を外してベッドから降りていたり…
ある日は、「おーい」「おーい」と夜通し呼ばれたり。

夜だけならいいけれど、日中は看護師さんやヘルパーさんが順にきてくださるしで。三日三晩となるとこちらも体力が持たないし、頭がおかしくなりそうでした…

家に居たいっていったから家で介護してるのに…「帰りたい」って何やねん!
怒りがこみあがったり、失速して泣いたり。
あの時は痩せましたねぇ…ほんとに。


週に一度、家近くの広場に移動販売車が来てくれ、買い物ができます。
近所のおばちゃんらが疲弊した私を気遣って話しかけてくれました。

「父が帰りたい…って言うんですよぉ(困)」
「あ、いうよ。みんな言う。うちのおじいさんもおばあちゃんも言うてたよ。たまにわからんなるんよ。大丈夫、みんな言うから」
「ええっ?そうなんですか?」
「うん。大変やろ?大変やと思うわー、私らもきつかったもん。アンタ頑張ってるなー。みんな見てるで、わかってる」

あー、ここいらの人たちは、みんなお姑さんやお舅さん、おじいさんおばあさんを自宅で看取ってきてはるんやー
先輩方の言葉を聞いたら、スーッと気持ちが楽になりました。
(うちの父も母も介護をしてないんです。老人のなり方を知らない人たちだったんです)


実践を経てきてる方々の言葉は強かったです。
認知症で私を非難する母の言葉を越えて、私の心をズンと刺してくれました。《大丈夫》と。

あー、私、母に傷ついてたのかー。
平気なふりしてたけど。
泣いたけど、負けないぞー!って来たけども。負けそうだったんだ。逃げ出したかったんだ〜
と気づきました。

すると、
なぜここにいる?
なぜ逃げない?
と自問自答。

私は主人に、「オヤジだけ看てやりたいんだけど…」と言ってでてきました。
主人は「ええよ。ええに決まってるやん」と笑顔で送り出してくれました。

それに
「お父さん頼むで」と睨む母の捨て台詞が加わり。逃げてはいけない!と思ってやってたんですね。もう、逃げられない…と。

けど、
私が来たくて来たことを思い出しました。
オヤジだけは見ると決めたのは私だったな!


前述が長くなりすぎましたが、
そう、父のように耐え難いパニック状態やとんでもない高血圧になると、人は《せん妄》という状態になったりして、アドレナリンを放出、死から体や脳を守りに入るようで。
眠れない父はずっとずっと喋り続けて、バタッと死んだように眠るを繰り返しはじめたんです。

看護師さんからは、「認知症ではないけどもこれが長く続くと認知症を併発するかも」と言われ、「いよいよ次のステージに入ったね」の言葉は腹をくくってもくくっても飲み込めないものでした。

認知症…なるかな。オヤジもか…(泣)
でも、やれるだけやってみるか…

たまに、せん妄じゃない時間もあったので、その時は、せん妄の時のことを覚えてるか聞いてみたりしました。まったく覚えていません。
だから、たくさん話しかけました。もう話せなくなるかもと思って。
体を動かす時に協力姿勢を取ってくれたら「ありがとう」と付け加えるようにしました。
「ありがとう」「ありがとう」だんだん何にでも「ありがとう」がつけられるようになり、ちょっと失敗したり、顔見せる時間が空いた時には「ごめんごめん」と笑って話せるようになっていきました。


で、せん妄になった時には、
無口な父があまりに喋るので、質問とかをするようにしました。すると、これまで話してくれたことのない話をいっぱいしてくれるのです。笑って話したり、うーむと悩んだりしながら、言葉を選んで喋ってくれるんです。表情が豊かになり、明るいせん妄状態?になってきたんです。

あれ?
これよくない?

それから、せん妄になると、聞いてみたかったことをいっぱい話してもらうようにしました。せん妄タイムが楽しくなりました。

もちろん、機嫌の悪いせん妄タイムもあるので、いつもいつもいい時間にはなりません。
私を私と理解してない時もありました。
ですが、しれっとヘルパーさんになった気分で相手をしていました。

私が生まれた時に亡くなっていた祖父母の話や、私たち子供らそれぞれのこと。母のこと。
びっくりするほどまともで、いいづらいことは言葉を詰まらせながらも本音を話してくれたりしました。


それを動画に撮り、主治医に見てもらいました。そして、眠る時間と眠れない時間を報告。
「よしわかった!薬、チャレンジしてみいひん?もしかしたら、せん妄が軽くなるかもしらん。合わないかもしれない。けど、とにかく寝ないと、お父さんしんどすぎるわ」と、せん妄に対して薬を処方していただくことになりました。
そこからもしばらくせん妄と父は戦っていました。けど、ちょっとずつせん妄タイムが短くなり、ついにガツっとせん妄タイムを楽しむことができなくなりました。(笑)
でも、無口な父とめちゃくちゃたくさん話をした日々でした。

動画を見た先生は、最初、クスクス笑いながら、
「ごめんなー、笑ってる場合やないんやけど、しれっとヘルパーさんみたいに喋ってる自分も面白いし、楽しそうに話してるお父さんも信じられへんくて。すごいな〜!何かやってたん?こんなこと(多分介護的なこと)」
「何もやってませんよ!(笑)どうせなら、死ぬ前に聞いてみたいなーってのを順に聞いてみてるだけです」と返すと、

「いやー、すごいすごい。ハハハハハ、あ、薬出します!」


やがて、お薬の効果もあり、日々の活動は一日サイクルに戻ってきました。昼夜逆転はあったりもしますが、一日の中でちゃんと寝て起きるというサイクルに。食事も三食しっかりと。

現在、1年ちょっとが経過し、少しずつ老いと共に、認知力の低下は見られます。が、まだ自分で選んだり判断ができています。
チョイスに品というか、質があるようで、先生に驚いていただいています。

他の方が、どうされてるのかは知りませんが…

せん妄も
「うんうんそれで?それからどうしたん?」などと笑って話しかけてると、話す方も笑って返してくれるという対処法を発見したという話です。

これは…
私的にはすごいオススメかなと。

決して聞き上手な天使になる必要はありません。勝手に話すことに合わせる必要はないんです。自分が聞きたいことをわかるように質問してみたら、それを返してくれる。別のネタになることもありますが、一生懸命考えてかえしてくれていました。

聞いてばかりは疲れます。
逆にこちらが聞いてみたいことをどんどん質問してみたりして本音を聞いてみる感じです。

悲しげな本音には、
「あーそうやったんやー、まぁええやん」とか
思わぬ本音には、
「えー、そんなんおもてたんやー!」とおどろいたり、喜んだり。

あ、承認欲求なんですかね?
父の話に《いいね》をする感じかもです。

せん妄になったオヤジにも興味あるよ!みたいな。
ぜひぜひ、聞いたことない話、遠い昔の話なんかから質問してみてください。
意外と楽しいです。


注)私は素人です。
介護がはじまって、いろんな方の本やらエッセイやら読んでみたりもしましたが、参考になることもあればならないこともあり。
父は父なので、他の方と同じにいくわけはないのでした。

で、ある時から父と二人、我流を突っ走っています。本は本。我々は我々。
ケアマネさんには「想定の斜め上をいく」親子と言われています。
私と父の勲章です(笑)

迷った時は、少し楽しい方、明るい方を選ぶようにしています。
必ずしもすぐ上手くいかないです。が、我々も何日も何ヶ月もかかったり試行錯誤をしての今です。
疲れたらやめたりしてください。
でも、そんなこんなで、良ければお試しください。

#せん妄 #在宅介護

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