[歌詞考察]キズ 「リトルガールは病んでいる。」

この記事は、
キズ 11st SINGLE「リトルガールは病んでいる。」
自分自身の歌詞考察をまとめたものです。

この考察の内容は、あくまで個人の考えでの解釈であり押し付けるものではなく、違う解釈を否定するものでもありません。
考え方はそれぞれ自由で、色んな考え方があって良いと思いますし、むしろ、違う解釈にも興味があります。

以上の点を理解の上で、ご覧頂ければ幸いです。
(歌詞引用元: キズ -「リトルガールは病んでいる。」 収録)

(歌詞)
2アウト目の後なしのイエローカードも
誰に出してアレは誰の落とし物
正しく人を殺すルールを
もう一度聞かせてくれ

■考察
・2アウト目の後なしのイエローカードも
1945年第二次大戦終戦間際(2アウト目の後なし)

降伏する前日8/14から当日8/15未明にかけて、佐々木武雄[当時:大尉]が徹底抗戦を掲げ、黄色い旗(≒イエローカード?)を持って首相官邸および私邸を焼払った。その事件を指していると解釈。

・誰に出して
 =殺意を誰に向けて

・アレは誰の落とし物?
 =原爆は誰の落とし物なのか

正しく人を殺すルールを
 もう一度聞かせてくれ


この佐々木大尉は自分達を「国民神風隊」と名乗り、降伏の方針を決めていた政府を「腑抜け」と扱い、無条件降伏をさけるため "首相・閣僚抹殺"を目論んで起こした事件だった。
(結果的には失敗)

自国のために戦うと謳ったはずの戦争で、戦争をまだ終わらせないために、自国に殺意向けた事件。おそらく本人は "天皇や国の尊厳"とかの正義感が彼を動かしたものだと思うけれど、本末転倒。

だから、「正しく人を殺すルール(理屈)を
もう一度聞かせて欲しい」と続いている。

正義感は、人を盲目にして人を狂わせる。
そして、その自覚もない病気のようなもの。
視野・思慮の浅い人間が持てば、"正義"はより視野と思慮を奪い、ただの誰かを傷つけるだけの凶器にしかならない。それを"正しい"と思っているから。

(歌詞) 
エル・チャポと穴を掘りたい
世界がシラフに戻るまで
自慢のメカで解いて
八月の雲を晴らして

■考察
・エル・チャポと穴を掘りたい
エル・チャポは麻薬王と言われた麻薬密売組織幹部。
穴掘って電気も通ったトンネル作って麻薬密輸。
穴掘って脱獄。穴掘って逃走。
なんでも穴掘って解決した穴掘り名人。

戦争に酔った世界という牢獄から脱獄したい?
もしくは、脱獄・逃走というよりは…

・自慢のメカで解いて
掘削機で、あらゆる問題を解いていったように

まだ"八月の雲"(戦争)に覆われたままの牢獄のような暗く"そらのない"世界の穴を掘って、雲(戦争)のない空が見たい。
というニュアンスに感じた。

(歌詞)
2シーズン目の『回して
‼︎ハラショー』
潰すゴールデンタイムをシンキングタイムで
猟奇的なマミー 残る僕を分別して
脳は第3水曜日

■考察
・2シーズン目の『回して‼︎ハラショー』
ロシアのウクライナ侵攻を指している?
(ハラショーがロシア語)

・潰すゴールデンタイムをシンキングタイムで
戦争がゴールデンタイムのメディアと
思考を埋め尽くす様子を描写?

・猟奇的なマミー
=”母国”?

ウクライナ侵攻に反抗するロシア人たちは逮捕。
または、ロシア人権力者の場合は、不自然な事故や自殺で次々と亡くなっている。

それはきっと、"彼らの答え"が"マミー(母国/ロシア)の求めるもの"ではなかったから。

その意味でも、今のロシアの在り方自体がそのまま
「回して‼︎ハラショー」の世界そのもの。

だから、2シーズン目がこの現実で始まっているという意味?

残る僕を分別して 脳は第3水曜日

第3水曜日は
1945年8月15日の終戦〜玉音放送?

単純に考えると、自分の頭では”既に終戦してる”終戦したはずだと訴える意味に捉えそうになるけれど、
「分別して」というワードから"捨てて欲しい"
という意図が汲み取れる。

つまり、
僕のマミー(母国:日本)も同じ道を辿るくらいなら
マミー(母国)に殺され、シンキングタイム(頭の中の戦争)も、終わり(脳は第3水曜日:終戦)にしたい。
そんな意図に感じる。

こんな歌詞や音楽で表現できる思考というのは
頭の中で毎日のように思想と思想をぶつける戦争のような思考を積み重ねて生きていて、きっと凄く苦しい時もあるんじゃないかと思う。

“そんな脳を-第三水曜日-に捨てて
頭の中で思考同士が常に激しく争う戦争も
もう終わらせて欲しい”という自棄願望なのかな。

(歌詞)
マザー・テレサも見捨てる
世界が終わりを学ぶまで
得意の式で解いて
八月の答え出して

■考察
・マザー・テレサも見捨てる
マザー・テレサは慈悲の象徴にようにも扱われているけれど、こんな言葉も残している。

"キリストの受難のように、貧しいものが苦しむ運命を受け入れるのは美しいもの。世界は彼らの苦しみから多くのものを得ている。"

彼女は聖人とされていたけれど、結局はカトリックの広告塔との見方もあった。

資金管理面で怪しい話もあって施した医療の品質は悪い意味で資金に見合ってなかったと言われている。

彼女の聖人像は、メディアが少ない時代だからこそ
作り出せた虚像かも知れないと個人的には思う。

つまり、きっと
世界がノーベル平和賞で讃えた彼女さえ
この世界の理不尽さを諦め見捨てていた
“多くのものを得ている”側だったのかも知れない。

・得意の式で解いて
 八月の答え出して

戦争を正義へと正当化する方程式をこじつけては
“8月”のあの日々(原爆=殺戮→終戦)と同じことをまた繰り返す。

(歌詞)
2テイク目の肌の色はイエロー
切れた赤い糸なら
国境線越えて 君の魅力を拐うなら
ギター鳴らすしか能のない彼も
戦場のロックスター

■考察
・2テイク目の肌の色はイエロー
ウクライナの次は日本かもしれない。
または、"黄色人種同士"の戦争もあり得る。

・国境線越えて 君の魅力を拐うなら
関係が断たれ、他国が国境線越え
戦争が君の体の一部を奪おうものなら

・ギター鳴らすしか能のない彼も
 戦場のロックスター

今そばにいるギター鳴らすだけの彼さえ戦場で戦う。

(歌詞)
2アウト目の後なしのイエロー
英雄気取りの正義を飛ばすC4
正しい平和の祈り方を
もう一度教えてくれ

■考察
・2アウト目の後なしのイエロー

=第二次大戦終戦後の「幸せ」?
黄色という色は「幸せの象徴」の意味がある。
だから、
イエロー→幸せ→平和を指してると解釈する。

・英雄気取りの正義を飛ばすC4
平和を大義名分に
英雄を気取った人間が、何の罪もないロシア人たちへ差別的な言葉や態度で、浅はかな正義で、攻撃する様を描写してる?
(C4=プラスチック爆弾)

平和を祈るはずの人間が
さらに誰かを攻撃し傷つけることの
矛盾と違和感を示している?

だから、
「正しい平和の祈り方をもう一度教えてくれ」
と続いていると解釈。

(歌詞) 
チェ・ゲバラと麻雀して
世界が正気に戻るまで
モハメド・アリと肩パン
皆でしてみないか

■考察
・チェ・ゲバラと麻雀して

チェ・ゲバラは、カストロと共に、キューバでの独裁政権を打倒すべく開放闘争-キューバ革命を指導した。でも、それが、その後のキューバ危機-核戦争寸前の状況を招いてしまう。

人民を独裁政権から解放すべく立ち上がり権利を勝ち取ったはずが、結局ソ連の手駒として扱われ、結果的に核ミサイル基地を作られたキューバ危機。

実は、ゲバラはキューバ革命約半年後にキューバの国立銀行総裁として日本に来日していた。
「他の予定すべて犠牲にしても、原爆慰霊碑に献花したい」との本人の強い希望で、本来予定のなかった広島に訪れていた。
そして、「アメリカにこれほど残虐な目にあわされて、腹が立たないのか」と言葉を問いかけ憤りを見せていた。

その後、キューバ危機となり、ソ連への不信感もゲバラにはあったのかなと思う。
その後ソ連の力が必要だとするカストロと対立して別れ、コンゴ・ボリビアでの革命運動に身を注いだ先で捉えられ銃殺された。

もしその後も生きていれば、恐らく彼は人々へ不条理を強いる場所がある限り、そこへ赴いては弱者の立場から革命を成そうとするような人生をきっと歩んでいたと思う。

だから、"そんなゲバラと麻雀する"なんてことは、例え彼が生きて居ても、彼の生き方を考えれば、世界に本当の意味での平和が訪れることがない限りあり得ない。
でも、それを望むということは、
それは同時に、本当の意味で世界から理不尽を強いる場所がなくなった平和を望むことを意味する。

・モハメド・アリと肩パン
 皆でしてみないか
モハメド・アリは元WBA・WBC統一世界ヘビー級チャンピオンでもあり、反戦主義を通した人だった。

当時、アメリカ人の多くの人がベトナム戦争を支持する中で、反戦を訴えて徴兵を拒否した。
例え、多くの人々に臆病者と言われても
「罪もない人々を射殺するようなことなんてしたくない。そんなことするくらいなら、俺は刑務所にでもぶち込まれたほうが良い」と断固として意思を変えなかった。

結果、ヘヴィ級タイトルを剝奪。徴兵拒否を罪とされ懲役刑に課せられた。年齢的に全盛期と言える時代にボクシング界からの追放。
それでも、強い信念が徐々に人々を変え、その後の反戦運動を活発にさせる立役者になった。

全盛期をボクシング界から追放されたけれど
そんな彼が”ボクサーではなくなった全盛期のあの頃”に彼を試合(肩パン←ボクサーではなくなったことを踏まえた比喩)で迎えられるそんな世界(皆)だったら、どんなに良かっただろう、という意味が込められているように思う。
ぱっと見では少しくだけた歌詞に見えるけれど、
きっと、何度繰り返しても、何度気づかせる機会があっても、いつまで経っても、正気に戻らない世界への悲しみが込められているように思う。

(歌詞)
また飽きずに地上で
知的生物の繁栄
自転車で月まで漕いで
そろそろ僕も入れてくれ宇宙の暇人に

■考察
・また飽きずに地上で
 知的生物の繁栄

殺し合っては、産み続け、また殺し合って
愚かな"知的生物"の繁栄に付き合い惑わされるのもうんざりする。そんなニュアンスに感じる。

・そろそろ僕も入れてくれ宇宙の暇人に
米国防衛省が真面目にUFO調査局を新設した。
それに、たしか戦争が起きてる場所ではUFOの目撃情報が頻発するとか。
戦争や核開発の監視をしてるとかなんとか…

第三者で傍観してるそんな”宇宙の暇人”たちの入れて欲しい(?

また、言い方変えれば
例え今戦争の起きてないどこにいても傍観者ではない。この地上で生きている以上、当事者だと。

——-
(10/10 追記)
宇宙の暇人という歌詞について、hideさんのROCKET DIVEの「僕ら宇宙の暇人だろう」という歌詞から取ってるとのいくつかのインタビュー等でコメントがありました。
——-

・自転車で月まで漕いで
“遠く絶対叶うこともない愚かな願望”というのを自虐的な言葉遊びで、そう表現してるのかな。


(歌詞の構成)
意味が反転していく「イエロー」

■考察
歌詞の内容そのものとは別に
歌詞の構成そのものにも意図があるように思う。

次々と意味が反転していく「イエロー」
一つ目:徹底抗戦/戦争に酔った末路/殺意
二つ目:肌の色/差別
三つ目:幸せ/平和

このように反転していく構成自体が
"正義も平和も何もかもが反転を繰り返していく"
この世界の不条理や虚しさを相似的に描写して
皮肉を交えて嘆き訴えているように思う。

(MVの途中で映し出された文章) 
[一つ目]
少女桜ハ、第三次大戦
デ日本防衛隊ガ開発シ
タ人間爆弾デアリ、●
ノ特攻兵器デアル。
目標付近デ発射サレ、
ソノ跡ハ搭乗員ガ誘導
シテ目標ニ体当タリ。
脱出装置ハナク、計器
類ハ簡素デ一度出撃ス
レバ攻撃ノソノ成否ニ
カカワラズ乗員ノ命ハ
ナカッタ。

[二つ目]
少女桜ノ搭乗員ハ地下
訓練施設ニ隔離サレル
数ヶ月間ニ渡ッテ恐怖
ヲ克服スル訓練ヲウケ
特攻ヲ成功スベク何卒
一、約一キログラムノ鉛
  ヲ高速デ身体ニ発射
ニ、電気ニヨル刺激ヲ前
  頭葉ニ直接流シ込ム
三、必要ニ応ジ痛ミヤ
不安ヲ緩和スル薬品ヲ
投与スル

■文章の補完
上記、正確には映された文章の改行位置にあわせて
右端の文字が見切れ隠れてわからないため、推測で補完している。

●の部分がわからずにいる。
少し出張ったものから木偏かなと思い「桜」かとも思ったけど、しっくりこない。
(読んで頂けた人で、より当てはまりそうな字が何か浮かんでたら教えてほしい。)

■考察
第三次大戦とあるから未来を指したもの。
少女たちが過去の桜花特攻隊のように
戦争の兵器として投入される描写している。

・一、約一キログラムノ(鉛)ヲ高速デ身体ニ発射
「鉛」丁度隠れている部分なので、鉛かどうかは確証はない。推測。

多分1キロの鉛なんて怪我する。
でも、怪我しても良いということ。

痛みに慣れさせ傷に慣れさせ、綺麗な体すら要らない。ここで描かれた世界では、兵器を動かすための最低限の体しか要らないということ。

・ニ、電気ニヨル刺激ヲ(前)頭葉ニ直接流シ込ム
前頭葉白質を取り除くロボトミー手術の簡易版?

半端な刺激では逆に過敏になるだろうからダメージを与えるほどの刺激なのだろう。
前頭葉は理性・感情に関わる部分。
ここで描かれた世界では人道的な思考や不安も恐怖や心も要らないと。

側頭葉も本能や情動の部分に関わることがわかってるから、側頭葉の可能性もあるかも知れない。

・三、必要ニ応ジ痛ミヤ不安ヲ緩和スル薬品ヲ投与スル
ヒロポンを彷彿とする。。

薬を使ってでも、痛みや不安を、死への恐怖も麻痺させる。

日本さえ明日戦争にもなりかねない。
一方が戦争をどんなに拒んでも、もう一方が正義を大義に武力を行使すれば一方的な被害者になるか互いに加害者になるか。どちらかしかない。

その証跡を”今”が伝えている。
その未来への警告にも思えた。

でも、別の見方もできる気がして。
後述のタイトルと歌詞「リトルガールは病んでいる。」の考察で、改めて絡めたい。


(タイトル)
「リトルガールは病んでいる。」

(歌詞)
リトルガールは病んでいる
生まれてきたことさえも
リトルガールは生きている
死ぬことも許されず
リトルガールは病んでいる

■考察
・リトルガール
リトルボーイ(原爆)の対比

主題として反戦曲の顔で
MVで映された、リトルボーイを皮肉った特攻兵器を指して、未来への警告を示す意味もあると思う。

でもそこにさらに比喩を重ねるように
今の世界・社会への皮肉を込めた、複数の意味が層になり重なっている多層的な表現にも感じる。

リトルガールという言葉で表す意味。
過去女性を特攻兵として扱った記録は知る限りなく
例え戦争が起こったとして日本が非倫理的な特攻兵器を作るかというと作らないと思う。
来夢さんもそれはきっとわかってる。
では、なぜそんな表現をしたのか。

今の現代でも、戦争があり、また戦争と同じく、
人々の浅はかな正義から生じる理不尽が痛みや傷に慣れさせ、死への恐怖も麻痺させられ
空から落ちる何人もの子たちを描写しているのではないか。

ふと今にも力を込めて押し込めば死へ落ちていく操縦桿をずっと力強く握りしめたまま、今も生きている子たちがいる。死ぬことも許されず。

戦争の愚かさと同様に
浅はかな正義の名の下に不条理を押し付けられ
ずっと操縦桿を握っている存在を犠牲に
そして落ちて散っていく存在を犠牲に
成り立たせる世界・社会への問題提起、悲しさ・嘆きに思えた。

戦争も今の世界・社会で起こるあらゆる事件・物事も相似形であり、変わらない。"人が作る世界"なのだから。

多層的でありながら
何度もスパイラルを描いて
結果的に戻ってくるという歌詞の構成と思想。

来夢さんにしか描けないものだと思うし
深めれば深めるほど、来夢さんは本当に、人としての「愛」を持っている人なんだと思う。

キズを産んでくれて、
4人を繋いでくれて本当に感謝しかない。

——余談———————
前垢で、新曲の発売一ヶ月くらい前に
リトルガールがリトルボーイの対比なのかなとツイートしてた。その点は合っていたみたい。

ただ、リトルガールそのものが空ではなく"空から落ちる "ものだった。

でも、ある意味、
「 “そら”が"黒い雨 "を降らす姿」というのが
リトルガール(黒い爆弾)を降らす情景とも近いのでは?なんて、都合良すぎるこじ付けかも知れないけど。笑

リトルボーイとの対比、
"空から黒い何かが降る"情景をイメージして
結び付けられてたのもあって
自分の中に思ってたもイメージと
MVも歌詞から感じるものがバチバチと繋がっていくような感覚があった。

二ヶ月前のタイトル決まってない時点の曲の考察としては、一ヶ月前のタイトルの考察としては
良い線いっていたのでは。

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