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14連休の記録

8日目

 先日の雨から一転、朝から晴れていたため適当な時間に起きることにした。
 今週はタイムスケジュールを作っていない。
 何時までにアパートを出発せねばなどと特に決めていない状態で、野間大坊までお守りを返納しに行くことにした。
 朝食を済ませ、そのまま書斎でパズルゲームをしばらくやった後、そろそろ出るかとアパートを出たのが多分昼過ぎだったように思う。

野間へ

 飲み物を持ってくるのを忘れたなと思った。
 それと、ガソリンスタンドで最後に給油した時何キロの表示だったっけ。プラス150kmのところで給油をすると決めているのだけれど、次はどの表示の時がガソスタタイミングであるのかもう既に忘れてしまっていた。
 まあでも、300kmでガス欠と聞いたことがあるし、現時点50km単位で記憶が曖昧なだけだ。間違っていたとしてもガス欠の心配はない。野間までの走行距離を考えても、往復耐えられるな、全然。と思った。

 渋滞情報を考慮してかナビはいつもより302を長く走ることを勧めてきたが、どうしても302を走ることが嫌なため、いつも通りの場所で左折をした。ナビの言う通りで普段より道は混んでいた。平日の日中だというのに。日中だからだろうか。丁度労働者が動いている時間なんだろうか。
 ナビに案内されるまでもなく、もう右左折タイミングを覚えてしまっている。この先にどういった道が来るかも知っている。満喫のところで右折、次の十字路で右折、ウドで右折、そのあと細道や農道の連続。
 ウドの交差点は、目的の方角以外の信号が見えないようになっている。ここ最近替えられたばかりだと記憶している。前までは信号見えないなんてことなかったのに前々回くらいに来た時にまったく信号に色が入っていなくって、え、どうしようと進退も分からずオロオロとしていたら後ろからクラクションを鳴らされた。
 ああ、これわざと角度付けて特定の方向からしか見られなくしてあるんだ、と気付いたのは先日近所の交差点を通った時だった。手前の信号は見えるのにその向こうの信号は色が一切見えないようにされていた。早とちりで発進させないようにということなのだろう。

 八百長、という名前の居酒屋が踏切の手前にあるということは野間へ母と行った時に話した。それが見えてきたら踏切渡って左折だから、と私が説明をしたら「そんな名前の居酒屋ないでしょ」と「すごいネーミングだね」と母は笑っていたのだけれど、実際「ほら」と私が八百長を指さしたらめちゃくちゃ噴き出して笑っていた。あるんだよな、八百長。
 それでその八百長と踏切を通過して左折して、しばらくは名鉄沿線を走るのだけれど、生まれ育った町阿久比町の私が子供の頃からあるガソリンスタンドで右折をする。それで高速道路の方まで走って行ってそこを通過。
 ラーメン屋と診療所が並ぶ道を走った後、カラオケスナックを左手に左折をして山へと入る。
 この道は母と来た時にもその翌日に写真撮影へ同行した時にも使ったので覚えてしまった。山へ入って比較的すぐのところにコンビニがあると記憶していたのでそこで飲み物を買おうと出発時点で決めていた。

 コンビニに原付を停め中に入り、母もカメラマンさんもここでコーヒーを買っていたなあと思いながら自身はグリーンダカラを購入した。水分を摂取できて熱中症対策に効果的であり尚且つお手洗いが近くならない飲み物、というとこれが一番適している。
 原付で長距離走行をするとおしりに汗をかくようになった。お尻から太ももにかけて。
 多分、エイプの革シートが悪いのだと思う。あと形状。ジョルノはぽつんと座るだけの最低限の面積しかなかったのに対してエイプ、改造車だから。シートがだいぶ長いし小さな背もたれがあるものだからどこに座っていいかもちょっとわかり辛い。ジョルノは足を下に置くのに対してこちらはMTだから跨るし、汗かくよなあと思った。
 長年代謝が悪くお手洗いにも行かなければ汗もかかないという体質だったのだけれど、ここ数年で美意識に目覚めた際にむくみが気になりだしてようやく、代謝をよくする漢方を飲み始めた。
 自分のことはムチムチな顔と体型だと思っていたがそれは全部代謝が悪いばかりにむくんでいただけであり、本来とても貧相なルックスであることをそれでようやく自覚した。

 山を越えて一度は平坦な道へ出るのだけれど、左右はずっと山のままであり、住宅街などは通らない。
 しばらくつまらない道を走った後に左折で知多満作道路(味覚の道)へ案内される。
 夜ツーリングの頃私が散々怖がっていた道である。山道なのだ。街灯もないし山を一つ越えるごとにしか信号がないしとかく夜走ると「なんか出そう」な怖い道なのでひたすら鼻歌を口ずさみながら走っているし、最後に走った時は結束バンドのアルバムを大音量で流しながら走り抜けていたのだけれど。
 昼間に来るとそうでもない。案外左右は吹き抜けていて随分向こうの田んぼが見えたりだとか、確かに完全な山道も数か所あってそういった時は閉塞感もあるにしろ、この道は比較的新しい(そもそも山を切り開いて作る訳なので古いものではないのは当たり前かも)ので、走りやすいのだ。
 
 ダムへ行った際にカーブや坂道にひんひん言っていたのが信じられないほど、走り慣れた道であり尚且つ走りやすい道であるものだからこの知多満作道路を楽しんでうわーっと走ってしまった。カーブも緩やかで走りがいがある、急すぎないけれど緩急のつけられたカーブと坂道の連続でしかも空気が美味しい。煽ってくる車がいないくらい過疎。
 途中、後ろからレトロなバイクが合流した。追い抜いて行ってくれるかと思いきや、一定の距離を置いて後ろを走り続けてくれていた。私の方がスピードを出し過ぎているのもあるが、それでも一定の距離を保つというのはお相手の技量にかかってくる気がする。
 最後、信号で並んだ際に「エイプ?」と声をかけられた。
 お互いマフラーが太いせいで声が聞き取り辛くてニュートラルにギアを変えた。
 「です」と答えたら「可愛いね」と言ってライダーさんはそこで右折していった。私は直進だった。ニュートラルに入っているのに気付かずしばらく青信号前でふかしてしまったが、幸いにも後継車はいなかった。

 

野間大坊

 南知多と美浜の区別があまりついていない。
 隣りだし、としか思っていない。
 千葉と茨城の区別がついていないようなものだと思う。
 
 この町に入ると、片道一車線の旧街道のような生活道路が続いていく。歩道がなくって、車道から1mもない距離に民家がある。玄関とかないタイプの民家。引き戸をガラッと開けていきなり1mもない距離にお年寄りが登場してくる危険性がある。
 生まれ育った阿久比町の隣りの半田もそういった道が長くって、いつお年寄りが登場するかとかいつ細道から自転車が登場するか分かったものじゃないため地元民は皆必要以上に徐行するため軽い渋滞が度々起こる。
 美浜にもそのレベルの道がある。それに耐えるとやがて野間へ入って行くのだけれど。
 スーパーだとかコンビニから突然もスピードで合流しようとしてくる落ち葉マークの車も多い。お年寄りが多い町ではとかくこちらが配慮をするしかない。40km制限の道であるから私がせかされることなんてそうそうないのだけれど、なぜか後ろの車が嘘みたいに距離を詰めてくる。これ、ぶつけられるのではないかというくらい詰めてくる。私がちょっとでも速度を落としたらぶつかるなと思って、歩道なんてないからそっと左に原付を停めたところ、ぶおーっと音を立てて急加速して行ったので、私もまたその後ろを走らせてもらおうと車道に合流したところ、その数メートル先で旗を振っている人がいた。
 紺色の制服にあ、工事かな、と思いこちらも停車か徐行か迷っていたら、「もう少し前に停まってねえ」と前の車が声をかけられていた。
 道路に2つ、何やら反射素材のモニターのようなものが置かれていた。
 2人、同じ制服の人が旗を持って立っていて、それを通り過ぎる時に「あ、警察だ」と気が付いた。
 めちゃくちゃ天気のいい日だからって、交番の目の前にオービス引っ張り出してきて取り締まりしていたらしい。
 いや、よかった煽られて焦ってスピード上げてなくって。ちょっと避けといてよかった。というか煽ってきた車、ざまあみろ。バーカ。地元民はこんな道でスピード上げないんだよ。

 対向車線は二輪がビュンビュンと走って行く。
 私も親の仇のように通っているように、野間は走りやすいのだ。海あるし。山あるし。それまでのこういった町は楽しくないにしろ。
 夜も昼も散々通った道を走行し、そろそろ左折だなと思う頃に頭上に「野間大坊」の案内看板が出る。
 それの通りに左に入るとすぐ、駐車場があった。

 中にはもう1人ライダーと思われる男性がいて、普通に境内の写真を撮っていた。こういうとこって写真撮っていいんだ、と思いながらも異教徒であるし別にあまり野間大坊の造詣に興味はないため私はスマホを取り出さなかった。
 丁度神社の方が出てきているところだったので、壊れてしまった交通安全のお守りをお返しした。
 他にも新しいお守りがだいぶ増えていたけれど、野間って物凄く沢山お守りを取り扱っていて面白いのだけれど、割と悪ふざけみたいなものも多かったりする。何処にでもあるあのリラックマもお守りとかもなんだけれど、良いの?ああいうのって。うちの宗教だとダメなんだよね、ああいうの。こういった場所の敷地内で商売すること自体が禁止されているし。免罪符とかいうとんでもない歴史的大問題がかつてあったくらいだし。

 

小野浦

 ここまで来たので小野浦の町の駅に目的地を合わせて向かった。
 元来た道に出て、その道を真っ直ぐ行けば左手にトマトの直売所があって、そのカーブを2つ抜けると海に出る。右手に海を眺めながら、今日も野間の灯台は何かしらの撮影をしているから行くのは諦めようとか、ウッドデザインパークが結構侵食しているなあとか思いながら小野浦まで行くと、クローズの看板が立っていた。
 駐車場は開いていたので中に入り原付を停めてから入り口まで行くと、本日休館日の札が立っていた。
 まじか、休館日とかあるんだ。
 あるだろうけれど、火曜日なんだ。

 折角またウサギの人形の方の作品を確認しようと思ったのだけれど、と思いながらも海には行ってみることにした。
 前回よりも人は少なくて、広々と海を歩き回ることができてしまう。
 この後どうしよう、だし巻き卵の店とか行ってみようかなと思って調べてみたら、火曜日は定休日だそうだった。
 じゃあ、以前何度か前を通ったチータープリンは、と思い調べてみたら、火曜日は定休日だそうだ。
 野間、絶対に火曜日は来たらいけないエリアじゃんもう……。
 

 砂浜はだいぶ片付けられてしまっていた。ゴールデンウィークのうちにマルシェとかしていたみたいだし、仕方ない。でも大きいカニの死体があった。自分がこれを踏みつけて遊ぶような人間じゃなくてよかった。
 
 原付ツーリングやるのならカメラを始めてみたら、とインスタで繋がった友人から言われた。行く先々で写真が撮れたら楽しいよという言葉に確かにと思って、先日キタムラにクリーニングを頼んだのだけれど、もうできている頃だろう。
 今日はいいやと思って持ってこなかったけれどいつから使うんだろうカメラ。
  

 そういえば、小野浦の堤防っていっつもパーテーションが立てられていて閉塞感がすごかったのだけれど、それが外れている時に来るのは初めてかもしれない。初めてではないのかな。でも前回来た時はまだあったんだよね。

 砂浜が綺麗になってしまっていたけれど、シーグラスはちゃんと落ちていて、穴場のような場所もしっかりとあった。キラキラとした砂や貝殻や石が詰まったその場所を堪能してから、また駐車場へ戻ることにした。

 外の洗い場でシーグラスと手だけ洗ってしまおうと思ったのだけれど、水道も火曜日は使えなくなっていた。次の目的地まで我慢しようと思った。

 

ココテラス

 ココテラスだけは火曜日でも開いているのでお正月以来とだいぶ日が空いてしまっていたけれど久しぶりに行くことにした。
 にわのパン、という隣接のパン屋さんを前回初めて利用したのだけれど信じられないほど美味しかったのだ。子供の頃からずっと焼きプリンだとか固焼きプリンだとか固めてあるプリンが好きな私にとって昨今のふわとろ系は受け入れるしかないけれどあまり本意ではない流行だった。プリンであるのなら美味しいことには変わりないしと思いつつも、ASD特性として食感のこだわりはどうしてもあった。プリンだけじゃなくオムライスも。ふわとろじゃなくて固焼きが好き。
 だから、今まではココテラスにある中では一番堅めのプリンを買っていたのだけれど、すっかりもうパンの方に魅了されてしまっていた。あと卵。原付じゃなかったら買って帰ってたな卵。

 パン屋の敷地へ行くと、芝生の向こうにパン屋があるのだけれど、芝生のこちら側で女性たちが集まっていた。パン屋の入り口に人が固まっている姿が見え、まさかそんなに混んでいるの?と一瞬思ったが、店内にカメラを持った人が見えた。
 どうやらテレビが入っているらしい。
 入口前にいるのがテレビ関係者なのか待たされている一般客なのか分からず、近くまで行っていいものかもわからずでとりあえずいつも通りプリンの方の店内へ入った。
 「テレビ来てるんですって」と店内は色めきだっており、店員さんも「そうなんです、もう私たちもテンション上がっちゃって」みたいなやり取りをしていた。
 パン屋に入れるかどうかを質問したかったのだけれど、お客さんとキャッキャとやり取りをした後店員さんが奥に引っ込んでしまったものだから、私は質問タイミングを見失ってしまい、一度外へ出た。
 もう一度パン屋へ行ってみたが、状況は変わらないどころか、スタッフと思われる人たちが芝生のこちら側にも来ていたし、出待ちと思われる女性たちが遠くからパン屋を覗いていた。この距離から覗かなければいけないということはやっぱり今近付いたらダメなのかなと思いもう一度プリンの方に入る。

 プリンの方も先ほどは陳列で店員さんがウロウロしていてくれていたのに、もうそれが済んでしまってレジと奥に引っ込んでしまっていた。だからレジまで並ぶ他なく、浮かれモードお祭りモードのココテラスが初めてなものだから居心地悪く感じてしまった。
 それでレジの順番がようやく来た際に「パン屋の方って入っていいんですか」と聞いたら「ハイ?」と聞き返された。
 「もう一度お願いします」という意の「ハイ?」なのは理解できたのだけれど、普通「もう一度お願いします」って言わないか。
 一般的に「ハイ?」とか「は?」ってめちゃくちゃ感じ悪いっていうのは共通認識だと思っていたのだけれど、ココテラスの店員さんにとってはその認識がないらしい。田舎だもんね。田舎の有名なお店でチャラチャラ働いている人種と私の認識にずれがあるのは当たり前なのかもしれませんね、とても不愉快だった。
 それで「入れると思いますけど」と言われた。
 「ますけど」ってなんだよ。
 え、ヤンキー気質なのか喧嘩腰なのか知らないけれど嘘みたいに感じ悪いな。ただでさえお目当てのパン屋に入れなくって困惑しているところに嘘みたいな対応でさらに困惑してしまった。

 実際、外へ出てもう一度パン屋の方へ行ってみると、撮影はレストランの方へ移っていて、パン屋の中には一般客が入れるようになっていた。
 私も中へ入るとすぐに応対してもらえて、目的のパンを家族分と、絶対に美味しそうなパンを自分の分買ってすぐ外へ出た。本来の買い物だけならこんなにも早く済んだのだと思うとかなり嫌な気持ちになってしまったのと、テレビが入ったってことはしばらく混むんだろうな。それで人気店ということで対応も浮かれたまんまで行われ続けるんだろうな。それでちょっとでも私みたいな人が来たら「はい?」とか「ですけど」とか言うんだろうな。
 え、超ムリ。
 似たような美味しいパン屋あったらそっち行きたい。
 そう思いながら、厚焼き玉子パンを駐輪場で食べた。厚焼き玉子は薄味で甘めに味付けされているのに対して、パンの方にバターがたっぷりと塗ってあって、それが卵にもパンにも両方に合う。うわ美味しい、もう一個買いたい、と思ったけれど持ち運び時間を考えて断念した。

 

帰宅

 ココテラスに寄ってしまうと帰り道は山道ムリだろうなと諦めていた。いつも、ナビに町中を走らされて微妙な田舎の町を通過しながら戻って行くことになってしまうのだ。
 ただ、今回はカメラの受け取りのために目的地をキタムラに設定したものだから、行きと同じようなルートを推奨してもらえた。途中から別角度から知多満作道路へと案内してもらえて帰りもまたあの道を思いっきり走ることができた。風が気持ちいい、景色がいい、気分がいい。
 自由だなあって思えた。
 仕事当分行かなくていいし、好きなとこ行って好きなことやっていていいんだ。お金は全然ないものだから好きなものは食べられないけれど。でも満たされている。
 お金が全然ないものだから今から実家へ行って夕飯を食べさせてもらわなければならないとはいえ。

 初めて通った時はネギの匂いがして仕方がなかったエリアなのだけれど、ネギ以外にも肥やしの匂いまでしてきてだいぶ嗅覚には負担があった。でもそれさえも楽しかった。
 行きとまったくおんなじで阿久比町の山から下りて行き、昔っからあるガソリンスタンドで曲がり、線路沿いを走ってから踏切で右折、八百長を通り大府市街へ。
 いつも混むエリアは今回もすごく混んでいて、原付なのですり抜けていけるはずなのだけれど直前に何台にも追い越されたことを思うと、わざわざ追い越した原付に追い越されることに怒涛のキレ方してくる人いるだろうなと思った。そもそもこの先赤信号なのもすでに車が停まっているのも見えているのに追い越す人って何考えてん頭と性格どっちが悪いのだろう。
 あと追い越した直後に左折する人も死んでくれないかなって思うけれど、私が願うまでもなくそんな運転してる人なんてすぐ事故起こすんだろうな。

 とか思いながらも自分の住む町へと戻ってきて、カメラのキタムラに着いた。昨日担当してくれた店員さんがお休みだそうで代わりに店長が対応したのだけれど、先日と同じ質問を繰り返され、同じ説明を繰り返され、先日「レンズの方は映りに問題がないのでセンサーだけ」と店員さんと話し合って決めたはずなのにレンズも15分ほどでクリーニングできるからと営業までされた。
 目が痒くって、目薬を帰りに買って帰りたいなとか考えている状態だったから、ひたすら目のかゆみと戦いながらその長々とした説明や営業を聞かねばならず、さっきから「5年ぶりに引っ張り出したカメラだから使えるようにクリーニングを頼んだ」と説明をしているのに「普段お手入れはどうしていますか」とか「普段設定どうされてますか」とか知らないんだけど。5年前から使っていないカメラに「普段」とかあるの。
 あと、私が急いでいる人の場合でもこういった対応なのこの人。
 急いでますって言わなかったのが悪いのかな。でも夕飯時のこの時間にこの接客されたら大抵の人ってイライラすると思うけれど、私が「昨日も言いました」って話遮って終わらせなきゃいけないのかな。
 私が嫌な奴にならなきゃいけないのかな。
 いるよね、善意で他人を嫌な奴にさせちゃう人。迷惑。本当に嫌。
 帰りにバッテリー残量が一気に減っていることに気が付いた。通知が多すぎたらしい。Xの通知が異様に来ていた。その中でラジオ局か何かの人にフォローされた通知が来ており、それはさすがに何かの間違いだろうと思った。

 カメラを受け取ってようやく実家へ向かうことができたのだけれど、完全に帰宅ラッシュに巻き込まれてしまった。キタムラの店長のせいである。これは間違いない。と、ココテラスの接客とキタムラの接客に気分を曇らされるのはもう休日の余裕がなくなりつつあるんじゃないかと思った。というかメンヘラムーブ来ているなとも自覚をした。
 もっと好きなこといっぱいやって楽しく過ごそう!と思いながらとりあえずは実家にたどり着いた。
 

ラジオ

 スマホを充電しながら通知を確認したところ、メンションをされていた。
 文フリ開催前の紹介!という感じの趣旨であると思われる。誰だろうこの人と思った。フォロワーさんじゃない。
 毎回本を買ってくださるけれどSNSでは繋がっていない、という方も大勢いる。理由としては私のSNSが不適切であるからである。作品は好きだけれど作者の一喜一憂には疲れてしまう、と思っている方もだいぶいらっしゃるだろうなとは思う。でも、それも含めてのメンヘラエンターテイメントだからとも思う。
 
 でも、そういった繋がっていないけれど面識のある方に関しては私は把握しきっているつもりでいる。
 まじで知らない人。
 それで、何やら先ほど通知があったラジオ局で文フリの紹介をしていてそれで私もその中で名前が挙がったとのことで、ポッドキャストのリンクが貼られていた。それで確認してみたところ、「恐らくは成人向けだと思うのですが~」と自サークルが取り上げられていた。
 いや、1作も書いたことないんだけど成人向け。私、児童文学畑の出身なんだけど。めちゃくちゃ正統派な経歴の持ち主なんだけど。え、不愉快。
 あと恐らくは成人向け、という発言でもう既に「うちのサークルにすら来たことない人だな」が確定してしまった。本、読んだことないじゃん。文フリのカタログでどんな小説書いているかもわかるはずなのにそれすら見ていないじゃん。
 それでカタログの紹介文を読み上げて「~だってよw」「え~w」のやり取りをされた後、他の話題に移っていた。
 
 え、何?これ。
 頭の後ろが冷えた感じがして、吐き気と眩暈と、ああこれ明確に私イラついてるし傷付いているなあと思った。夕飯を食べに実家に来たのに食欲なんかないどころか何か食べたら戻すなというメンタルになったことがすぐに自分で分かってしまった。
 バカにされている、笑いものにされている、嘲笑、冷笑、コンテンツとして消費、ネタ。
 色々な言葉でこの不愉快が起こされてきた。

 「メンションで面識のない人たちを宣伝してしまって」とか本人がSNSで書いていた。というかあのラジオは主旨として宣伝・紹介らしい。
 読んだことない作品をや知らないサークルを宣伝って何。まじで何言ってるか分からないんだけど。
 あと、私に利が一切ないよね、バカにされて成人向け作品書いてるみたいなこと言われて。普通に泥塗られてるだけなのを、何宣伝とか紹介ってドヤ顔してんのこいつキモいんだけど。
 
 ココテラス、キタムラ、と苛々が募ってきていたところに決定打として突き付けられた感じがした。
 無限に湧いてくる思考ととめどない苛立ちと「何も知らないくせに」という気持ちに付随して思い起こされる嫌だった記憶の数々に頭がパンクしてしまう。両親が帰ってきてからも心ここにあらずで、上手く振る舞えたか分からない。ただ、両親に言えはしなかった。

 アパートに戻ってからもずっと気持ちが晴れることもなく切り替えなんて一切できないまま、書斎でアイコスを吸いながらずっと太ももを切り続ける他なかった。涙が止まらないし思考もとめどないし、それなのにその間にずっとメンションのせいで通知がピコピコと届き続けてそれがまた神経を逆なでしてくる。
 こんなことで傷付きたくないのに、自衛して生きているはずなのに、フォローされてメンションされてそんなことされたら言われていることに気付いてしまう。これ言われて私が嬉しいと思ったかな、紹介ですらないのに。普通喜ばないと思うんだけど、なのにフォローとかメンションとかありえないんだけど。
 涙が止まらず吐き気もおさまらず横になっても眠れなかったものだから、結局吐き気止めとしてコントミンを数錠飲んでフェノバールも追加で飲んで横になった。しばらくひどい頭痛がした後に、強制的にシャットダウンされたように意識が薄れる前になくなった。

 

9日目

 昨日、「明日の夜空いてない?」とツーリングを持ちかけられていたので、酷く憂鬱でもあったので気分転換になればと思い「休日なので日中どこか出かけたいと思っているのですが、夜は何時から空いているのですか」と返しておいた。
 朝スマホを見たら「俺は夕方から空いてるに!」と連絡が来ていた。
 夕方からって、何時だよ。
 何時ごろまでに予定を切り上げるか決めかねるから何時からか知りたい、という旨をふんわりと送っておいたが、昼過ぎまで連絡が来なかった。

 オーバードーズの影響でえらく眠い。うとうとどころではなく意識がすぐ持っていかれそうになる。体が布団に溶けていくような感触が心地よくもあり、それでも時間感覚がなくなることだけはODの度に得られる不快感でもあった。
 前を向こうと思っても向くことなんてできる訳もなく、ただなあと思い電話帳を開いた。
 叔父を頼ろうと思った。
 先日もNHKで取り上げられていたばかりであるし、月一でなんかしらのメディアで取り上げられているような気がする。本も出してるし。彼の顔や名前は置いておいても仕事内容に関して知らない人の方が少ないのではないか、という点で一応は有名人なのだ。wikiもあるし。

 なので叔父にだけ連絡を入れた。
 依頼も許可もしていないのにご情報を流され嘲笑もされメンタルが参っているということを伝えておいた。
 何かできることはあるのだろうけれど、してくれるタイプじゃないことは知っている。「そんなの相手にするだけ無駄じゃない?」のスタンスなのだ。
 堅苦しいアスペルガーの両親と違い、叔父は子どもの喜ぶことを何でもしてくれるタイプの大人だったから、子どもの頃は叔父のことが大好きだった。叔父も結婚と離婚を繰り返しており子どもがいなかった分かなり可愛がってくれたと思う。
 ただ、叔父も結婚し子どもが生まれ、私も大人になり精神的に不安定となる中で、声が大きく上昇志向であり自信家かつワンマン傾向も強く独断的である叔父のことがかなり苦手になっていった。そんなんじゃだめだよとか、もう起業してみたらとか、いっそ田舎で暮らせば気分も変わるんじゃないとか、すごく無責任なことをポンポン言ってくるタイプであるし、根本が「周りのせいにしてはいけない」的な思想の持主なものだから本当に苦手で苦手で。無職のメンヘラの大敵じゃん、と思って長年お正月なども会わないように避け続けてきた。

 なので、今回連絡を入れる時に今は非正規ではあるけれど××で勤務しており同人でイラストと小説をやっている、ということを最初に書いておいた。
 叔父は勿論予想通り「放っておくのがベストでは」的なことを言っていたのだけれど、それでも案外同情的というか理解はしてくれるというか、ある程度寄り添ってくれるような返信が届いた。まあざっくり言うと有名税だよね、でも誹謗中傷辛いよね、みたいな。
 いや全然納得できないけれど文フリ頑張ります、と私も返信をした。
 何も納得できはしないけれど、両親には言えないことだったので叔父に言えて良かったとは思えた。達成感。ひとつタスクこなしたわ、と布団の中で思った。まあ何も解決していないし何も納得していないのだけれど。
 頭が回らなかったのでまたそのまんま意識を吸い取られて眠ってしまった。

 書いていて思うのだけれど、私には「朝」と「夜」しかなくて「昼」がないな。
 起きているのが昼なので、それを勝手に朝と呼んでいるせいだろう。
 
 ODの度に思うのだけれど薬が抜け出す頃が一番具合が悪くって、でもやらなきゃよかったという後悔ができるほど頭もまだ回らない。抜けているかどうか怪しいから動いてしまうのだけれど結局脱力でその場に座り込んでしまったり転倒したりする。吐き気や頭痛が再び出てくるのだけれどこの時に吐き気止めや頭痛薬を飲むのは迎え酒と変わらない。ていうか昨晩酒飲んだけれどアレいつから冷蔵庫に入っていたやつだっけ。
 てんかん持ちなので酒は絶対にダメと言われている。普段絶対に飲まないようにしている。そもそも買わない。だからアレって多分誰かが買ってきたやつで、私が他人を部屋に上げたのって多分元旦那が最後の気がするんだけれど何年前の酒だよあれ。
 

 お腹が空いていたので何か買いに出かけなきゃなあと思ったけれどフラフラとするため結局部屋にあるものを適当に食べて、書斎に座り込んだ。
 文フリ行きたくないな、嫌な人来るだろうな、嫌なこと言われるだろうな。でも、参加費も新幹線代も宿泊代も全部払っちゃったし全部高かったんだよな。あと印刷代。しかも今回アンソロだから私が無責任に放棄するの結構まずいかもしれない。いや多分皆許してくれるけれど、許してくれるからといってやっていい訳ではない。モラルの問題だからそれ。
 仕方なく、指差し注文式にしようと決めた。
 メニュー表を作らねばと思ってパソコンを立ち上げて、簡単な書式のものを作って保存した。
 ついでにヘッドホンを注文しておいた。これ、来月支払えるのかなと不安になってきた。準備にかかったお金が高すぎる。
 ああそれから、絵はがき売りたいんだった。
 メニュー表をプリントしに行くついでにハガキもプリントしておこうと思った。あとその時に夕飯買おう。

 しかしお金が追い付かない。あと苛々が全然収まらない。こんなにぼんやりしていて吐き気と頭痛しかない状態なのに苛々が消えていないということはアレは一過性のムーブではなく正当な怒りなのだなと改めて理解した。
 でも抗議のメールとかしても話とか常識とか通じなさそうだし、話の通じない人間がいるという現実に直面したくはないんだよな、生きていく自信を失っちゃうから。だから全然相手に認知されたくないの。本当に、一切私のことを知らないで生きていってほしいんだよね、山本ぽてととか海猫沢めろんとかには。
 あの手の人たちに私のことなんてわかるはずがないのだから交わり合わないでほしい。一切違う世界で生きていてほしい。だからメンションとか本当に不愉快だったな、とか思っていたらまた通知が届く。メンションに対するRTやいいね。
 それで全然溜飲を下げるタイミングがないし、メンタルが不調で接客ができないことはメニュー表にもカタログにも追記しておいたけれど、それに対する弁明がこちらだってしたくなってきた。

 ラジオに傷付いた、はすべてに書いておいたけれど。
 こっちだってこういうことされて嫌だった!は言いたい。100被害者だもん、その権利あるな、と思った。
 書いた紙配るか~と思ったけれど速攻で思いついた書き出し的に、一枚で足りるかな段落とか章を区切って起承転結で主張したいなと思うとコピー本の可能性が出てくる。
 セブンイレブンでコピー本作れるって聞いたけれど、うち、ホッチキスがないんだよな。私が自傷で使うから親が持って帰っちゃってて。
 ともすると……。
 学生時代に授業中に本を作って回し読みしていたことを思い出す。真ん中に切り込みを入れて折るだけのアレなんていうんだろうと思いながら調べてみたら、折り本、と言うらしい。
 テンプレートもネットに転がっていた。
 折り方からして絶対に8ページという制約がある。しかも表紙と裏表紙を考えると使えるのは6ページ。
 初めての試みだあと思った。

 まあ書き過ぎても足らなくても文字のサイズ変えればいいだけだしなあと思って書き始めたそれは案外10分もせずに書き終わってしまって、それをさっさとテンプレートに合わせて書式を変更した。

 途中で右とじで作ってしまったことに気付いて、横書きだから左とじだ……と慌てて作り直した。
 あと絵葉書のサイズが合っていないことに気付いて余白部分の塗りつぶしも間に合わせで行った。

 それでコンビニへと行っていざA3で印刷してみたら、A6ってすごく小さいんだね。文字が恐ろしく小さくなった。でも、10.5で書いておいたから辛うじて目から離しても読めなくもない。
 ギリ罵詈雑言だし、読める人だけ読めばいいものだと思う。
 でもお金になってほしい。ヘッドホンとか今回急に刷ることになったメニューやこの折り本等、お金がかかっちゃったし。
 
 コンビニからの帰り道、傘をさして歩きながら、「死んでくれないかなー」とか考えて「死なないんだろうなー」と自分で着地して。
 じゃあ私が死ぬしかないよなーって思った。
 文フリは人と会う約束してるし。アンソロ持ってかなきゃだし。準備代すごくかかったし。東京で会いたい人もいるし。
 だから戻ってきたら自殺するんだろうな。山本ぽてととか海猫沢めろんとか。全然知らない会ったこともない人たちの名前を自分の最期の作品であるはずの遺書に書くのキモいな、できれば人生に一切記されないでほしかったが過ぎる。関わりたいと思ってないのに関わらなきゃいけないことがもうストレスで希死念慮。
 ああでも、遺書に名前を記さなくてもよくなるように折り本書いたんだって、そう思っておこう。
 全然、前向きになんてなれそうにない。
 今後ともこいつらはこういうスタンスで生きていくんだと思うと、それとそのスタンスの人間が他にもわんさかいると思うと、ここ数年で何とか培われてきた生きてく自信がまた全部なくなっちゃって、賽の河原みたいにすごく定期的に崩されてしまうんですね積み上げてきた自信的なものって。折角働き始めたりだとか、一歩前進みたいな場面が増えてきていたのに。本当に最悪。本当に気持ち悪い。本当、死んでほしいなんて言ったらいけないものだから死にたいという言葉しか言うことができない。
 だから希死念慮がとめどない。

10日目

 特に何をしていたか、覚えていない日だ。
 恐らく本当に何もしていなかったのだと思う。薬を飲んでダラダラと書斎に座り込んでいた。それでたまに気分転換しなきゃと思いながらも動けなかったものだから、机の上に放り出してあるアイコスを吸っていたら箱が空になってしまって、そっからはもうやることなんてなかった。
 連絡はどかどかと来るのだけれどそれらに対して返信をする気力もなくって頭が回らず体が動かずただぼんやりとしていた。
 夜になって、美容院でのオーダーを考えねばと思い自分の輪郭を描きだした。その輪郭に合う髪型を今の長さから描き足していった。

 美容アカウントなどで見るマストなパーツ的なのをてんこ盛りにして確実に可愛くなる髪型と、あまり輪郭カバーされないし自分には合わないけれど好きな髪型の2つを描いて、それを合わせたのが上の画像になった。
 それに色を塗ったら多分似合いそうだと思えた。
 

11日目

 気分が晴れない。
 文化系トークラジオLifeと山本ぽてとによるメンションがRPされたり良いねされる度にこちらに通知が届く。気にしないように過ごしたいというのにこれが文フリ当日まで通知され続けるのかと思えばどんどんと当日行きたくなくなってきてしまう。
 文学フリマ事務局には今回の件をお伝えしてあったし、フォロワーさんの中でもある程度気心の知れている方々に当日行きたくない本当に嫌、という旨をDMで溢しつつ、自身のTLでも今回のことは仄めかしたりとしていた。
 勿論、私の周りの方々は私に同情的であるし慰めや励ましの言葉をいただける。私を知っていたらこの状況が望ましくないことは明白なので。というか普通に、本当にまともな倫理観を持っていたら今回のこれ絶対にダメだろって分かると思うんだよな。

 あ、あと前日に注文したヘッドホンが届いたのだけれど違う商品が届いていたので即座に返品手続きを行った。
 間違えたのは相手なのに「返品期日」がデカデカと画面に表示されていた上、ラベルを印刷して貼るだの手順だのやることが多い。送る商品間違えた挙句にこんな面倒をかけてくるなんてと思いながらとりあえず届いた箱にヘッドホンを詰め直してテープで箱を閉めた。
 それからもう一度Amazonで、同じ商品と思われるものを別のお店から購入した。それも翌日には届くとのことだった。

 

 結構前にコルギの予約をとっていた。
 コルギは2日後に効果が一番出ると聞いていたので、文フリの2日前に予約を入れた。
 GW前のことでまだ求職するなんて思っていなかったものだから、仕事に間に合うように早い時間に入れてしまった。
 
 私は基本昼過ぎまで起きることが難しい。無理に早起きをするとフラフラとするし頭が痛かったり気分が悪かったりと体調に支障が出て「なんとなく具合が悪い」状態が夕方まで続いてしまう。
 コルギだからまあ大丈夫だろうけれどと思いながらも恐る恐るの早起きだった。
 ここ数日まともに食事がとれていなかった。
 ゼリー飲料を朝食として、それから身支度をする。
 コルギは顔周りを触られるためそう化粧をしていくのが望ましくはない。軽く日焼け止めを塗って眉をかく程度にしたので、身支度にそう時間はかからなかった。

 前日の間違えて届いた商品を返品しにまず郵便局へ寄った。最近郵便局前の通りに工事が来ていて駐車場を塞いでいた。何度も迂回をさせられた後に「もしかして郵便局使いたいの?」とため口で誘導のおじさんに言われた。
 帰る時も道が塞がれていてすんなり帰れなかったことを思い出し、ちょっと余裕を持って出たのだけれど、工事はもう終わっていたし、郵便局も空いていてすぐに荷物を受け取ってもらえた。

 身支度にも郵便局にも時間がかからなかったものだから早く着いてしまい、ちょっと時間を潰そうと常備薬を買いにスギ薬局へ寄ったり、銀行へ寄ったり、後回しにしていたタスクをここでこなすことにした。
 そうして丁度いい時間になったところでコルギへと行った。


コルギ

 いつも同じサロンを利用している。母世代の女性がひとりでやっているところで、その人が私にとってはとても感じのいい人だった。
 美容院もそうなのだけれど相手に背中を見せるということにとても抵抗があるし、施術を任せるということに一定の警戒心があるものだから、信頼できる人にしか頼めない。だからコロコロとお店を変えることもしないし、ずっと同じ人を指名で頼むようにしていて。
 コルギは前に違うお店を使っていたのだけれど、かなりのスパンで通わないと効果が持続しないと言われ高価な金額を払い続けた割には2回目以降あまり変わったと実感できずにいた。それと、無理に通っているにも関わらず店員さんの言葉がキツいところもストレスで、通わされている、プレッシャーだ、行きたくない、そういう気持ちになってしまっていた。
 元々美容クリニックでエラボトックスを注射してもらっていたのをもっと安価にできたらと思ってコルギへ行ったのに、ボトックスの方が安いし効果も出るというのがあまりにも馬鹿らしくなんのためにこんなところにと思ってしまっていた。
 
 今のサロンは、物凄く安価だ。ボトックスと比べ物にならないほど安くお財布に優しいため、とても通いやすい。それに加えお姉さんが優しい。優しいというか思慮深い。元々美容院やネイルやエステ等のギャル系元ヤン系の気が強いスタッフに嫌悪感があって美容から遠ざかっていた節がある。
 行きたくないなとかでも行かなきゃなとか思うことなく、ここ2年クライずっと同じところに通っている。

 ライブ前と文フリ前には必ず行くものだから2ヶ月に1回とかかもしれない。ハイペースに通わない分、その都度効果が実感できるのも嬉しい。
 施術後に出してもらえる薬膳茶もちょっとした楽しみになっていたりする。あと立地が最高。都会に出なくていいし原付で行けるし。

 


実家へ

 コルギが終わると実家へと移動する。
 そこでまたずっとぼーっと過ごす。
 文フリ前は極力体調を崩さないように人に会わないよう、疲れないようにしよう、と心がけている。
 秋文フリの前はイミューズやラクトフェリンを1ヶ月前から飲んだりとかなり徹底しているのに対して、今回はとにかく体を休めることに全振りしている。
 実家で犬と一緒にダラダラとしながら、文フリ行きたくないな、ムリだな、とそればかり考えていた。
 
 ただ、2日目に大学時代の友人と会えることは楽しみだった。
 あとイベント後に歌舞伎町行きたいなあと思って前々から気になっていたキャストの方にDMを送ってみたところ当日出勤とのことで、かつて自身が忌み嫌っていた「その日行きますと言っておいてこない奴」にならないためにも東京には行きたいと思っていた。イベントに参加するかはもう別として。
 親には結局詳しいことは何も話せなかった。チラッとは話したけれど、小学生の頃から言われてきたように「気にしなければいい」「そんなの放っておけばいい」とペラい上に何も解決しないようなことを言われ、寄り添ってもらえない人相手に色々話すのって無駄だなあと思って結局ちゃんと話すのをやめた。
 

 夜のうちにドン・キホーテで買い物をするだとかそういう予定を組んでいたのだけれど面倒になってきてしまって、結局荷造りだけした。
 荷造りもあっちこっちに意識がそれで、アレはどこへやったっけとかこれはどこへやったっけとかそういうのが分からないものだから混乱する。リュックとキャリーにものを詰めねばならず、必要なものも今手元にあるものも何一つとして把握していないし。新刊何冊持って行くだとかそういうのもよく分かっていなくって、でも考えたりちゃんと整理したって多分分からないものだから、もう詰めたキャリーを開いて確認するのは控えようと思った。
 これで終わり。当日足りないものに気付いたら向こうで用意する。
 何度も開いて確認してを繰り返している間にどんどん気になってきてしまうし、その過程で必要なものを外に出してしまうこともあるかもしれないし。
 荷造りを終えるともう無気力で、さっさとベッドへもぐってしまった。文フリ当日の予定だけ組まなきゃなとそれを組んでいたら東京の友人から連絡が来ていた。どういう段取りになってる? と聞かれたからなんも決めてないと返事をした。

 


12日目

 前日あまりにも気力がわかず色々と後回しにしていたため、そのツケをこの日に払うことになった。
 

午前中

 美容院は1ヶ月前に予約したのだけれど、その時にはもう既にだいぶ予約が埋まってしまっていて、夕方からしか空いていなかった。16時半、とまだだいぶ時間があったためそれまでにやることやらねばなあと、まずはアパート近くの古着屋へと行った。
 当日の服をまだ決めていなかったのだ。探せばなんかあるかもしれないけれど探すの嫌だったから買おうと思った。
 それで行ってみたのだけれど古着ってなんか嫌だな生理的に受け付けないかもしれない、と独特の洗濯消毒の香りに嫌悪感を抱いて外へと出てしまった。嘘みたいにあっさりと古着の予定が終了してしまったため、ドンキに買い物に行った。
 つけまつげとネイルチップを買っておきたかった。
 
 つけまつげは益若つばさちゃんのドーリーウインクと決めている。上も下も部分ではなくフルを使うし、どちらもたれ目に見えるものを選んでいる。鬼の釣り目がコンプレックスなので。
 それとつけまつげは瞼が伸びる、というのが気になっていた。実際重いしはがす時にだいぶ負担になっているなと思っていた。それで専用の糊があればと思っていたら案外糊のバリエーションも豊富で、指で簡単にオフできるというものがあったのでそれを選んだ。
 ネイルチップは前に友達が勧めてくれたやつとチップ用のシールを買った。
 ネイルどの段階でしよう、今晩かな、とかちょっと考えた。

 昼食を予定に組んでいたけれど食欲がないのでゼリー飲料で済ませたらもう美容院までの予定がなくなってしまっていて途方に暮れかけた。
 どっか出かけるかとスマホを触っていたら美容院から電話がかかってきて、今日もう少し早い時間にずらせたりしないかと言われたので丁度良かった。ありがたく向かわせてもらった。

美容院

 山を越えて美容院へ行き、今回はブリーチがないので早く終わると言ってもらえた。髪を切るのはかなり久しぶりな気がする。前髪を作るのも。
 予約で埋まっていると思っていたこの時間は休憩時間だったようで、ガランとしていた。そこで静かな担当美容師さんに静かに髪を切ってもらい染めてもらいながら明日行きたくないんだよねとかそういう話をしていた。
 でも歌舞伎町行くの楽しみだしと言ったら「似合わなそう」と言われた。
 それはそう、と自分も頷いた。
 都会が圧倒的に似合わない。田舎生まれ田舎育ちの純朴な人間であるので。
 
 

 髪はオーダー通りになった。凄いや。
 触覚部分と前髪部分がオレンジになっているので、ヘアセットが分かりやすい。前髪が割れやすい人間なので前髪がサイドに入り込んでしまい作る時に困ることがとても多い。サイドもどこからどこまでが同じ長さで切ってあるか分からず巻く時にずっと首を傾げながらテキトーなことばかりしていたので、これからはオレンジの部分だけやればいいというのがとても便利。とても助かる。
 あと前髪やっぱりめちゃくちゃ似合うな……。

 

午後

 美容院が終わるとその近くにある超大型ショッピングモールへと懲りずに服を見に行った。GUとかも入っているし。
 ディッキーズの半そでとかほしいんだよな、とか思いながら服を探しに立ち寄った。あとついでにピアスも。左右共に一番下のホールだけ今何も飾っていなくって寂しいものだから、なんか大ぶりなやつ買いたいなと思っていた。元々目星を付けていたやつは売り切れてしまっていたから、しゃあなしでスリコへ寄ったらなんか絶対に新しい髪色髪型に合いそうなやつがあったものだから、その大ぶりなピアスを購入した。
 
 ディッキーズは思ったより取り扱いがなくって、好きな色もなくって、長袖がセールされていたけれど長袖は私も要らなくて。
 GUの方は紫のオーバーサイズの男物が気になったけれど、髪色オレンジで紫の服着てるのなんかキモいな~と思ってやめた。へその出る超ミニのシャツも気になったけれど、試着してみたら腕が必要以上に太く見えてすごく嫌だった。華奢なのでちゃんと華奢に見える服が着たい。と思うと、もう今着ている服が正解な気がしてきてしまったな。
 一応サンタクルーズも見に行ったらへそ出しで超可愛いのあったんだけど5000円超えてた。布面積少ないのに?と思って買うのやめた。
 
 結局300円のピアス以外収穫は特になく、そのまま1階のスーパーで夕飯を買った。たいめいけんのお弁当。冷食のドライカレーが好きなのでドライカレーとハンバーグのお弁当に心躍らされてそれを選んで帰ってチンして食べた。
 冷食とまったく同じ味。ていうか多分まったく同じもの。でも美味しかったし元々好物なので。
 旅行の前日に慣れないものを口にしたくないということもあり、正解のチョイスだったのではと思う。
 
 早めに寝なきゃなと思っていたけれどなかなか寝付けず、明日本当に私東京に行くのかなとか思いながら布団の中で何度も姿勢を変えて、結局眠れたのは日付が変わってからだった。


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