Kaiserreich 進捗報告137 ドイツのリワーク:月曜日と策謀
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前回は新しく拡張されたドイツの設定を紹介し、1936年1月1日までの情勢を伝えた。前菜の後のお楽しみといえば……、そう、今日紹介するのはまさにそれだ! ドイツの第一回ゲーム内容紹介にようこそ。ここでは基本的に1936年と、その後のルートの一つを紹介する。これだけでも紹介して説明すべきことが山のようにあるので、さっそく始めよう。
嵐の前の静けさ
前回の前史設定の直後、1936年1月1日のドイツは政府が機能しない状態から始まる。現宰相ヘルベルト・フォン・ディルクセンは無所属の外交官で、前任者のヨハン・フォン・ベルンシュトルフがボリス・サヴィンコフ率いるロシアとの外交危機を受けて辞任した際、妥協的候補として皇帝ヴィルヘルム2世が任命した人物だ。ロシア問題の専門家であり、悪化した両国間関係の修復を期待されての人選だった。しかしディルクセンは政治家としての手腕に欠けており、ドイツの海千山千の政治家たちに対処しきれずに、ますます孤立していった。
1935年には自由人民党(略称LVP。FVPとNLPが戦後に合流して結成)が「3月連立」から離脱。ディルクセン内閣は少数派政権に転落した。しかし社会民主党(SPD)と祖国党(DVLP)を中心とする野党は、宰相への不信任決議案の提出を拒否した。
何故か? 選挙が迫っているからだ。
1936年4月10日、国民は投票所に足を運んで新たな帝国議会を選出する。ディルクセンが長く宰相の座に居座れば、それだけ信頼を失い、つられて「支配的」政党も失墜していくだろう。そうすればSPDもDVLPもより多くの議席を獲得し、とうとう新たな政府の中核政党になれる。
危険だが、理にかなった戦略だ。しかしこの戦略は予期せぬ結果を生むことになる。
「古い」ドイツの問題の一つが、ブラックマンデーのイベントだ。今のイベントは本質的にはKaiserreichのプロットのきっかけとなって、ゲームに登場するほぼ全ての国家のコンテンツを開始するためだけのものだ。だから背景や設定は一切存在せず、ただ何故か不景気になったと書いてあるだけだ。この課題はリワークで修正される。ブラックマンデーに繋がるイベントは、ドイツが避けられない市場の崩壊にむかって突き進む様子を詳記し、同時にドイツの政治状況に直結した内容となる。
もはやブラックマンデーはいきなり世界に波及する、ランダムな市場崩壊ではない。それは「3月改革」の憲法改正から組み込まれた、長年の政治的停滞が生み出した避けられない結果だ。
大暴落
ベルリン証券取引所の大暴落は、突如としてディルクセン内閣に襲い掛かる。議会の過半数も握れないディルクセンには、十分な経済回復政策を発動するだけの政治資本を持ち合わせていない。そうこうしているうちに景気はますます悪化していく。さらに複数のイベントが発生し、ドイツの不況の余波が広がっていく。次から次へと危機が連鎖し、本来ならば強力な政府が一つひとつ慎重に対応しなければならない状況だが、そんなことは不可能だ。
ではどうなるのか。どん底だ。ベルリン証券取引所の暴落から一か月半、経済はもはや下落のしようもないほど最悪の状況に陥る。製造業は壊滅し、企業が倒産、あるいは従業員の解雇に追い込まれ、失業者数は数百万人に膨れ上がる。
どうすればいいのか?
デュエル開始!
この予告を覚えているだろうか? エイプリルフールに公開したものだが、実はすべて本物だ。
リワーク後のドイツでは、ブラックマンデー危機はカードゲーム型のディシジョンシステムを通じて解消する。プレイヤーは危機の悪化を克服すべく、毎ターンさまざまなカードを組み合わせて、必要な攻撃力と防御力のスコアを稼ぐことになる。1ラウンド勝利するごとにブラックマンデーの補正は外され、合計10ラウンド勝利するとブラックマンデーの効果を取り除くことができる。しかし1ラウンド敗北すると(攻撃力と防御力の数値か相手よりも少なった場合)、勝利ポイントは一つ減り、ブラックマンデーの悪影響はまた増大してしまう!
それと同時に、プレイヤーは高まる国債にも注意しなくてはいけない。もしも200%を超えると返済能力を超えてしまい、債務不履行に陥る。この状況になるとラウンドどころかゲームそのものの敗北だ。すなわち適当にカードを積み重ねるのではなく、戦略を考え、より大きな効果を得られるカードを組み合わせてデッキを作り、勝利を目指しましょう!
自分だけのデッキを作りたい? それならこの大型ブラックマンデーNFツリーの出番だ。NFを達成すると新しいカードがアンロックされ、無数の組み合わせで経済危機に立ち向かえるようになる。
待って、カードゲーム!? なんで!?
まあ、まず何より面白そうだと思ったから。リワーク後のセルビア(あれを作ったのも私だ)をプレイしてくれた人ならわかるだろうが、私はHOI4のコードの限界を拡張して、プレイヤーが戦争以外にも楽しめるような、変わった仕組みを作るのが好きだ。ほとんどの国家タグにおいて、ブラックマンデーからの回復はNFを踏んでゆっくりと補正を外していくだけの、一番退屈な部分だ。だからブラックマンデーがストーリーの根幹を担うドイツでは、もっと魅力的な内容に仕上げたかった。
それと、リワーク後ドイツの1936年は圧倒的な内容にしたかった。プレイヤーは国際情勢から離れて、国内で頻繁する危機を解決しなくてはならない。そうしている間で敵はひそかに国力を伸ばして準備を進め、プレイヤーは不意を突かれるだろう。プレイヤーは大規模なブラックマンデー・システムに集中し、その対策にかかりきりになる。これこそが私のやりたいことだ。
さて、こうしている間にも、国民は声を挙げる……
1936年選挙
先ほど書いた通り、4月10日に選挙が行われる。10を超える政党が出馬し、それぞれ各地の選挙区で独自の候補者を立て、帝国議会の過半数を狙う。しかしプレイヤー側の主役となる政党は2つ、SPDとDVLPだ。
どちらの野党も20年にわたって権力の座から遠ざけられ、多くの支持者と遠大なビジョンを有し、ブラックマンデーが産んだチャンスを最大限利用して独自の連立政権を作ろうとしている。
プレイヤーはどちらかの政党に味方して選挙を進めていく。どちらも独自のイベントとディシジョンを通じて選挙の流れを変え、得票数を伸ばすことができる。
選挙戦の途中、ブラックマンデー危機の責任を取ってヘルベルト・フォン・ディルクセンはついに辞任する。後任には現職のプロイセン首相ジークフリード・フォン・レーデルンが任命され、1923年以来初となる帝国宰相との兼任が実現する。しかしレーデルンがこの立場を有効に活用するのは難しい。国は分裂の度合いを深め、ささいな争いに終始している。そうしている内にもブラックマンデーに端を発する経済危機は悪化する一方だ。
帝国は救世主を求めている。何もかもを元通りにし、何かしらの秩序を確立できる人物を。
救世主
1936年選挙は必然的に明確な多数派を形成しないまま終わり、主導権はふたたび皇帝に移る。長子ヴィルヘルム皇太子を筆頭に、顧問団は揃って一人の人物を推す。現職のプロイセン陸軍大臣クルト・フォン・シュライヒャーだ。
シュライヒャーは人脈構築と政治手腕に長けた軍人で、ハンス・フォン・ゼークトから皇太子までさまざまな人脈を通じて権力の座に登り詰め、同時に中道派や左派の有力者とも関係を築き上げている。とくに労働組合やSPD内部の現実主義者・修正主義者と昵懇で、公共事業などの大衆受けする政策の実施を約束している。
そのため最初、シュライヒャーの宰相就任は帝国議会のすべての会派から感激される。しかしそれは一時的な解決案にすぎない。
SPDと右派(保守党とDVLP)はそれぞれ独自の議会連立、「民主同盟(Demokratische Union)」と「黒・白・赤連立(Koalition Schwarz-Weiß-Rot)」を結成。議会内での勢力拡大を図る。どちらかが過半数の議席を確保できれば不信任決議案を採択し、シュライヒャーを解任できる。皇帝が左右の政党を嫌っていようとも、議会を掌握されては相手の都合に合わせて宰相を任命するしかない。
もちろんシュライヒャーも手をこまねいているだけではない。シュライヒャーを続投させるなら、その交渉能力を試してみよう。議会内のふさわしいグループに注意深く圧力をかけ、不信任決議を妨害するのだ。ここからシュライヒャーは各政党に「フラグ」を立て、連立への参加を防ぐことができる。そして新しいNFツリーが解禁され、特定の派閥を無力化し、野党に反撃できるようになる。
帝国議会で玉座をめぐる戦いが繰り広げられる間も、国全体が動き続けている。経済崩壊の真っただ中であり、緊張が高まりつつある。5月1日、ベルリンでの暴力的な衝突と労使交渉の断絶をきっかけに、ルールの労働組合がゼネストに突入する。
夏にかけてストライキはルール地方を超えて拡大し、全国各地で数十万もの労働者が参加する一大運動、ルール争議に発展する。シュライヒャーにまたしても難題が降りかかる。ルール争議は政権にとって大きなダメージになり、対処に失敗すると間違いなくシュライヒャーは解任され、議会寄りの後任候補が選ばれるだろう。
しかし対処すべきは議会だけではない。プロイセン政府の解散、どこからともなく現れる新たな政敵、さらにはコミューンの介入まで。宰相はありとあらゆる方面からの圧力にさらされる。それでもシュライヒャーは敵を封じるべく策を講じ、ドイツを見たこともないような国へと変えていく……
シュライヒャー独裁
今回はプレイヤーがすべての危機に対処したルートをお見せしよう。シュライヒャーはどうにか議会から解任されずに済んだ。ルール闘争は年末まで続いたが、政治家たちが動揺してシュライヒャーに辞職を迫るほどの規模にも拡大しなかった。
ルール闘争のクライマックスはブラウンシュヴァイク公国での革命未遂だ。工業化の進んだ小さな領邦で、右翼政権が存在するなど、ブラウンシュヴァイクは反乱に対して脆弱な場所だ。そしてスト参加者や革命家たちは全国に革命を広げようと、公の留守中に政府を転覆させ、国に衝撃と恐怖が広がる。ドイツもイギリスと同じように革命が始まったのか? まだそこまではない。ドイツ帝国はまだ安定しており、革命が広がるほどではない。しかしシュライヒャーが抵抗を根絶やしにして、みずからの統治を確立するチャンスだ。
議会が恐慌状態に包まれる中、シュライヒャーは歴史的な法案を制定する。社会主義勢に対処するため、宰相に無制限の権力をあたえ、不信任決議の提出を停止する法律、全権委任法である。これがシュライヒャー独裁の最初の一歩になる。
シュライヒャーは「赤い将軍」の評判とは裏腹に、民主主義者ではない。彼は軍人として思考している。ドイツが二度目の世界大戦を戦い抜いて世界の覇権を維持するのであれば、より強く、より組織的で、そしてなによりも集権化した国家に変貌させるべきと考えている。しかし同時に、反動的な絶対主義も退けている。シュライヒャーはプラグマティストだ。そして反対する運動を統合し、一つの包括的な体制にまとめ上げようとしている。しかし彼の内面については後々紹介しよう。
全権委任法の可決によって、2つめのNFツリーが解禁される。
ここでシュライヒャーは大きく権限を強め、国を集権化する。独自の政党を立ち上げ、領邦の自治権を弱め、労働組合を体制に取り込む。主要国が全体社会主義国家になった場合はそこからも思想を取り入れ、総力戦に備えて動員・武装する国家、「国防国家」の実現をめざす。
これは何の反発もなく実現できる改革ではない。民主派グループは反対勢力を結集し、そしてより大きな事件が発生する。相手はバイエルン王国と領邦諸国だ。シュライヒャーが過度の集権化をおこない、領邦が社会主義革命の防止は名目にすぎないと判断すれば、バイエルン王国は表立って抵抗し、領内でのシュライヒャー改革の導入を取り消すだろう。この事件は法廷に、そして連邦参議院に持ち込まれる。
しかしこの抵抗も粉砕すれば、シュライヒャーに立ちふさがるものはいなくなる。あとはサンディカリストとロシアだけだ。しかし今回は戦前のコンテンツについてのみ語ろう。第二次世界大戦後のシュライヒャー独裁については、また別の機会に語るとしよう。
今日はここまで! お察しのとおり、これはドイツのコンテンツ全体のほんの一部に過ぎない。次の月曜日と金曜日の更新を心待ちにしてほしい。次回のゲーム内容解説、改革と革命に乞うご期待!
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