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【PIT】なぜJoe Musgroveをトレードしたのか

10日に朝起きてTEX-SDの中継をなんとなく見始めたら、Joe Musgroveのノーヒットノーランというとんでもない場面に立ち会ってしまいましたよ。

彼は18年のST前にGerrit Coleとの1対4トレードでPITに移籍すると昨季までローテ投手として3シーズンに渡り貢献してくれましたが、今年1月にSDへのトレードが成立しました。

サンディエゴ出身でファンだったというチームに入り、1969年の球団創設以来初の偉業を達成という事で喜びもひとしおでしょう。

日本のニュースでももちろん大きく取り上げられましたが、今回は「なぜこんなに良い投手がトレードされたのか」という事について書こうと思いますよ。


【隠れた実力者】

まず第一に主張したいのは、彼がGerrit ColeTyler Glasnowの様な「PITで才能を活かせず移籍した直後に覚醒」というパターンでは無いという事。

昨季の1勝5敗/ERA3.86という成績だけ見ればそう見えますが、実はstatcast系の指標ではMLBトップクラスの数字を残していたんです。

だからこそ昨オフは多くのチームが彼に興味を示していました。後にJameson Taillonを獲得したNYYも、当初はMusgroveとの両獲りを画策していました。

昨季は故障もあり8登板/39.2回に留まりましたが、19年には32登板/170.1回と規定投球回に到達して二桁勝利を挙げていますしね。

今季はフォーシームを減らしてカッターを増やすなど投球スタイルに変化が見られます。この辺りがSDの指導なんでしょう、もちろんそれも大きいんだと思います。


【コストパフォーマンスの良さ】

それでも単純に今シーズンの戦力として見た場合、Musgroveよりも手堅く計算出来る先発投手は市場に居ました。

それなのに何故トレードのオファーが殺到したのかと言えば、非常にコストパフォーマンスが良い優良案件だからです。

今の時代なら計算出来るローテ投手をFAで獲得しようとすれば年俸は最低でもで$10M、エース級ならその倍はかかりますよね。

その点、彼の今季年俸は$4.45Mと非常にリーズナブル。更にFAとなるのは22年オフなので、相場より安く2シーズン保有出来ます。

ただでさえコロナ禍でどのチームも収入が激減していますし、ローテの一角を安価で埋められれば他のポジションにより多くの補強資金を使えますから。

やや故障が多いところはあるもののまだ28歳と若いので衰えの心配も不要ですし、エース級の投手では無いのにトレード市場の目玉と言われていたのはそういった経緯がありました。


【PITのチーム事情】

ただ、それであれば昨季のペイロール(総年俸)がMLB30チーム中29位と自他共に認める貧乏球団のPITにとってもありがたい存在なのでは?と思う方も居るでしょう。

もちろんそれは間違いありませんし、むしろ戦力差を考えればSDよりずっとチームに必要な戦力だとすら言えます。

にも関わらず、なぜトレードしたかというと「チームの計画にフィットしなかった」からです。前述の通り彼は22年オフにFAとなります。

そして、PITの再建は22年までに99.9%終わりません。仮に彼が2年連続でCY(サイヤング賞)クラスの成績を記録しても、PS(ポストシーズン)進出は到底望めないでしょう。

むしろ彼の活躍により勝率が上がってドラフトのウェーバー順が遅くなってしまうので、チームからすればマイナスになる可能性すらあります。

買い叩かれてまで無理に昨オフ売る必要はありませんでしたが、幸いな事に良い対価を引き出す事が出来たので僕は放出した事に全く不満はありません。


【受け取った対価】

1月19日に成立したトレードは、正確にいうとNYMも絡んだ三角トレードでした。PITはMusgroveを放出してSDから4人・NYMから1人で合計5人のプロスペクトを獲得しています。

そのうち13人は2021年版のMLB公式プロスペクトランキングでPIT傘下30位に入っており、残る2人のうち1人は今季開幕からMLBで投げています。

簡単にですが各選手を紹介しておきましょう。

HUDSON HEAD
昨オフに獲得したプロスペクトでは最高となる傘下6位に。まだ20歳になったばかりで粗さは残るものの、5ツール揃った将来の"1番CF"候補。

OMAR CRUZ
メキシコ出身の先発左腕で、フォーシームの平均球速は90mph前半ながら(2シーズン)通算98.1回を投げ135奪三振と素晴らしい投球。傘下24位にランクイン。

ENDY RODRIGUEZ ≫
NYMから唯一移籍してきた20歳の捕手。19年はマイナーでOPS.921を記録し、捕手以外に1BやCFなども守りました。現在は傘下27位ですが大幅アップも。

DAVID BEDNAR
19年にMLBデビューを果たしたリリーフ右腕で、地元ピッツバーグに戻りMLB定着を目指します。今季4登板のフォーシーム平均球速は96.7mph。

DRAKE FELLOWS ≫
超強豪大学のVanderbiltで19年に13勝(2敗)を挙げ、この年のドラフトで6巡目指名。まだマイナー未デビューですが、三振が奪える長身右腕です。

メインピースになったHeadは次世代のコアプレーヤーになり得る素材ですし、BednarはMLBで空振りが取れる事は既に証明しておりブルペン定着は近そう。

CruzRodriguezはここ数年、PIT傘下で枯渇していた左腕と捕手のプロスペクトという事で非常に期待しています。Vanderbilt出身のFellowsも面白そう。


そんなこんなで、PITファンとしては…いや、これだと主語が大きいですね。僕としてはあまり「損をした」とは思っていません。

それにMusgroveは本当に“良いヤツ”なんですよ。グラウンドでは投手ながら体を張ったプレーでチームメイトを鼓舞していましたし。

トレードが決まった際には直筆で長文メッセージをSNSに投稿して、PITファンや現地記者から絶賛されました。最後の“BIG JOE”はニックネームです。

PITファンとしてではなく、Musgrove個人のファンとしてこれからも応援しています。

同地区にはLADがいるので茨の道ではありますが、地元チームをリーグ優勝&世界一に導いて貰いたいものです。

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