見出し画像

【PIT】チームを救ったMARCANOの台頭

期待の若手・Oneil Cruzが走塁中に左足首を骨折してから、早いものでもうすぐ2カ月近くが経とうとしています。球場に姿を見せてはいるもののまだ松葉杖をついており、当初の診断通り全治4カ月程度はかかるでしょうね。

昨オフに前レギュラーのKevin Newmanを同地区のCINへ放出しするなど、彼が不動のSSレギュラーとして活躍してくれる前提で編成していたので非常に痛い離脱となりました。

代役として白羽の矢が立ったのは今季がMLB3年目の24歳・Rodolfo Castroでした。昨季は2Bで21試合・3Bで24試合・SSで23試合出場しているUTです。

今季はここまでAVG .264/OBP .368/SLG .426と打撃ではまずまずの結果を残しているCastroですが、SSではわずか23試合/177.2回で6個のエラーを喫してDRS -7/UZR -2.5/OAA -5と散々な結果に。

Cruzの故障から少しして昇格したMLB通算722試合出場のChris Owingsは10試合/64.0回ながらDRS ±0/UZR +0.3/OAA ±0と流石の堅実さではあるものの、打撃はAVG .160/OBP .160/SLG .160でとてもレギュラーで出せる様な数字ではありません。


そんな中で健闘を見せているのが、元々SSとしては頭数に入れていなかった23歳のTucupita Marcanoです。彼はMLBデビューを果たした21年のTDLで、Adam Frazierの対価としてJack Suwinskiらと共にSDから獲得したプレーヤー。

ちなみに“Tucupita”という見慣れない名前は、ベネズエラ北東部にある彼が生まれ育った街の名前であり、かつて独立リーグなどでプレーした父Raulのニックネームが由来だそうです。

Marcanoは昨季MLBで49試合に出場したもののSSには僅か1試合/2.0回しか就いておらず、その大半は2B/LFでプレーしていました。Bryan ReynoldsがLFにコンバートされ、2BはCastroやJi-Hwan Baeが台頭した事もあって今季は開幕を3A級で迎えています。

しかし、開幕から11試合でAVG .422/OBP .458/SLG .689と圧倒的な成績を残し、故障したJi-Man Choiの代わりに今季初昇格。当初は2B中心の起用でしたが、4月末からSSのスタメンを掴みました。

守備に関しては正直なところ「ものすごく上手い」という訳ではありません。指標を見てもここまで23試合/146.2回でDRS -2/UZR -0.1/OAA -2なので「思ってより守れる」という程度です。驚いたのは急成長した打撃です。


2022
[G] 49 [PA] 177 [AVG] .206
[OBP] .256 [SLG] .306 [OPS] .562
[BB%] 5.6 [K%] 24.9 [BB/K] 0.23

2023
[G] 38 [PA] 105 [AVG] .269
[OBP] .333 [SLG] .473 [OPS] .806
[BB%] 5.7 [K%] 13.3 [BB/K] 0.43

昨季の「誰が見ても通用していない」という成績から、短期間でよくここまで持ってきたと思います。リーグでの傑出度を示すwRC+は昨季の57から今季は119と2倍以上の数字になっています。これくらい打てれば守備での微マイナスは全く気になりません。

昇格直後から打球の質が明らかに良くなっており、逆方向にもハードヒットを放てる様になったのがその要因でしょう。statcastを見てもHardHit%が17.2→42.7Barrel%が1.6→7.3と劇的に改善されています。

過去2シーズンは頻繁に(父から教わった)セーフティバントを狙っていましたが、MLBの投手に力負けしなくなった今はその必要も無くなったのか機会はめっきり減りました。

その上でプロスペクト時代に評価されていたコンタクトとアプローチを取り戻して三振が大きく減らす事に成功。MLBで経験を積めば(やや少なめの)四球ももうちょっと増えてくるでしょう。

BABIPやxwOBAを見る限り極端な上振れでも無さそうですし、多少の好調の波はあれど継続して活躍が見込めるのでは?獲得時から「トレード相手のAdam Frazierタイプ」と評されていましたが、うまく行けばもちょっと上を目指せるかもしれませんね。


Marcanoに限った事ではありませんが、プロスペクトから外れた(ルーキーステータスを失った)若手選手は過小評価される事が多いですよね。デビュー直後にインパクトを残さないと、大半の人は興味を失ってしまう印象です。

ただ、Marcanoはデビューが早かっただけでまだ23歳(9月で24歳)です。MLBデビュー前でも全然おかしくない年齢ですし、もしプロスペクトがこれだけの活躍をすればもっと騒がれている事でしょう。

Cruzが戻って来ても2B/3B/SS/LF/RFを守れるスーパーUTとして貢献してくれるも良し、なんならCruzよりも1つ年下ですから(CruzをOFに回して)そのままSSを奪っても良しですよ。

開幕から半月経って合流したため規定打席には到達していないものの、fWAR +0.6はチーム野手6位・rWAR +0.8はチーム野手4位です。このままチームに欠かせない存在になって貰いたいですね。


【参考文献】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?