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【PIT】王の凱旋

Pittsburgh Pirates(PIT)が所謂"ビッグデータ・ベースボール"により長い長い低迷期に終止符を打ち、3年連続でプレーオフに選出してから8年の歳月が経ちました。

あれからチームは長い再建期に入り主力を次々と放出。ロスターに当時を知る選手は1人もおらず、球団社長やGM・監督にコーチなども一新されています。

かつて本拠地PNC Parkを黒く埋め尽くしてJonny Cuetoを動揺させるほどの歓声を上げたPittsburgh市民の関心はPiratesではなく、再びSteelers(アメフト)やPenguins(ホッケー)に移ってしまいました。

しかし、それも過去のものになりそうです。あのトレードから4年と363日(1824日)、遂にAndrew McCutchenがPittsburghに戻ってきました。


ちなみにタイトルは18年のトレード成立後、ベテランのFransisco Cervelliが彼の事を"the king of Pittsburgh"と称した事に由来しています。

"the king of Pirates"ではないのが良いんですよね。復帰が報じられた時に他スポーツのファンも熱狂していたのが、Pittsburghにとって特別な存在である事を表しています。

先日投稿したmailbagでも書きましたが、彼は息子に“Steel”という名前を付けています。これはかつて鉄鋼の街として栄えたPittsburghの愛称“Steel City”から取ったもの。

18年1月にトレードでチームを去った時は、Bryan Reynolds(とKyle Crick)という最高の置き土産まで残してくれましたしね。

Francisco Cervelli felt the same initial sadness most of Pittsburgh experienced after seeing Andrew McCutchen and Gerrit Cole traded last month. Cervelli called McCutchen "the king of Pittsburgh" and said Cole had the "best arm I've ever seen in my life."


05年ドラフトで1巡目(全体11位)指名されて09年にMLBデビュー。11-15年に5年連続で球宴に選出され、13年はNLのMVPに輝いたCutch(彼の愛称)ですが、36歳となり流石に衰えが顕著になっています。

デビューから14年目の昨季はwRC+ 98と、僅かではあるものの初めて平均の100を下回りました。昨季の成績を簡単に振り返ると…

G 134┃PA 580┃AVG .237
HR 17┃OBP .316┃SLG .384
DRS +5┃UZR +0.3┃OAA +2

※守備指標は最も就いたLF(268.1回)での数字

10年前と比較するのは流石に可哀想ですが、やはり12-14年で3年連続.300/.400/.500を達成した頃の面影はありませんね。特に長打率が.400に到達していないのはショッキング。

statcastの打撃系指標を見ても、15年はほとんどがMLB上位15%以内と結果だけでなく打球の質もトップクラスでしたが…昨季はその多くが50%近くまで低下しています。

しかし、加齢で先に衰えそうな目(Chase Rate)と足(Speed)は依然として衰え知らずで上位10%以内を維持。ボール球には滅多に手を出さず、36歳にして走力はMLB最高クラスです。

更に今季から極端なシフトが禁止される事も追い風になりそう。というのも、Cutchは今季打席の49%でシフトを敷かれており…

[No Shift]
AVG .341┃OPS .773┃BABIP .341
[Shift]
AVG .262┃OPS .580┃BABIP .259

と、結果は一目瞭然です。2年連続で.240未満に終わった打率もある程度改善されるでしょう。 ※これは打球がグラウンドに飛んだ時の数字なので四球や三振・HRなどは考慮されていません。

LADNYMSEAなどコンテンドしている多くのチームが彼に興味を示していた(ただし4番手OFとして)事から考えても、一定の成績は残してくれるはずです。


19年以降はLF中心に守っていますが、おそらくRFでの起用になるでしょう。本拠地のPNC Parkは左中間が広く、守備の重要性は「CF=LF>RF」なのです。

17年にCFからのコンバートが検討された際も、(LFではなく)CutchはRFへ。15年にLFでDRS +22を稼いだStarling MarteがCFへ、15年にRFでDRS +11を稼いだGregory PolancoがLFへ、時計回りに動きました。

これを踏まえると…

[ C ] Austin Hedges
[1B] Ji-Man Choi
[2B] Rodolfo Castro
[3B] Ke'Bryan Hayes
[SS] Oneil Cruz
[LF] Jack Suwinski
[CF] Bryan Reynolds
[RF] Andrew McCutchen
[DH] Carlos Santana

今季スタメンの基本線はこんな感じになりそう。台頭しつつある若手に、Hedges・Choi・Cutch・Santanaらベテランが加わってなかなか良いラインナップになりました。

先発が左腕であればSuwinskiの代わりにConnor Joeを入れたり、Choiの代わりにSantanaを1B・CutchをDHに入れる選択肢もあります。右腕であればTucupita MarcanoCal Mitchellら若手のアピールに期待。


再建も終盤に差し掛かっているPITですが、直近3シーズンは勝率.317→.377→.383と3年連続で.400にすら達していません。20年は短縮シーズンだったのでさておき、21年の101敗に続いて昨季も100敗を喫しました。

Roansy ContrerasOneil Cruzの台頭はあったものの、マイナーでも期待されながら結果を残せなかったプロスペクト達が多いなど、昨季は全体としてやや停滞感があったんですよね。

クラブハウスのリーダーとして名高いCarlos Santanaを筆頭に、若手投手陣への指導に意欲を見せるRich HillVince Velasquez、COLで万人に愛されたConnor Joeなど、このオフに獲得したのは若手に良い影響を与えられる選手ばかり。

それに加えてPittsburghで絶大な影響力があり、前回のプレーオフ進出を中心選手として経験したCutchの加入ですよ。もう今季は期待しかありません。


そんなこんなでいまいち纏まらないのでこの辺りで最後にしておきますが…現時点で通算1948安打・392二塁打・287HR・983四球という事で今季は記録ラッシュになるでしょうが、これはあくまで通過点だと思っています。

来年も再来年もBlack&Goldのユニフォ-ムでプレーしている姿を見たいですし、いつかはRoberto Clementeの背番号21と連番で、背番号22が永久欠番になって欲しいなと考えているのは僕だけでは無いはずです。


※サムネは下記ツイートより引用しています

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