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【PIT】TDLプレビュー '22

現地の8月2日の夕方18時、日本時間では8月3日の朝7時に設定されている2022年のTDL(トレードデッドライン)が近付いて来ました。

7時を過ぎても期限ギリギリに成立された滑り込みトレードがチラホラと発表されます。ド平日の水曜日ですが徹夜で動向を追う方は直ぐに寝ない様に気を付けましょう。

さて、今回はPittsburgh Pirates(PIT)のTDLでの動きについて書いていこうと思います。ドラフトなどで後回しにしていたらギリギリになってしまいましたが。


現在はPITはつい先日まで3位でしたが、直近10試合で2勝8敗と負け続けて40勝62敗(勝率.392)。昨季の61勝101敗(勝率.377)とほぼ変わりません。

気付けば開幕から大ゴケしたCINに引っくり返され、地区最下位に転落してしまいました。

このTDLも明確な「売り手」です。来季も基本的なスタンスは変わらないので、今オフ~来オフFAの選手は無条件でトレード候補となります。

先日トレードが成立してNYMへ移籍したDaniel Vogelbachも契約は1年ですが、来季の格安クラブオプションが付いていました。


Vogelbachと並んでこのTDLで必ずトレードしておきたいのは、共に今オフでFAとなるJose QuintanaBen Gamelのベテラン2選手。


特にQuintanaはかつての様にイニングこそ稼げなくなったものの、投球スタイルを見直してERA 3.50/FIP 3.24と全盛期並の輝きを取り戻しました。

特に球宴明けのラスト2登板で12.2回を無失点に抑えたのが非常に大きかったです。ERA 3.99と3.50では印象が全く違いますからね。

キャリアを通じて投球の60%近くを占めていたファストボール系を今季は約10%減らし、代わりに10%程度だったチェンジアップを約25%まで増やしています。

昨年に同じ左腕スターターのTyler Andersonを放出した時の対価は傘下30位前後のプロスペクト+低層のスリーパーでしたがもっと欲張れそう。

一方のGamelは今季LFでUZR +4.0(Inn 401.0)・RFでUZR +1.5(Inn 86.2)と両コーナーを平均以上で守れ、1BとCFのバックアップもこなせます。

打撃はOPS .682/wRC+ 97とリーグ平均程度。四球を選べるものの、ワイルドな風貌に反して長打力はイマイチですね。

堅実な4番手OFとしては問題なく使えるかと思います。こちらに関してはそれほど大きな対価を期待してはいません。

本来であれば彼らと並んで、1.5シーズン保有(23年オフFA)出来るChris StrattonもこのTDLで放出してそこそこ良い対価を引き出す予定でした。

しかし、昨季にG 68/IP 79.1/ERA 3.63とフル回転した影響なのか、今季はG 40/IP 40.2/ERA 5.09とボロボロ。

ただ、FIP 3.76→3.61と内容はむしろ良くなっています。原因はハードヒットが増えてBABIP .293→.365とフィールド内の打球がヒットになっているから。

ファストボールとカーブのスピン量は依然としてMLB最高クラスなので、どこかが修正可能と判断するかもしれません。

ただ、それほど良い対価を出してくれるとは考えにくいので、復調を待って今オフor来年のTDLに売るのが基本線でしょうね。


これ以降に紹介するのはFAまで2.5シーズン以上保有出来るので、Stratton以上に焦って放出する必要のない選手達です。

先に触れておくと、CFのBryan ReynoldsとクローザーのDavid BednarはこのTDLで動く可能性はかなり低いと思います。

昨日まで出産に立ち会うためチームを離れていた(現地7月30日に無事生まれました)Reynoldsですが、3.5シーズンとまだまだ保有出来ます。

CF守備も今季の指標は良くないものの、昨季はOAA +10を記録してGG賞のファイナリストに選出されました。

今季はAVG .251/HR 15/OPS .779と調子が上がりきっていないものの、通算wRC+ 125とリーグ平均を大きく上回る貢献してくれています。

ただ、昨オフもエクステンションは全く進展が見られないので、今では無いにしろそう遠くない未来にトレードとなるでしょう。

昨季もセットアッパーとして貢献したBednarはまだ調停権すら得ておらず、FAになるのは26年オフで4.5シーズン保有出来ます。

前半戦に支配的な投球を続け、K/9 12.15を記録するなど絶対的なクローザーとして君臨。チームで唯一球宴に選出されました。

しかし、酷使が祟ったのか徐々に失点が増え始め、5月28日にはERA 0.75だったのが約2ヶ月で2.70まで悪化。

個人的に「再建期に台頭したリリーバーは劣化する前に売り切れ」と思っていますが、このタイミングではなさそう。

PITからすればReynoldsもBednarも本来なら“今トレードする必要のない選手”なので、出すからには法外な対価を要求します。

どちらも調子が落ちてる今、妥協してトレードを纏めるメリットがありません。それでも応じてくれるチームが無い限りはキープでしょう。


有力候補になりそうなのは、超大型SSのOneil Cruzにポジションを奪われる形になったKevin Newmanです。

ルーキーイヤーの19年にAVG .308/HR 12/OPS .800と素晴らしい打撃を披露するも、20-21年はOPS .556→.574とボロボロ。

しかし、今季は慎重過ぎた打撃スタイルを反省したのか(空振りは増えたもの)二塁打を増やしてAVG .289/HR 0/OPS .759まで戻しました。

守備もSSだけでなく2Bを無難に守れる事を証明しています。あと2.5シーズン保有出来ますがDiego CastilloTucupita Marcanoなどが台頭。

ユーティリティならHoy Parkもいますし、マイナーにはもう1人のトッププロスペクトLiover Pegueroも控えているので、好調なうちにトレードすべきだと考えます。


最後に、大穴としてJT Brubakerを挙げておきましょう。7月31日のTDL前ラスト登板で崩れて数字を落としたものの、IP 104.1/ERA 4.40/FIP 3.86とまずまずの数字。

長打を量産されたフォーシームをほぼ捨ててツーシーム中心の投球に変更した事が功を奏し、昨季のIP 124.1/ERA 5.36/FIP 5.16から大きく改善しています。

ようやく一本立ちしたところですし、まだ3.5シーズン保有出来るスターターをトレードするのは勿体なく感じますが…

デビューが遅くなったこともあり11月で29歳になるんですよね、昨冬のJacob Stallingsと同様にチームの再建計画と彼の全盛期がマッチしなさそう。

それならオフに調停が始まるこのタイミングで放出するのも有り。今年が売り手市場なので尚更です。


そんな訳で昨年のTDLはAdam FrazierTyler AndersonRichard Rodriguezら主力を次々と放出。

更にClay HolmesやらAustin DavisやらBraeden Ogleと細かい動きもして盛り上げたPITですが、今年は比較的静かなものになりそう。

「QuintanaとGamelを放出して終わり」も十分有り得ます。個人的にはNewmanをうまく売って欲しいんですが…残り30時間ちょっとしかありません。

市場全体の動きが無さすぎて戸惑っていますが、最後終わった時に「今年のTDLも盛り上がったな」と言えるものになると良いですね。

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