【PIT】24年TDLを振り返る
現地時間の7月30日18時、今年もトレードデッドライン(TDL)を迎えました。リーグの戦力図を一変させるようなメガディールは無かったものの、例年よりトレード成立件数は多かったですよね。
我らがPittsburgh Pirates(PIT)も現地7月29-30日で7件もトレードを成立させて合計15人の選手が移籍しています。1人1人を取り上げるとかなり時間がかかりそうなので、今回は全体を通しての雑感を書いていこうと思います。
◆◆ 獲得選手 ◆◆
戦力的に最も大きいのは期限の約30分前に報じられたIsiah Kiner-Falefa(IKF)です。昨オフに2yrs/$15.0MでTORと契約すると、今季はここまでfWAR +2.0/rWAR +3.1とキャリアベストのシーズンを送っています。
今季は2B/3B中心ですがSSも守れますし、昨季はLF/CFでも250.0回前後プレーしています。(TEX時代の19年が最後ですが)元々はCですから有事の際はマスクをかぶってくれる事でしょう。契約は来季まででTORがサラリーを$2.2M負担してくれるのも有りがたいです。
その少し前に発表されたBryan De La Cruz(BDLC)は今季既に18本塁打を放っている右の大砲。一方で低出塁率のフリースインガーであり、守備も上手い訳ではないのでfWAR +0.1/rWAR +0.2に留まっています。
守備はPNC Parkの狭いRFを守らせる事で誤魔化すとして、現在27歳とまだ若いので打席でのアプローチが良化する事に期待です。調停スタートは24年オフ・FAは27年オフとコントローラブルなのも魅力。
Jalen BeeksとJosh Walkerはどちらも左のリリーバーですね。特にBeeksは今季COLで既に45登板(通算176登板)しています、今オフFAの“レンタル案件”ですね。
Walkerはそれほど実績がなくNYMからDFAされたのを拾った形なのでお試し枠ですが、まだマイナーオプションも残っていますし確かにハマれば面白そうな投手。2人でAroldis Chapmanの負担を少しでも減らして欲しいところ。ここまでがMLBレベルで期待している選手達。
Nick YorkeとBilly Cookはどちらも内外野をこなしつつ、今季3A級でリーグ平均以上の打力を示しているプロスペクト。それぞれMLB公式のプロスペクトランキングでPIT傘下5位と傘下18位に選出されています。
Ronaldys Jimenezは23年に契約して今季DSLでデビューしたばかりの18歳。Rule 5 eligible(Rule 5 draft対象)になるまで時間があるので、こういうトレードも地味に大事なのです。
◆◆ 放出選手 ◆◆
8選手のうち5選手がMLB公式のランキングでPIT傘下30位以内に選出されていたプロスペクトです。TDL突入前でJun-Seok Shimが傘下16位、Garret Forresterが傘下17位、Patrick Reillyが傘下19位、Charles McAdooが傘下28位といった具合ですね。
個人的にはReillyをかなり評価していましたし、McAdooは更新されれば11-15位あたりにジャンプアップしていたでしょう、Luis Peraltaもひょっとしたら傘下30位あたりに入っていたかもしれません。
その辺のランキングの信憑性(正確かどうか)はともかく、「手を付けたくないプロスペクトには手を付けなかった」という事です。Nicolas Carrenoも昨年契約したばかりのDSL所属のスリーパー。
ダブついていたスターター陣から今オフFAのベテランMartin Perezと、昨季MLBデビューを果たしたものの伸び悩んでいる感があったQuinn Priesterをトレードチップにしたのも想定内の動きですね。
◆◆ TDL雑感 ◆◆
27日に投稿したプレビュー記事でも書いていた通り、「投手で野手を買う」「狙うのは来季以降も保有出来る選手」「並行してプロスペクトも補充する」という動きをしました。
今年は“明確な売り手”が少ない影響か、例年の相場感だと(買い手が)払い過ぎにも思えるトレードが多かったです。そんな中でPITが成立させたトレードは概ね妥当と感じるものばかりで、そういう意味ではうまく立ち回ったと言えます。
…とはいえ、とはいえですよ。
Ben CheringtonのGM就任と同時に再建をスタートさせて4年半、ようやくシーズン勝ち越しのまま“買い手”としてTDLに突入出来るところまで来た訳です。後半戦スタートのPHIとのホーム3連戦は全てチケット完売していますからね。
そういう意味では堅実な動きだけでなく、コンテンドの狼煙となる様な、分かりやすいフラッグディールが1つ欲しかったなと。あくまで個人的な意見ですけどね。
まぁ、MIAのJazz Chisholmに対してNYYの次に良いオファーを提示していたのがPITだった(3番手がKC)という報道がありましたから、おそらくCheringtonの本命は彼だったんでしょう。
それでも実績あるレフティのBeeksは「Holderman→Chapman→Bednar」が鎮座するブルペンに更なる厚みを持たせてくれますし、スーパーUTのIKFとスラッガーのBDLCは選手層の薄いPITの打線に厚みを加えてくれます。
また、PITのマイナー組織は野手プロスペクトが投手に比べると質・量共に劣る上に、期待出来そうな選手達がマイナー低層に固まっていました。そこに3A級で結果を残しているNick YorkeとBilly Cookが加わった事でバランスはかなり良くなっています。
マイナー組織を守りながらコンテンダーとして最低限の戦力を整えたのは一定の評価が出来ますが…純粋にこのTDLの動きだけを採点するなら「65点」といったところでしょうか。
このTDLで放出せず貯め込んでいるプロスペクトや若手を使って、このオフにどんな動きをするかですね。GMのCheringtonを評価するのはそれまで保留しようと思います。
【参考資料】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?