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あなたが知らない断熱材の世界

お疲れ様です。

Twitterで断熱材についてツイートしたらリアクションがよかったので今回は断熱材について記事を書いてみようと思います。

今の時代、「高気密高断熱」を謳う家が増えました。大工さんはそれぞれの価値観や考え方、つまり「大工道」がありますので意見が割れることもありますが(建築士のみなさんも似たような感じかな?)
僕は住宅の性能として断熱はすごく価値あるものだと思います。
冒頭から恐れずに言うならば、どんな一流の仕事で寸分違わぬ仕事ができたとしても断熱しない建物は住まいではなく小屋と同じだと思っています。安全性や耐久性やデザインも大切ですが住みやすさの追求も諦めてはいけないと思うからこそ、性能についても考える余地くらいはあるはずです。もちろん伝統とかも大事ですがね。

断熱に関しては業界内で以前から注目されていましたが、一般の方も注目してくれる時代になりました。
現実的に我々がいくらおススメしようとも、実際に購入する一般の方がそこに価値があると理解して魅力的に思ってもらえないとやりようがないので、断熱が大事と考える施主さんが増えて嬉しい反面、もう一つ理解を深めてもらいたいなと思うことが多々あります。
やはりググった先に書いてある世界や机上の話しと現場は違うこともあるのです。たまにSNSでも施主さんがあげた画像にトンチンカンなこと言ってる同業関係者を見かけると理解が足りないなと痛感します。
まさに最前線である現場の大工さんが発信することはあまりないと思うので良かったら最後までお付き合いください。

昔の断熱材 (普通の大工さん目線)

断熱材というものは昔は「入っていればいい」という時代がありました。昔の家と言っても今の子育て世代の親や祖父母の時代あたりだと断熱材が入っていない家もたくさんありました。(リフォームでは今でもたまに出会います)
「断熱材が入っているだけで上等」という時代のあとに「断熱材を入れるのが普通」という時代になります。

入れるのが普通となったものの、この時代の「とてもキレイに断熱材を入れている」と言われたものは今では汚い入れ方の部類に入る程度です。この品質の時期が長かった。(今でもキレイじゃない入れ方は往々にしてありますが…)

ちょうどこの時期、日本自体も不景気になったのかな?単価がガンガン下降していくorお値段据え置きでやる事が増えました。そのような状況だと、工務店であったり大工さんからしたら材料費も仕事も増えている、断熱材も入れることは入れているから仕様書通りで嘘もついていないし欠陥ではないという意識の方もいたのではないかと推察します。
断熱材に関しては生活に著しい支障があるようなものではなく施工不良の定義も難しいため、仕様書の通りの品物が入っていればよし。そうなってしまうのもわからなくありません。
特に断熱材は扱いにくい素材でもあるので現場では多くの大工さんから敬遠されているのも事実です。


 断熱材もなければ気密性も低いすきま風が多かった昔の建物は「雨漏り」も多かったのですが、湿気がすごかったり少し雨漏りしても、水がすきまから抜けたり通気ガバガバで乾いたりすることも多くありました。なにせ壁と天井裏を区切るものは無かったので、火にも弱く、害虫や害獣被害も多くありました。今では耐火被覆工事をしますのでそれぞれの空間が区切られて、気密性や耐火性もかなり高くなりました。そのかわり通気ガバガバではないので雨漏りは必ず防がなければなりません。

ですがその防水性能の低い家へ更に断熱材が入ると、断熱材自体が水を吸い込みいつまでも水気が抜けず木が腐る原因となります。この過程で断熱材が「悪」と受け取る方もいました。僕はそもそも防水性能を上げるべきだし正しいメンテナンスをすべきと思います。

そんなこんなで、断熱材は扱いにくいしそれなりに入れてあればクレームはない。けれど水を吸い込むとクレームを引き起こすものとなる。雨漏り対策が甘い時代も重なり、断熱材の価値や正しい知識がない人が多かったことで少し残念な扱いをされていました。


今の断熱材(もちろんわい目線)

少しずつですが時代や人材の新陳代謝が進み、断熱に対する知識を得た設計士さん監督さん職人さんが増えてきました。高断熱の家も増え、気密性にこだわるようになりました。これは雨漏り対策や電気、設備工事など関連し得る他の部分のノウハウが進化した証でもあります。
高気密高断熱の家を完璧に施工するにはその他にも様々なノウハウが必要なんです。大工以外の意識が低くても完成しないのです。

それほど広い範囲かつ多くの知識、経験、技術をぶち込んでいて万が一クレームになった場合の被害はリスキーなものなのに、高気密高断熱工事の施工費は本当に安いと思います。一生に一度の買い物だから全体を見ればそりゃ高いんですけども。なので断熱にお金かける人は最高にセンス良いと個人的に思います。

ちなみにこの高気密高断熱のノウハウは本当に大切なので、もしご自宅に導入する方は業者選びに注力してくださいね。大手は補償ができる体力はあるかもしれませんがやはり現場の人間が作業します。できない人間がいくらがんばって作業しようと、知識がない人が管理や検査をしても無意味だと思います。
半端な気密や高断熱は僕はおススメしません。


断熱材の種類

断熱材には、いくつか種類があります。一般の方にわかりやすく説明すると
「発泡スチロールに似た素材をボードにした断熱材」
「わたあめのように、ふわふわなウール状の断熱材」
「ウレタン樹脂を発泡させたものを吹き付ける断熱材」
「古紙などの繊維を充填していく断熱材」

この4つあたりがメジャーなところでしょうか。

1番目のボード系断熱材はスタイロフォームなどがあります。

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他と違い定型で自重に耐える程度の剛性があります、そりゃボードなので。その利点を活かし床下で使われる事が多いです。あとは外断熱などでも大活躍。複雑な加工が必要になるとボードなので手間がかかり、隙間が空きやすい。

2番目のウール系断熱材は1番ポピュラーかつ安い。グラスウールやロックウールなどがあります。

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どれも加工はカッターでできる。若干大きめにカットしたものをムニュっと入れることができるのでボード系より隙間が空きにくい。一般の方にわかりやすく言うと羽毛布団のようにふんわり空気を含んで断熱する仕組みだ。大工さんが施工するのが一般的だが、断熱材メーカーが推奨する通りに入れられるほどの工期や施工費はなかなか出ている場合がないために○×¥☆%!!!(自粛)

3番目、発泡ウレタンの吹き付け断熱は、専門業者が現場に来て施工するのが一般的です。

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もちろん彼らはオプションなので施工費をもらいます。当然。
モコモコ発泡しながら空間を埋めていくため、隙間が空きにくく気密性は抜群です。硬化する前、初期段階は若干の接着能力があるので壁内に粘着するため吹き付けられる。沈下などの心配は少ない。防湿シートを別途貼らなければ防湿層がないこと、雨漏りや害虫被害がわかりにくいのがデメリット。

4番目の、古紙など紙繊維を充填していく断熱材はセルロースファイバーなどがあります。

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これも発泡ウレタンと同じく専門業者による施工です。これをパンパンになるまで充填していくので空間が埋まりやすい。ホウ酸などが配合されていると皆さんが嫌いなゴキさんなどの虫除けになると言われている。シロアリはアリではなくゴキさんの仲間なので同じく効果が期待されている。先にシートを貼って古紙を詰め込んでいく形が一般的なので、防湿層が作りやすい。
古紙を詰め込むため、密度が少ないと経年で沈下してしまい隙間が空くのがデメリット。

と、まぁ僕の解釈ですが説明はこんな感じです。

良い断熱ってどういうこと?

壁の中に断熱材を入れたり壁の外に断熱材をはりつけたり「どこで断熱するか?」のアプローチの違いはありますが、断熱材は家の外の温度が室内に伝わるのをやわらげてくれています。更に気密をすると空気の流れが止まるので温度変化を軽減しています。
みなさん意識していないだけで意外に家の中はたくさんの気流が発生していて、コンセントやライトからも空気はかなり出入りしています。窓やドアや通気口を閉めて換気扇でも回してコンセントに手をかざせば言っている意味がわかるかもしれません。

窓ガラスによく水滴がついていますよね。科学の専門家じゃないからザックリになっちゃいますが、温かい空気と冷たい空気が触れ合うと、温かい空気の方に水滴が発生します。それが冬場の窓ガラスに水滴がついている主な理由です。
まず大切なことはきちんと断熱をして外の温度を室内に伝わりにくくします。そしてその温度が逃げないように、そして結露しないように外の空気と室内の空気が触れ合わないようにします。そのために気密工事をします。なので通気、気密と断熱材の施工はセットです。
気密すりゃいいってもんでも通気すりゃいいってもんでもなくて、なんとなく適当にやると時にはとんでもない被害に発展するのです。
「良い断熱」はこれらの作業をいかに精密かつ正確にやれるかということになります。寒い地域なんかはやはり施主から施工者までみなさんの知識や経験はもちろん、そもそもの意識が高いのでしょうか、断熱材の施工が素晴らしい方が多い印象です。


おススメは何か?

ここまでいろいろ説明させていただきましたが、僕としては断熱材はウレタン吹き付けorセルロースファイバーなどの充填をして、きちんと防湿層を設けることをおススメします。
よく言われるのが、充填する断熱材は商品の質が高い!と。それはちょっと語弊があり正解とは言い切れません。ボード系の断熱材やウール系の断熱材もかなり良い商品なんです。品物の性能はきちんとしたものを選べばどれもあまりかわらないと思います。それくらいどの商品も開発頑張っているのでしょうね。
ではどこが変わるのか?となると、変わるのは断熱欠損があるかどうかや防湿層がきちんとあるか、通気や気密はできているか?その施工部分です。
やはりきちんと施工費もらって工事ができるのは強いです。羨ましい!(本音)
そして専門業者たちは知識や経験は大工よりありますし、工法も合理的です。なので充填する断熱材をおススメしています。ボード系の断熱材を用いた外断熱や内断熱も理論的にはかなり良さそうなのですが、おススメできるほどの知識や経験が僕にありませんすいませんすいませんすいません(土下座)

1番ポピュラーなグラスウールについては、品物の品質は良いのですが現状はグラスウールを完璧に入れる知識や経験があり、なおかつきちんと工期があり施工費も出ているというケースが僕の知る範囲だとなかなかないのです。ベターな施工はできてもベストは厳しく、ぶっちゃけ木造建築で1番ポピュラーな在来工法との相性があまり良くないと感じています。昔ながらのタイプは特に。1番ポピュラー同士なんですが。。。


とまぁ、僕なりの説明ではありましたがやはり工期を取り予算をつけ検査もしくは保証という仕組みがないと品質を求めていくのはなかなか難しいと思われます。誰かに押しつけたりモラル頼りだったり、やりがい搾取のような仕組みは綻びが出やすいのです。その観点から考えると、やはり専門業者にやってもらうのが1番安定、安心、信頼を高品質で得られる確率が高く、結果的にコスパもいいと思います。世の中には、
「値段のわりに良いものはありますが、本当に良いものは高くて当たり前」だということは家だけに限らず全てのものに言えると思います。僕も含めて消費者として頭の隅に置かないと無理難題を押しつけるだけになってしまいますので気をつけたいところです。

これから家を買う方、リフォームを検討している方、自分の知識の一部として取り入れてくれる方などの参考になれば嬉しいです。

以上、今日もご安全に!


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