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10代による10代のためのポッドキャストが人気!等身大の悩みでリスナー数が急増【ポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』文字起こし】

海外のトレンド、若者の間で生まれる新しい価値観を、各国で暮らす編集者・ライターがお届けするポッドキャスト番組『グローバル・インサイト。この番組ではリスナーからの反響が大きかった人気エピソードの文字起こしをnoteで配信しています。

今回は10代による10代のためのポッドキャストが人気!等身大の悩みでリスナー数が急増の回を文字起こししました。

友情、学校、家族、お金、恋人、ニキビーー限りない10代の悩みを、とりとめもなくおしゃべりする5人のアメリカ人高校生によるポッドキャスト番組が人気を博しています。その名も『Teenager Therapy(ティーンエイジャー・セラピー)』。ロックダウン中には10代のリスナーたちの駆け込み寺的存在になり、彼らの悩みに寄り添いました。なにが彼らを惹きつけているのでしょうか?(出演:山本直子岡徳之

人気ポッドキャスト『ティーンエイジャー・セラピー』?

山本 岡さん、普段どんなポッドキャストを聴いてます?

 結構いろいろ聴きますけど、ガジェット紹介とかをよく聴きますかね。山本さんは?

山本 私も仕事柄いろいろ試しに聴いてみたりするんですけど、結構Z世代が聞くような番組も聴いちゃったりしていますね。

 Z世代の番組というと、『Kemioの耳そうじクラブ』とか?

山本 そうそう、それも聴いてます。あと、最近記事に書いたのがきっかけで、よく聴いているのが、アメリカのティーンエイジャーの間で人気のある『ティーンエイジャー・セラピー』っていう番組です。

『ティーンエイジャー・セラピー』って、ティーンエイジャー向けなんですよね・・・?

山本 そう。私はもうティーンエイジャーの母親世代なんですけど、結構面白くて聴いちゃう。

 へえ。どんな番組なんですか?

山本 アメリカの5人の高校生たちが、ティーンエイジャーの抱えるいろんな悩みをベッドでだらだらしながら、とりとめもなくしゃべる・・・ っていう番組。

 ほお、ティーンエイジャーたちのおしゃべりなんですね。学校のこととか、友達のことか、恋愛のこととか・・・?

山本 そうですね。あとは「大学進学と将来への怖れ」とか「お金は人を幸せにするか?」なんていうテーマもありましたね。あと、「ニキビ」とか(笑)。

 わあ、なんか青春ですね。

山本 そう。なんか聴きながら昔を懐かしんじゃったりして。

 そういう10代が抱える普遍的な悩みを、10代が話しているっていうのがウケているんですね。

山本 はい。

再生回数440万超え、人気番組に育てるための工夫

 リスナー数とかってどのぐらいなんですか?

山本 現在はSpotifyだけで44万人。だからApple Podcastsとか、ほかのアプリを入れるともっといますよね。Spotifyでのダウンロード数は170万ストリーミング数は440万回にのぼるそうです。

 すごいなあ。ちなみに、番組が立ち上げられたのはいつですか?

山本 立ち上げは2018年9月ですね。だから2年ぐらいの間に急成長したんですよ。初回エピソードから数カ月以内にダウンロード数が10万回に達したそうです。

 え・・・!数カ月以内にダウンロード数が10万回!それって、個人のポッドキャスターが何年もかかるレベルですよ。

山本 ですよね!でもまあ、リスナー獲得のために工夫もしたそうです。

 どんな工夫をしたんでしょう?

山本 ホストの1人で、この番組を立ち上げたゲイルくんが『ニューヨークタイムズ』に言っていたんですが、彼は以前にミュージックバンドのファンページとして使っていた「インスタグラム」のアカウントを再利用して、そのアカウントにあった2万人のフォロワーを『ティーンエイジャー・セラピー』にそのままスライドさせたんだそうです。

 なるほど。

山本 それから、ティーンエイジャーに人気のインスタグラムページに、番組のことをポストしてもらうよう頼んだりもしたんだそうです。

 頭いいですね〜。高校生はお金がないから、そういうふうにプロモーションしていくんだ。

山本 そうなんですよ。

 まあ、2018年ぐらいからすごくポッドキャスト市場が盛り上がってきていて、特に12〜24歳の若者層でリスナー数が伸びているって聞いているので、そういう市場全体の成長期とも重なったというのがあるかもしれませんね。

山本 それもあると思いますね。

番組ホストに直接、人気の秘密を聞いてみた

山本 でも中でもこの番組がティーンエイジャーたちの心をグッとつかむのはなぜだろう・・・と思って、私はこの番組のホストに直接メールで質問してみました

 おお!返事は来ましたか・・・?

山本 はい。ホストの一人のアイザック君、17歳。すごくお返事も速いし、私の質問に対する答えもすごく的を得ていて、結構感動しちゃいました。

 で、番組の人気の秘密っていうのはどこにあるんでしょうか?

山本 アイザック君は「本物感」って言ってました。ほかのポッドキャスターやインフルエンサーは自分たちのグループがパーフェクトで、互いに悩みを抱えていないように見せているけれど、ティーンエイジャーたちはもっと「本物(authenticity)」を求めていて、アイザック君たちが仲間の欠点を指摘したり、悩みを話し合ったり、生の自然体であったりすることを気に入っているんじゃないかな、と言っていました。

 なるほど、「本物感」ね。飾らない、等身大の姿がいいっていうことですね。

山本 はい。ロックダウン中も、結構ティーンエイジャーからの切実な悩みが寄せられたりしたそうです。

 ああ、ロックダウン中は学校も休校になっちゃったし、若者は特に閉塞感高まったでしょうねえ。

山本 そうですねえ。

 ロックダウン中はどんな悩みが寄せられたんでしょう・・・?

山本 いちばん多かったのは、「ロックダウン中もどうやって日々のルーティンを維持して、モチベーションを失わないようにするか」という悩みだったそうです。

 ああ、それは大人でも大変だけど、活動的な高校生にはもっと切実な問題ですよね。

山本 はい。それで、彼らはリスナーに対して、早起きして運動をしたり、大好きな趣味に没頭したりして、ルーティーンを確立するように勧めたんだそうです。

 うんうん。

山本 それから、必要ならばリラックスすること。常になにか生産的なことをしなくちゃ、という差し迫ったプレッシャーを感じる必要はないんだよ、というアドバイスもしたそうです。

 ほお。こういうふうに同じ年代の人から等身大のアドバイスをもらうと、心にグッと刺さるんでしょうね。

山本 そうですね。

番組ホストから日本のティーンエイジャーへメッセージ

山本 ところで、面白いのが、このメンバーのうち3人ぐらい日本語を勉強しているそうなんですよ。

 へえ!それはなんか嬉しいですね。

山本 はい。アイザック君も高校の交換プログラムで、昨年は日本に10日間滞在したということで、その時の体験もエピソードで紹介されています。

 なんか急に親近感湧いてきたなあ。

山本 ですよね。彼は、日本の男子高校生と友達になって、あるとき学校生活について語り合ったんだそうです。それで、はじめのうち、その友達は学校が好きだと言っていたのに、もっとつっこんで話してみたら、実は勉強が嫌いで、早く高校を卒業してキャリアに集中したいと言っていたんだそうです。この体験から、アイザック君は自分を表現するということについて、日米間で文化が違うなあ、と実感したんだそうです。

 なるほど。日本の学校ではある種の「型」にはまらなくちゃならなくて、ありのままの自分を表現できていない子も多いですよね。

山本 はい。それで「日本のティーンエイジャーへのメッセージ」をお願いしたところ、「目立ったり、人と違ったりすることを怖れないで、自分自身でいることが大切。ほかの誰かのフリをすることは、メンタルヘルスに大きな負担になるよ」というコメントをくれました。

 ああ、僕ティーンエイジャーじゃないけど、グッときました。人と違うことを怖れないで、自分自身でいること。大事ですね。

山本 はい。

 ちなみに、アイザック君は17歳ってことは高校3年生ぐらいですか?

山本 アメリカ式の数え方では、高校4年生で、最終学年です。5人のメンバーは全員同じ学年だそうです。

 じゃあ、来年は大学進学ですか。

山本 そうですね。

 まだ数年はティーンエイジャーだから、番組は続けるんですかね?

山本 そうみたいです。でも、永遠にティーンエイジャーのわけではないので、将来的には後輩にバトンタッチすることも考えているみたいですよ。

 ほお。僕もティーンエイジャーの時期をとっくに超えてしまいましたが、ティーンエイジャー・セラピー今度ぜひ聴いてみます。

山本 ぜひ!気持ちは永遠の若者ってことで(笑)。

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。


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