コラム:周年記念とメディア史(ニューズ・レターNo.45、2017年4月号)

 来年2018年(平成30年)は、明治維新から150年ということで一つの画期であることはまちがいない。もちろん、こうした区分自体には意味はないのだが、今年はロシア革命から百年目であるし、最近数年間は出版社の創業百周年記念のオンパレードでもあったように、このほかにも周年記念を探せば沢山あるはずである。
 作家・堺屋太一が、『朝日新聞』に連載小説「平成三十年」を執筆したのが1997年(平成9年)のこと。平成30年は、一つには明治維新から150年であり、この年は太平洋戦争の敗戦から74年目にもあたり、また明治維新から数えて太平洋戦争開戦の年がちょうど74年目ということでもある。もう一つは、団塊の世代が70代を迎えるという、人口動態上の節目を迎える時期でもある、とこの作家は語っている。
 メディア史の観点から、筆者は1月の研究会で、新聞販売史再考に関する報告を行った。新聞や出版の「百年史」は、1968年頃にこぞって刊行されているが、その後の50年間を、どのように記述し評価するかは、歴史研究に携わる者にとっても重要な課題でもあろう。テレビ、ラジオは20世紀前半から中葉に誕生したので、まだ100年にも及ばないのだが、新聞や出版は2000年より少し前の時点に、部数・売上金額ともピークを迎え、その後21世紀には減少カーブを描き続けている。しかし、2000年までの間、新聞界も出版界も他の産業と同様に、バブル景気に沸き、その後遅れてバブル崩壊を経験した。そうだとすれば、どのような要因で、この半世紀間、これら活字メディア界の高度成長は維持され、あるいは衰退したのかは歴史研究の課題でもあるし、ぜひとも新聞・出版の「百年史」を刊行してきた機関も、次の「百五十年史」を期待したいところである。20年前、近未来小説で描かれた世界からは、2017年の日本はどんな社会に映っていたのだろうか。また、これからの20年はどのようなものになるのか、興味は尽きない。

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