CALLING... ~NORIの北海道旅行記#12~


第12章 Home Sweet Home 〜On My Way〜 11月 6日 (土)


東京へ向け出発する日の朝、今日も早く目が覚める。
昨日よりも早いので、コーヒーとゆで卵はまだ出ていない。
茶をすすりながらマルボロに火を付けるが、一晩中かけっぱなしのヒーターのせいでノドをやられておりゲッホゲッホと咳き込んでしまった。
荷物の準備も終わり、人知れぬ内に宿を出ようとすると、宿のおばさんが『もう行くのかい?』と、下着姿で出てきた。
朝からハードなものを見たなと思いつつも、別れを告げようとするとおばさんが遮って『私ね、さようならは言わないの、いてらっしゃいって言うの』と教えてくれた。
それがおばさんの美学と受け止め、オレは『いってきます』と一言言い残し、決して後ろを振り向かないオレ流の美学で返した。
さらばだ小樽。 そしておばさん。 せんべいとチューインガムをありがとう。 でも最後のランジェリー姿は、さすがのオレもヘナヘナと縮んでしまいました。
列車で札幌に向かった。 東京へ帰る電車は札幌から出ているのかと思ってたら、実はまず函館へ出て、そこから青森を目指さなくてはならないんだね。
札幌に着いてすぐ、駅員さんに『東京に行く列車は何時ですか?』と聞くとボーッとして何も答えないので、変な駅員だなと思ったけど、実際はオレのあまりに無知な質問にア然としていただけなんだね、君はだらしなく口を開けて・・・・・
札幌から4時間かかって函館に到着した。 そこから青函トンネルを抜け、青森に出るんだ。

☆Remember

いつものバラードが流れ あの海を越えた時
オレの旅が終わり始める この土地の空気が好きだった
この土地の人を愛した 南に向かうこの列車が
再会の可能性を ただの思い出に変えてしまう
名も聞かず散らばった男たち 身体を温めあった女たち
放浪の掟は無情で 思い出を持ち出すことさへ許さない
忘れない 飲んだくれたあの夜を
忘れるもんか あの白く柔らかい手を
雲のように気ままに流れた なのに人々は待ち焦がれてた
そこには駆け引きなんて存在しない 心を触れ合わせ
つまらないことで涙を流した ともに前世はあるものと信じ
血の繋がりを疑わなかった 周りを気にせず
年の差も無視して 肩を組んで町を歩いた
誰一人 気を遣わなくても 誰一人 意見を合わせなくても
オレ達は 心から笑ってた 短い言葉を交わしながら
永遠の重みを感じてた あの世で会う前に
あと2、3回 この世で会おうぜ そう誓って オレ達は別れた
PM2:30、青森で駅員さんと話して今日中に東京に着くのは無理だと言われた。
今では数少ない夜行列車『津軽』でPM4:49に青森を出発。そしてAM5:54に上野に着く。寒いホームで列車が来るのを待った。
腹が減った、せんべいでも食うか。 18枚のせんべいを3時間おきに6枚ずつ食べる。せんべいを食い終わる頃には、もう眠たくなっているはず。 そして、目が覚めたら上野に着くという、簡単だがパーフェクトな予定を立てた。
そうすりゃあとは弟に上野まで迎えにきてもらって我が家へ帰るだけさ。 バッチリだぜ!
ポリポリポリポリ、ん?うまい。 このゴマがなんとも言えん。 あと一枚、あと一枚だけだ! 完食。 くそっなんてこった!
もうこの頃になると頭の中は食い物がクルクル回っているだけだった。
あぁ最北ラーメン、ジンギスカン、ヒコバンバン、オレの地元の中華料理屋『煌栄』の五目そば、横田の天ざるうどん、いくどんの炭火焼肉、あ〜腹減ったよ〜。
あっ、キレイなオネー様だ。 束の間空腹を忘れる。 オレってどうしようもねえ。
列車が来た。 すかさず乗り込んだオレはパーカーのフードで目を覆い、強引に寝た。
数時間経ったのだろうか、オレの前の席におじいさんがデッカい風呂敷包みを背負って乗ってきた。 彼は背が低いので、その荷物を荷台に乗せてあげると、それをキッカケに話しが始まった。
『津軽』夜行列車は今月いっぱいで廃止になってしまうそうだ。
2人で全てがスピードアップされていく時代を嘆いた。
おじいさんはおもむろにカップ酒を取り出し飲み始めた、つまみはあんこ入りのよもぎ餅だった。 スゴい組み合わせですねというと、おじいさんは笑いながら『うちの母ちゃんはしょうがねえなあ』だって。
よかったら食えと言ってくれたので、ありがたくいただいた。
いやあうまかった。 話好きなおじいさんの話を聞いて眠ることにした。
おやすみ、おじいさん。
よく眠った。 辺りを見たけど話好きのおじいさんの姿は、もうどこにもなかった。
もうそこは上野だったのである。
鶴川まで帰る金がないオレを、弟が迎えにきてくれていた。
AM6:30だぜ。
低血圧のお前に早起きさせて悪かったな。
出発の日と同じハンバーガー屋でバーガーを食いながら、少しだけ旅の話しをした。
いろんな出来事、世話になった人達のこと、ここで全部話すなんて無理だからな。
全てはもう思い出になってしまったんだ。
タカ、お前には話したいことがまだまだいっぱいあるんだ、さあ あの狭いアパートに帰ろうぜ。
今はただあのせんべい布団で眠りたい。
本当にオレの旅は終わっちまったんだな。

少しの勇気が与えてくれたものは、とてつもなく大きかったよ。
大好きな人達に、北海道でのことをたくさん教えてあげたい。
でもこれで終わりじゃない。

今度は世界がオレを呼んでいるような気がするんだ!!

The End

But To Be Continued・・・・・・・・
終わりに 〜大好きな人たちへ〜


この旅でオレは何をつかんだのか。

あんまり頭の中を整理していないんで言葉にするのは難しいんだけど、一つだけハッキリしたのは、次のゴールってももんが見えてきたってことだな。

あんまり遠くにあるんで、先にあるものはまだかすんでるけど、まだまだ立ち止まるわけにはいかねえってことさ。

クサイ言葉だから笑いたいやつは勝手に笑ってくれればいいんだけど、オレは夢に向かって死ぬまで走り続ける。

そして困ってる人は必ず助けてやりたい。

それくらいの時間、話を聞く時間くらいあるよ。

オレの言葉にはトゲがあるし、未完成な部分もたくさんある人間さ。

だからって離れていかないで、もうちょっと待っててくれよ。

きっと豊かな人間になってみせるから。

運命が引き合わせたオレ達じゃないか、もっとお互いを大切にしようぜ。
困っている時はいつでもオレを呼んでくれ、お前のためにオレはどこへでも飛んでいくから。

こんなできそこないのオレでよければだぜ・・・・・

Good Luck 1993!

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