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【鉄道編】通勤電車の凝った内装①

全国的に気候が不順で、寒暖差も激しく、体調を崩しやすい時期ですね。皆様もどうぞお身体にお気をつけください。雨の日は、家で部屋のインテリアを変えたり、DIYを楽しんだりする人も多いようです。

さて、今回のテーマは「通勤電車の内装(インテリア)」という、ある意味マニアックなテーマです。というのも、2010年代後半から、各鉄道会社はさまざまに工夫を凝らしたインテリアの通勤電車を導入しています。単に「綺麗」「新しい」というだけではなく、通勤・通学が楽しくなるような、ストーリー性ある内装の車両が増えてきています。

少し通勤電車の歴史を振り返ってみましょう。もう20年以上前になりますが、2000年代に入ると、バリアフリーの思想に基づく通勤電車が増えてきました。座席が一人一人わかりやすく凹凸で区分された「バケットシート」を備えた車両、優先席を色分けしたり、広い車椅子スペースを設置したりと、どのような乗客にも優しい車両、ドアの上に液晶ディスプレイを備え、案内がわかりやすい車両など、移動時間が誰にとっても快適なものになるよう、機能・サービス面ともに充実してきました。

このように内装の機能・サービス面が充実してくると、次に差別化がはかられる点は「デザイン性」なのです。いかに洗練されたデザイン、独自性ある内装の通勤電車を生み出せるかが、2010年代後半頃から、各社がサービスレベルを高めるポイントなりつつあります。

実際に、いくつか関東の鉄道会社の新しいエース車両の内装をみていきましょう。

JR東日本(E235系)

JR東日本では、山手線のE235系を取り上げてみます。この車両はなによりも、日本の電車で初めて大量のデジタルサイネージ(電子広告)を車内に設置した車両です。ドアの上だけではなく、荷棚の上まで、ズラーっと液晶ディスプレイの大画面が並んでいます。まさに情報社会の加速を表していますね。

さらにE235系の特徴は、グラデーションのような模様で、ドア中心の警戒線や床にあしらわれています。いわゆる「真面目で機能的」なJRの通勤電車が、遊び心ある模様を積極的に取り入れるのは、まさに通勤電車の独自性が叫ばれる時代が到来していることを表しています。

ちなみに、つり革やシートの背もたれには、山手線の路線カラーのきみどり色が採用され、鮮やかな印象になりました。このように内装にも積極的に路線カラーを取り入れたのが特徴的で、山手線の車両であることがよりわかりやすくなりました。また、シートの座面や床はグレーにするなど、鮮やかな色との無機質な色とが対比されており、オフィスのように都会的でクールな印象の車両になっています。

あと、座席端の仕切り板にも、透明に近いプラスチックが採用されました。他車でも採用例がありますが、光を通すので圧迫感が減り、開放的な感じがします。

東急電鉄(2020、3020、6020系)

東急では2020年の東京オリンピックに向けて、田園都市線に「2020系」を導入し、目黒線や大井町線には兄弟形式の「3020系、6020系」を導入しました。東急も山手線に準えて、電子広告を車内に設置しています。

内装は、ナチュラルな出来栄えで、温かい家庭をイメージするような造りになっています。まず、シートは背もたれが少し高い「ハイバック仕様」で、柄も草原のように爽やかな自然のきみどり色になっています。座席端の仕切りも丸みを帯びて大きく、優しげな形状のものになっています。

床は通勤電車としては珍しく、濃淡の木目調フローリングで「明るく自然」な印象の車両になっています。東急は早期から街づくりにも力を入れているので、どこか田園都市にある綺麗な家庭をイメージしたのかもしれません。

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東急電鉄の新車の内装。自然で明るいイメージに仕上がっている。

西武鉄道(40000系)

西武の新型は40000系。横向きのロングシートとしても、2人掛けのクロスシートとしても活用できる、転換座席「L/Cシート」を採用しました。(のちにロングシートだけの車両も登場しました。)L/Cシートは、通勤列車にも座席指定のライナーにも用いることができます。西武以外の鉄道会社でも流行しています。ちなみに、充電用のコンセントも付いており、スマホの充電などに便利ですね。

シートは清潔感のある鮮やかな「青色」で、吊り革も水色系の爽やかなデザインです。床などはベージュに近く、シックな印象に仕上がっています。ドア上以外の天井にも大きなディスプレイが設置されていて、どの向きからも案内が見やすくなっています。

西武40000系の独自性は、先頭車に設けられた「パートナーゾーン」です。座席がなく広々としていて、車椅子やベビーカーを安心して使うことができます。また、この部分は窓が大きくなっていて、子供の背丈でも景色を眺めることができます。立ちながら軽く寄りかかれる背丈の高い椅子もあります。まさに、「誰もが使いやすい」エリアを追求したのでしょう。

西武は1世代前の新車(30000系)を開発するときにも乗客や社員の声を広く反映するなど、色々な人にとって良い車両を特に追求しているように感じます。

東武鉄道(70000系)

東武鉄道は、スカイツリーライン(伊勢崎線)に70000系を導入しています。この車両、乗り入れ先の東京メトロ日比谷線と同じ時期に製造した関係で、珍しく、メトロと東武で共通設計になっています。

車内はシンプルなデザインになっています。シートは外観と同じで赤系のモケット、壁は白で、床はグレーです。赤系のモケットは多いですが、柄をよく見ると、四角い枠がたくさんある幾何学的で近未来な感じがします。

ドア上のディスプレイも東京メトロなどで見られる3画面の仕様になりました。多いのは2画面「案内+広告」ですが、表示できる内容を広げることができました。

座席端の仕切りや車両と車両の連結部分のドアはガラスで、採光に長けています。連結部分のドアのガラスには、さり気なくスカイツリー沿線のイラストが施されています。しかも号車によって模様が違うとか。シンプルな中にも東京が感じられる東武のあしらい、なかなか素敵ですね。

相模鉄道(12000、20000、21000系)

相鉄は最近JR線を介し、都心部まで乗り入れを果たしました。東急との直通線もまもなく開業予定。車両デザインも「横浜ネイビーブルー」に一新するなど、会社を挙げてのデザイン見直しがはかられています。

さて新しい車両は、12000系、20000系、21000系と派生形式を含め複数の形式があります。

いずれの車両も近未来の空間にいるように感じさせる内装の統一感が凄いです。まず感じるのは、座席や壁は白に近い色、床や吊り革、車端部はグレーといったように、内装が白、グレー、黒の色の濃淡で表現されています。また座席の端にある仕切りも、天井近くまで高さがあるガラスが使われています。

また、さりげない配慮として、20000系では車内に「鏡」が復活しています。この鏡は、横浜に向かう乗客が身嗜みを確認できるようにと、昔から相鉄の車両には設置されていましたが、近年では省略されていました。まさに、相鉄らしさを再現した粋なはからいですね。

相鉄の車両は、あえて無機質な色を意図的に組み合わせ、統一感ある、上質でクールな内装を生み出しています。

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相鉄の新車の内装。クールで上質な雰囲気にまとめられている。

いかがでしたでしょうか。どの車両も独自性ある内装デザインで、乗るのが楽しくなりそうですね。第二弾では、他の会社の車両も紹介したいと思います。お楽しみに!

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