主人倒れる


ガン告知を聞く前の段階で、
ガンの可能性が大いにあることをCT検査で知らされ、
さらに詳しく診るためのペット検査の予約をとっての
病院の帰り道でのこと。

買い物をしたいので、スーパーに寄ってもらった。
私の体調もその時は夏バテのような状態で
よくなかったので、サッと作れる
すき焼きの材料を買うことに。

「お父さん、今夜はすき焼きにすることにしたよ」

「お前食べたいのか?」

「ううん、わたしが食べたいのじゃなくて、お父さんに元気ないから、元気出してもらおうかなと思って。」

「そか…」

家に着いて暫く休んだ。

「お前…今晩どうしても、すき焼きが食べたいのか?」とくぐもった声。

「ううん、私はお腹も空きそうにないから、今晩どうしても食べたいとかではないよ。」

暫くの沈黙。

「俺、出掛けてきていいかな?」

いつもは、私にそんなことを聞かないで
出掛けていくのが常の夫。

「うんうん、いいよ行ってきて!」

私は体調が悪くても、いつも声は明るいので
元気に送りだした。

自転車に乗って馴染みのお店へと行った様子。

出掛けてから、どのくらい時間が立っただろうか。
ピンポーン!

夫ならインターホンは鳴らさない…
こんな時間にだれかな?

玄関を開けたら、ヨレヨレになり、立ってられなくて
知らない人にもたれている夫がそこにいた。

話を聞くと、
夫が道にしゃがみこんで、辛そうな様子だったので、
見かねて通りすがりに声をかけて
車で送ってきて下さったとのこと。
親切な人のお陰で
無事に我が家に着いたのです。

それからが、大変で。
吐いたようなので、玄関で服を脱がせて、下着を替えて、そのまま玄関の上がったところで、動けない様子。
仕方ないので、高身長の夫を
そこで寝かせることにしたのです。
重たいこと、重たいこと。
何をするのにも、とにかく重たい。

おい!
しっかりしてよ!
こんな時に、私に世話をやかせるなんて!
どういうこったー!

丁度二人の娘と私のグループラインをしていたので
この様子を写メして送ったら
大丈夫?と心配してくれた。

うんうん、大丈夫よ
明日の朝までここで
寝てもらうことにしたから、
何もすることないし、寝るだけだから、心配無用よ。
そんなやりとりをしておやすみの挨拶。

夜9時頃、ピンポーン

今頃、だれ???
えっ!?
そこには娘が立っていた。

様子を見にきたよと、
一杯にした買い物袋を下げて。

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