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《ヴィーガン子育て》という名のパラダイムシフト

ベーコンエッグの良い匂い

朝起きたら、焼き立てトーストとベーコンエッグの良い匂いが漂い、目を擦りながらキッチンへ行くと母が朝食の準備をしていた。

家族が食卓につき、すぐさま口から溢れる「いただきます」。
熱々のパンにすぐさまバターを薄く、丁寧に、隅から隅まで塗るのが大好きだった。

社会人になれば、先輩のおごりで「いきなりステーキ」で牛ヒレ肉を547グラム1人で平らげた。お寿司も大好き。焼き肉はまぁまぁ。私の食生活はそんな風でした。

ヴィーガン男子との出会い

ヴィーガン子育てとなんの関係があるのか?ここから本題に入る。私は2016年8月、留学先のフランスである男性に会った。彼はいつ見ても、お昼はサラダを山盛り食べていた。「男子の草食化は日本だけの現象ではないのか」と驚いた私は、彼のお昼ご飯のチョイスがとんでもなく気になった。なので聞いてみた。ダイエットでもしているのか、と。

I am a vegan(私はヴィーガン)

と教えてくれた。なんじゃそれ。

肉・魚・卵・乳製品・蜂蜜・ゼラチンなど、一切の動物由来のものを口にしないのだ、とご丁寧に教えてくれた。草食男子をすっ飛ばして関わりたく無い人のように思えた。

彼は今、私の夫だ。

私たちが生きる世界のパラダイム

ここで少し思考的な実験をしてみよう。
デパ地下やスーパーでの新商品の試飲を想像して欲しい。「新感覚!乳製品」とだけ書いてある。
試飲用の入れ物の中を覗くと牛乳のような液体が入っている。飲んだらたしかにクセの少ない、濃厚な牛乳だ。一言「美味しい」と言うかもしれない。
さあ、ここで液体の正体が犬の母乳だと言ったら?

おそらくほとんどの人は「気持ち悪い!」と思ったり言ったりするだろう。実際そんな筋書きのビデオをアニマルウェルフェアの団体PETAが作ったことがあり、英語だが、興味ある方はぜひご覧いただきたい。

「犬の母乳なんて可哀想!」
「子犬用のミルクって飲めるものなの?」

などのリアクションがあったようだ。

さて、ここで、上の二つの文章の「犬」を「牛」に置き換えて見てほしい。

「牛の母乳なんて可哀想!」
「仔牛用のミルクって飲めるものなの?」

あなたがすでにヴィーガンではない限り、犬を牛に置き換えるとむしろ不思議な文章に見えてこないか。誰もが飲む牛乳に関して「牛が可哀想」とか「飲めるのか」などというコメントは少し歪だろう。そう、私たちはいつのまにか犬や他の動物の母乳は飲まないが、牛の母乳を日常的に飲む社会の中で生きている。これが私たちの生きるパラダイムだ。

家庭環境というパラダイム

やっぱり本題から大幅に逸れた。
なぜこの話をしたかと言うと、私が育った家庭ではお肉や卵、乳製品、魚を食べるのが当たり前だった。それが私の家庭のパラダイムだ。そして当時の私は、牛乳は良くても、天地がひっくり返えらない限り犬の乳にはあやかりたくなかったと思う。

そしてフランスで、私にとっての食の当たり前が、サラダしか食べない男性に会うことによってボロボロと音を立てて崩れ落ちた。
まさにパラダイムシフトだ。

彼は私に様々な質問を投げかけた:

「なぜ牛を食べるけど馬は食べない?」「豚は食べるけど犬は嫌なの?」「鶏肉は美味しいけどネズミは気持ち悪い?」

どれに対しても私が出せた精一杯の答えは「私たち人間は、他の動物を食べることができないので、牛や、豚や、鶏を食べ物として育ている」

はて、馬は本当に食べられないのか?いや、馬刺しがある。
犬は?一部、中国や韓国の食文化では食べていた、と聞いたこともある。
ネズミは流石にナイ?ペルーでは丸焼きにして食べるのが当たり前だとペルーに旅行した友人から聞いた。

とは言っても馬や犬を食べるのは人類のほんの一部であるし、犬の母乳と同じように少し「気味が悪い」と思う方が多いのではないか。どこの国に行っても、食べるなら牛か豚か鶏肉が主流であろう。世界はほぼ同じパラダイムの中で生きている。なので、家庭環境もこの点においては世界に準ずるのが当たり前。

これに関しては『銃 病原菌 鉄』でジャレッド・ダイアモンドがうまく説明してくれている。私たちが馬を食べずに牛を食べるのは、単に牛が「飼いやすかった」それだけだ。馬からしたら美味しい話で、牛からしたらとんだ迷惑、という具合だろうか。

ヴィーガン子育てというパラダイムシフト

前述の通り、私はサラダしか食べない男性と結婚をした。2020年に第一子となる娘が生まれた。その時私に迷いはなかった:

ヴィーガン家庭というパラダイムの中で人生をスタートしてもらおう

後になって、世界を知り、パラダイムシフトをしてお肉やお寿司を食べてもらって結構。ベーコンエッグとバターたっぷりのトーストを頬張ってもらって結構。

別に否定はしない。ヴィーガンだろうがそうでなかろうが。
要はそんな世界観もある、と知って欲しいだけ。

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