参議院議員石垣のりこ 新型インフルエンザ等特別措置法改正案の採決に関する表明

結論から申し上げますと、本日、参議院本会議で行われる新型インフルエンザ等特別措置法改正案の採決に関しましては、「採決そのもの」に抗議する意味で、採決に参加しないことを表明します。

理由の説明に入る前に、まず真っ先に、今回の改正案審議に関して、与党との難しい交渉をまとめあげられた我が会派幹部、とりわけ各党の国対関係者各位に最大限の敬意を示します。

残念ながらいまは、与党が絶対安定多数以上の議席を有しています。その中での国対折衝は、どの議案であれ難しいものだと思います。何せ議席配分としては、与党は日程調整でさえ野党に諮る必要がありません。その中で「ひとまず協議」に漕ぎつけただけでも至難の技かと思います。

さらには、新型インフル特措法を作った民主党の後継政党である国民民主党さんが我が会派であることや、この一月以来、会派の一部から、政府に対して特措法の早期適用を強く求めていた経緯がある以上、同法改正の国対折衝は、難渋を極めたことでしょう。

議席配分からも、これまでの経緯からも、同法の欠陥を強く指摘することができない中、折衝にあたった会派幹部・各党執行部の苦悩はいかばかりかと思います。また、情勢下ゆえこの判断もやむなしとの意見も理解できます。

しかしそれでもなお、原理原則論の部分で、許容できない部分が残るのです。

まずそもそも、今回の新型コロナウイルスへの対応については、今年1月から、野党として政権に新型インフルエンザ等特措法を適用し対応すべきだと要求していた事実があります。既存の特措法を適用すれば対応できるはずだと主張していた立場から、改正案に賛成するという態度はとれません。あまりにも無責任です。

今回、政府・与党が提案する特措法改正案は、こうした野党からの真摯な要求をなかったことにし、「何かやってる感」を演出するための政権側の茶番でしかありません。政権よりもはやくコロナウイルス対策を要求していた立場であれば、この茶番に付き合う義理は一切ないはずです。

さらに根源的な点として、特措法が8年前から規定していた、私権制限そのものの種類や範囲ではなく、今回の法改正で露見した「私権制限のある法律を、緊急時に急いで整備すること」という態度そのものが、危険であり、立憲主義的でないと、私は考えます。
緊急時だから必要な説明手順を省いていい。目的が正当であれば手続論などどうでもいい。目標達成のためなら手段は選ばない というのであれば、近代的議会制民主主義など、崩壊してしまうでしょう。

我が国は、議会制民主主義国家であり法治国家です。そうである以上、いやしくも行政権の発動は、議会で議論され採択された 既 存 の 法 律
に則って行われるべきものです。「緊急時だから」という理由で、既存法を蔑ろにする態度には一切、組みできません。

危機が起こり、その危機勃発前までに整備されていた法体制ではその危機に対応できないという場合は、危機の対応後に、対応内容の批判的検証を加えた上で、新たな立法を行うことこそが、本来のあるべき姿のはずです。

各種交通手段の発達や国際交流の発展にともない、人の移動が増えるなか、今後も、未知の感染症に我が国が襲われる可能性はあるわけです。であれば、その度に特措法で対応ではなく、感染症法を拡充するなど、地に足のついた議論をすべきです。

そうした根源的な議論を「緊急時だから」という大義名分で押し流すことは、「選挙でお世話になった人だから」という大義名分で、桜を見る会に後援会メンバーを招待し公職選挙法違反を犯してしまう安倍晋三氏と同じ、幼稚な発想です。

この1月からの経緯、そして立憲主義、議会制民主主義、法治主義の原理原則から、私は、今回の新型インフルエンザ等特措法の改正案議論そのものが、不必要なものであり、審議そのものが意味のないものだと考えます。

我が党は、立憲民主党です。立憲主義こそが我が党の立脚点であるはず。統一会派での調整の苦渋に関しては、先述のとおり最大限の敬意を表するものですが、やはり立憲民主党に所属する以上、立憲主義に根ざして全ての行動を律せねばなりません。

こうした見地から、今日の参院本会議での特措法改正採決では、会派決定に従わず、「審議・採決そのものがおかしい」という態度を表明するため、採決に参加しない意思表示をいたします。

令和2年3月13日
参議院議員 石垣のりこ

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