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ない記憶の話

唐突だが私は腐女子である。
そろそろ貴腐人と呼んで頂ける年齢であろうか。
14歳の頃に腐り始めたが故に、既に25年ものであるため自らがワインや梅酒でない事が悔やまれてならない。

まあ腐女子であることが今回の話のメイン軸ではないのだが、原因はおそらく腐女子であることが大きな割合を占めるのだと思うので恥を忍んで告白した次第である。
そう、今回のタイトルにした“ない記憶”が増えて困っているのだ。

私は腐女子の中でも主に二次創作を楽しむタイプで、既存のキャラクター同士を勝手にくっつけたり引き離したりさせてニチャニチャと笑い、勝手に喜んだり悲しんだりするのをライフワークとさせていただいている。

全ての作品を生み出してくださっている作家先生には勝手な改悪を頭の中でとはいえ繰り広げてしまって申し訳ないのだがやめられない止まらないままこんな年齢まできてしまった。

つい先日のことである。
「剣士が“俺の背中に今も傷がねえのはあの時お前がいたからだな”ってコックに言ったのは何巻だっけ?砂漠らへんの一コマなのは間違い無いんだけど……その後の喧嘩がめちゃくちゃ笑えるんよね。」
と、ふと考えて某海賊の漫画を1巻から読み出した。

随分と久しぶりに全巻通しで読んだが、時が経っても彼らの冒険は鮮やかでエネルギーに満ちていて最新巻まで一気に読んだ私は、やはり良い作品はいつ読んでも良い……!!!と感動に打ち震えた。
そして「あれも、ない記憶か……。」と己に失望した。めちゃくちゃ笑ったのもない記憶なの?怖い。

こんなことが最近頻繁に起こるので大変困っている。

基本的に腐女子であることは現実の世界では秘めることがマナーであると私は認識しているので、迂闊に好きな漫画の話が微妙な距離感の人間には出来なくなってしまった。
何しろ“ない話”をいつどこで口走ってしまうかわからない。私の中では鮮明にあるあの一コマやあのシーン。現実には全てないのだ。
……いや、いつかの私が読んだ薄い本にもしかしたらあったのかもしれないけれど。

魔法学校の薬学教授がローブの裾を湖で濡らして眉を顰める人間みを感じられるあのシーンも!!!!!少年探偵が眼鏡を海に投げ捨てる悲しいあのシーンも!!!!いつも泣いてる白い羊にいつもは攻撃的な黒い羊が好意を吐露する胸を掴まれるようなあのシーンも!!!地獄の鬼神様がきびだんごをお手玉しながら器用に食べるコミカルなあのシーンも!!!!全部ないの!!!!!!!公式にはない!!!

ちなみに、おそらく薄い本がないであろう作品ですらない記憶は存在するので(ないものが存在するって哲学的ですね……)わたしの脳が作り上げた捏造の記憶を私の脳は真実だと信じているのがたまらなく怖いと感じる今日この頃である。

昨日の事である。
仕事で疲れて帰ってきた夫と軽く口論になった。
買い置きしてある限定のシーフードヌードルはどちらのものであるかというくだらない内容だった。
私の言い分としては、
「インターネットでみんな美味しいって言っていたからめっちゃ食べてみたいと発言した私の意見を聞いた夫が私のために買ってきてくれた。」というものだったのだが、夫は違うという。
最終的に大きな声で恫喝をした私のものということで決着がついたのだが、もしかしてこれもない記憶だったのであろうか。
そうだったら夫には大変申し訳ないことをした。

でもあのシーフードヌードルは私にくれるよね?!
そうやんね、ね?!(大声)

end

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