仕事で100%出すために必要なこと。

漫画家のかっぴーです。「左ききのエレン」を描いてます。

「仕事の質は睡眠で決まる」という10万回言われている事を、わざわざ書こうと思うのですが、かなり実感がこもった内容なので読んでもらえると嬉しいです!

うちには2歳の娘ちゃんがいるのですが、私の数少ない担当に「夜泣きのミルク作り」がありました。元々、仕事柄夜型だったので、大して苦も無く毎晩続けました。

うちの子は9時か10時くらいに寝て、だいたい2時間置きにミルクで泣きます。2年続けたミルク作りは職人の域に達し、水とお湯の黄金比率はもちろんの事、ノールックで160mlをピタリと決める絶対乳感覚まで身につき、僅かな寝息から次のミルクチャンスを事前に察知する能力まで習得しました。そんな具合に楽しく夜泣き対応を続けていたのですが、最近になって卒乳してしまいました。

本筋と逸れますが、乳離れで泣いちゃうママさんの話に共感してしまうくらいには、自分も万感の想いがありました。我が子の出来る事が増える度に、親のしてあげられる事は減ってゆきます。この連続で大人になってしまうのかと思うと、卒乳の直前なんて、ミルクをあげながら涙が止まらないという事もありました。

睡眠の話に戻りますが、仕事をしながらミルク担当をしている全国の親御さんは本当に立派だと思います。数ある育児のひとつでしか無いため、ミルク担当が特別偉い訳では無いのだけれど、この「寝不足で働く」という日々は、経験しないと分からないハードさがあるのです。365日、夜に2時間以上連続で眠れないのです。

「夜に」と付け足しましたが、昼間に仮眠できる仕事はマシです。私は漫画家で出社も残業も無いため(自分で選べる)昼間に寝る事が多かったのですが、それが出来ない会社員の方なんて、スーパーハードモードだと思います。

繰り返しになりますが、私は元々夜型だったので、最近までツライとは思っていませんでした。が、いざ卒乳して、夜に熟睡できるようになると「あ、相当キテたんだな」と自覚するようになりました。

なぜなら、仕事の効率が圧倒的に良くなったのです。先週末、それを強く実感した出来事がありました。

「平日は好きなだけ働き、土日は家族のために48時間使う」という約束を奥さんとしていたのですが、トラブルがあって平日の1日が潰れてしまい「いつものペースだと締め切りに間に合わない、土日にさせて欲しい」となってから、もうどんちゃん騒ぎの大喧嘩に発展してしまいました(笑)

うちの家訓(私が勝手に言ってるヤツ)には「奥さんと喧嘩したら謝るしか無い」というものがありまして、結論を言うと土日は家族と過ごしたんですけど、内心は「あ…来週の仕事終わったわ…」と思っていました。

火曜日の正午までに、やらなくてはいけない仕事は…

・少年ジャンプ+のネーム(2〜3時間)

・原作版のネーム&作画(5〜9時間)

・新連載のネーム(5〜9時間)

・その他イレギュラーな案件(2,3時間)

軽く見積もって10時間、最悪20時間…。しかも複数の物語を描いてると頭の中がこんがらがるため、数時間は間を空ける必要があります。土日の段階でどれも未着手、月曜の朝から開始して火曜昼に終わらせるには、寝ないでぶっ通しでやってもギリギリになる可能性があります。

実際、奥さんの優しさで日曜の夜には「はい、OKでーす!働いていいよー!」とGOサインを貰えたんですけど、ふつうに眠かったので家族で寝てしまいました。

そして月曜の朝。10時頃には寝たので、しっかり7時間睡眠で朝5時に起床です。心を鬼にし、上記の仕事を一気に進めなくては、と思ったら…

なんと、月曜の午後には「新連載のネーム」以外が終わってしまいました。え?

昼休憩も入れて、10時間でほとんど片付いてしまった。最短予測と同じ程度だけれど、正直調子が良い時でも全てが最短で終わる事って滅多に無い。どうして、こんなに早く終わったんだろうと思ったんですが、どう考えても「寝たから」なんですよね。頭が、起きてる。いや2年間ボケてたんか言って思うんだけど、もしかしたら本当に2年間ボケてたのかも知れない。それくらい劇的にスムーズだった。

そして、夕方まで休憩し、銭湯でスッキリし、夜から残りの新連載のネームに着手したんですが、また10時には寝ました。眠かったからです。朝5時起きだったし。

そして、今日も6時くらいに起きて、散歩しながら構想してる間に、娘ちゃんが保育園に行くのを見届けて…今このブログを書いてる訳なんですけど。

そうなんです。終わったんです。9時には終わってました。すごい!

朝シャワーして、全裸でブログを書くくらいの余裕があります。新連載の打ち合せまで、まだ2時間以上ある。フィーバー状態です。

もちろん、急に漫画家としてレベルが上がった訳では無いので、あくまで「調子が良い時の最短タイムで全て終わらせられた」って事なんですけど、途中のブレイクタイムも大して要らなかったし、スイッチの切り替えが妙にスムーズで。

睡眠不足の状態の弊害を言語化するならば「ギアのレバーが固い状態」って言うか、スタートする時も遅いし、違う仕事に切り替える時もダルいし、最高速度が出るまでが長い、そんな感じです。その辺が、サクっ、サクっと切り替えられるイメージ。

これまで、作家業なのを言い訳に「集中が途絶えるとダメ」とか「時間をかければかけるだけ良いモノがつくれる」って思ってたんですけど、やっぱり実力以上のものは出せない。しかし実力以下を平気で連発するのが日常なワケで、いかにそれを無くすかが大事なんだと思いました。

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自分の漫画「左ききのエレン」に、こんな台詞があるのですが、これは広告代理店という環境では真理だと思いつつ、出来る事なら「クソみたいな日をなるべく減らす」という事のために、ちゃんと寝ておくというのは大事かも知れません。


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