新連載のネームを描いてます

漫画家のかっぴーです。

商業誌の連載会議に出す新連載のネーム、第一話がほとんど完成しました。これから第二話を描きます。(ちなみに、決まったとしても取材に時間がかかる題材なので、始まるまでは年単位で時間がかかると思います)

過去最高にネームを描き直しました。60Pを10回以上やり直したので、600Pは描いた計算です。単行本で言うと3巻分くらい。そう言うと、あんまり多く感じないけど。

正直、一発目で編集さんにはほとんどOKは貰っていて「あとは微調整ですね」と言われてたんだけど、1ヶ月くらい手がつけられなくて。ずーっと頭の片隅にフワッとある声を無視し続け、やっと向き合えた時に「あんまり面白く無い」とハッキリ聞こえてしまった。難しいのが「まるでつまらない」なら、諦めがつくし編集も止めるんだけど「ダメじゃ無いんだけど」って微妙なラインで。

これまで、一度描いたネームを大幅に直す事をあまりしてこなくて、それで成功し続けられたのが誇り、みたいなのが若干あって。「ぼく、ネームで止まった事無いんですよ」って言い続けたいスケベ心があって。でも、今回は本当に苦戦した。泥の中を這いずり回って、どったんばったんやって描き上げました。

最終の一個前で、主人公キャラを変えました。ずっと引っかかってたのが「こいつ誰なの?」って、主人公への感情移入が上手く出来なくて。例えるなら、漫画作りのセオリー通り、物語の骨子を作って、そこに適したキャラクターを置いてって真っ直ぐやってたんだけど、考えてみたらセオリーなんて考えた事も無かった。

セオリーなんて考えた事無いし、キャラクター設定表とか描いた事無いのに作っちゃって「こいつの誕生日は、出身地は」とか無駄に考えちゃって。そういう「漫画家ならやるべき事」に囚われ過ぎて、心構えだけなら良いんだけど、戦い方まで新人漫画家じゃんって。

だから、10回描いたボツネームのうち、8回は漫画として成立してるんだけど「あんまり面白く無い」というもので、だけどセオリーだけはキッチリ踏まえてて。だから9回目でそれを全てぶっ壊して、ブチ切れて描いたんですよね。そしたら、これまで「かっぴーさんは天才です」「このネームを描けるのは日本で数人しかいませんよ」って褒め続けてくれた編集(メガヒット作を立ち上げた超敏腕)が、初めて言葉を慎重に選びながら「前の方が良かった」って言うんです。中目黒のカフェで。

「やった!」と思いました。

編集の想像を超えたと思いました。悪い方の意味だけど。「思ってたんと違う」となった。ここからだと思いました。一回暴れる事で、編集がこれまでどこを買ってくれてたのかとか、自分が何をつまらないと思ったのかとか、そういう要点が色々と見えて来たんです。そのネームは、ぼく自信読み直しても酷いんですよ。全然面白く無いし、最低のネームなんです。クソでした。でも、それを直した方が全然良いと思ったんです。優等生のネームをコツコツ微調整して75点を80点にする作業よりも、マイナス200点のネームを反転術式使って2億点にした方が楽しいと思いました。

そこから卍解して描き上げた最終ネームが、マジで面白い。完全に面白かった。こんなの読んだ事無い。自分が続きを読みたいから描く、という気持ちになれた。

編集からLINEが返ってきて「ついにやりましたね」と。そうです、やりましたよ。ついに私はやりました。優勝です。

乞うご期待!(数年後)

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有料部分では、漫画家志望しか役に立たないだろう「ガチ反省会」を軽く書きます。

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