「左ききのエレン」が好きな人へ。

漫画家のかっぴーです。ジャンプのクリエイター群像劇「左ききのエレン」のキャッチコピーを募集した所、なんと9300通を超えるツイートが集まりました。(インスタグラムでも募集をしましたがツイッターと重複する投稿が多かったので数には入れてません)ひとつのツイートに複数案の方も多く、100個まとめて画像で投稿してくださる猛者まで。それらを含めると、案数は1万を超えると思います。

これがどれくらいスゴい事か考えてみました。広告業界なら知らない人は居ないキャッチコピーの賞で「宣伝会議賞」というものがあります。ある種の登竜門的存在なので、ぼくも広告代理店時代は熱心に応募しました。こちらの応募総数が、およそ50万案です。ただし、これは例年36つ程ある全ての課題の応募作を足した数字なので、単純に割ると、ひとつの課題に対して1万4千案ほどという事になります。

日本最大のコピー賞で1万4千案なら、今回のおよそ1万案集まった事は、大分スゴい事なんじゃないかと思います。

このブログを読む層はビジネスマンの方が多いので、正直に打ち明けても幻滅されないかと思いますが、今回の試みは「左ききのエレン」を広めるための広告活動として企画しました。まぁ「それはどうでしょ」という感じだと思うけど。が、ぼくはツメが甘いので完全にミスっててツイッター上で「#左ききのエレンコピー」は「左ききのエレン」と別の単語として認識されるため、1万案集まろうが「左ききのエレン」がトレンドに上がる事も無ければ、多くの人の目に触れる事はありませんでした…。かなりの割合の応募者が捨てアカウント(普段使いじゃない応募用の)だったのも一因です。広告としては致命的にミスってました…笑

というか、広告代理店を舞台にした漫画にも関わらず「左ききのエレン」は、ことごとく広告活動が上手くいきません。あの手この手と考えはするものの、どれも既存ファンが喜んでくれる程度で、そこから広まる事はほとんどありません。

ぼくは作者なのでそう思うのは当然ですけど、内容は本当に超面白い自信あるんですけど、いつまで経っても「知る人ぞ知る」というか「通好み」というか、以前お世話になっている漫画家の大先輩に「エレンはミュージシャンズミュージック(プロのミュージシャンは推してるけど一般受けしない音楽のこと)だよね」と言われて、確かにと思いました…。はっきり言って漫画家の諸先輩方の評判も良いし、出版社の編集者からのウケも非常に良いので、そのお陰で相当助けられてきましたが、本当に一般に広まらない作品だなと。

ぼくが凹む時って、物事が上手くいってない時じゃないんです。最近自覚したんですけど。エレンを描き始めて最初の頃はマジで誰も読んでなくて、もう毎週ずっと発狂しそうになって怒ってましたが、その分描く事に集中できたしパワフルでした。でも、今みたいに「ちょっと良い調子だね」って時に限って、理想で思い描いてる状態と、現実の「ちょっと良い調子」のギャップに吐きそうになる。

少年ジャンプ+版のエレンは、ちょっと良い調子です。このまま行けば打ち切りの心配も無く、描きたい所まで描き切る事は出来ると思います。ただ、この程度の良い調子じゃないんですよね、思ってた理想は…。

ぼくは漫画家歴は浅いですけど、一応社会人経験あるので、夢みたいな大きな目標を掲げてる訳じゃない。エレンが鬼滅みたいな売れ方するなんて微塵も思ってません。ただ「これくらいは行くポテンシャルはある」と信じてる目標の、半分もいってないんです、今。

これ…どうしたら良いですか?笑

なんか、もう誰か教えて欲しい。結構色々とバカなりに考えて試してみたけど、なんか上手いこと広まらないんだよな。

あと、もちろん前提として「漫画が面白ければ売れる」という事実もわかってるつもりです。「左ききのエレン」の初代編集は、最近ブイブイ言わせまくってる林さんです。チェンソーマンとかスパイファミリーとか担当されてる名編集者です。その人にも「神回が一度じゃなく、何発も続けば売れます」と言われました。それは真理だと思います。なので、そのつもりで描いてる…。それは前提、漫画家の責務として神回は描き続ける所存です。ただ…それにしても…打てば響くって感覚には程遠い気がして…。

なんかね、自分を納得させる考え方なんていくらでもあるんですよ。別にぼくは「左ききのエレン」が何の成果も上げてないとは全然思ってません。同じ境遇で苦しんでいた人達の背中を少しは押せた実感もあるし、クラウドファンディングで日本一支援された漫画にもなったし、今回のキャッチコピーの反響とか、Adobeとかサントリーとのコラボレーションとか、色々「やったったぞ!」という自信はある…。あるには、ある。だけど、やっぱり発行部数から逃げたくないんですよね。

正直言って、アパレルやら何やら色々やってるので、お金だけ見れば売れっ子漫画家クラスには稼げていると思うんですが、それでも単行本が売りたいんです。原作者のぼくが上手いこと器用にやって儲けても、nifuniさんと作った単行本が売れないと全然ゴールじゃない。nifuniさんを大先生にして、エレンを完結させないといけないんです、ぼくは。

「単行本買って買って買って!」って言って買ってくれるなら苦労しないし、言われるの鬱陶しいってのも分かる。だからツイッターでは(あれでも)控えてる。でも、本当に単行本を買って欲しいんですよ。なんでかって、家に置いて欲しいんですよ。大事にして欲しいんです。

なかなか爆発的に売れない理由を自分なりに考えてみたんですけど、まぁ無料で全話読めるってのは仕方ないので除外しますが、発行部数がバカ売れ漫画ほど多くないから、シンプルに書店で見かけにくいってのはあると思います。「漫画は書店で買いたい」って気持ちは分かるけど、まず売れないと書店にも並ばない訳だから、ネットでも良いから手にとって欲しいです。

あーあ、また「買って買って」って書いちゃった…。これ書くたびに心が弱って元気が無くなっていくんですけど、ほんと、今ちょっと調子良いので、エレン。

少しでも調子良い時に推して欲しい。推すなら今よ。

リンクも貼っちゃったよ…。宣伝するたびに心が…。

よろしくお願いしますね。

いつも応援ありがとうございます。



サポートも嬉しいですが、よかったら単行本を買ってください!