第4期ひらめき☆マンガ教室 第1回課題感想

こんにちは。暮介(ぐれすけ)と申します。
ひらめき☆マンガ教室 第1回課題作品(ネーム)の感想を書かせていただきました。

作品一覧はこちら
https://school.genron.co.jp/works/manga/2020/subjects/1/

はじめに

・そもそもお前は誰なんだ

ひらめき漫画教室第3期の卒業生で、第4期の聴講生です。
なので、どちらかというと描き手目線の感想になっているかと思います。

ちなみに、感想にはかなり偉そうな指摘や改善提案などが入っています。じゃあそこまで言うお前は面白い漫画が描けるのかよ、という話ですが、残念ながら描けません。ごめんなさい。

3期生は特に商業での活躍や実績が多い集まりでしたが、私は新人賞受賞を目的としながら、特に体外的な成果を全く残せませんでしたし、今も残せておりません。つまり下手くそのド素人です。
指摘していることのほぼ全て、私が自分が描いている時にはできないことです。

要するに、特に何も描けないド素人でも、これくらいの偉そうなことは書けてしまうということだとご理解いただけたら幸いです。
対外的に作品を発表すると、色々な感想や反応が帰ってくると思いますが、たまーにネット掲示板などで、自分では何も描けないくせに、わかった風に偉そうなことを書く輩がいると思います。
私のことはそういう類型の人間だと思っていただくと、距離感として丁度いいのかなと思っています。
根拠のない評価や指摘に踊らされないようにしましょう!

・私の感想がないんだけど???

全員分を書くのは大変で、昨年度それで何度か挫折したので、「書けるものだけ書く」というスタンスでやりたいと思っています。
誰の感想を書くかというのはかなり気分次第です。
「知り合いだから」という理由も含まれます。ご容赦ください。

「お前の感想は不愉快だから自分のは書くんじゃねーよ!」と思われた方は何らかの方法でご連絡ください。やめます。ごめんなさい。

・その他

明らかに元々のレベルが高そうな人や、知り合いには、感想が思わず辛めになっている可能性があります。ご了承ください。
それにはたくさんの深くて重い高尚な理由があるのですが、主に嫉妬で顔を真っ赤にしながら書いているからです。
「こんなに上手いんだったら普段SNSとかで褒められまくってるんだろうなぁ! クソッ! 俺の感想でコイツの今日一日の気分を台無しにしてやる! キエーッ!」と思いながら書いてます。
「まあ、落ち着けよ」と思いながら読んでください。
よろしくお願いします。

前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に入ります。

感想

シバさん「木陰のヒツジ」

これは「多分」私が好きそうなものだと思いました。
何か空気感的なものが好きです。

「多分」というのは、この漫画のエピソードが抽象的過ぎて、
「何か自分の言ってほしいことを言ってくれそうな雰囲気はあるけど、
 最後までそれはそうと言ってくれない」みたいな、モヤモヤした思いで終わってしまっているからだと思いました。

ただひとつひとつのモチーフに世界観のようなものが見えて、
この人が次描く作品もまた読んでみたいなと思わせる作品だと思いました。


丫戊个堂さん「厄年」

まず、自分は作者の方とすでに知り合いで、もやもや病のことも知っています。
そのことにより、若干感じ方が初見の人と違う可能性があります。

物語として言いたいテーマと、自己紹介的な部分が共存しているように見えました。
より具体的に言うなら、「物語のテーマとして言いたいことに対して、特に関連性の薄い自己紹介の要素が含まれてしまっているため、テーマが見えにくくなっている」
のかなと思いました。

この話の構成要素として、
・「人は利得よりも損失の方が過大に評価する」
・42才…N大歯学部…新芸術校で銀賞…武道は師範代(多才な40代男性です)
・もやもや病で倒れた(もやもや病って本当に怖い病気なんだ)
・人には言葉が出ないと本当に言いたいことが伝わらないんだぜ

という4つの要素を自分は見いだせたのですが、
恐らくここから、この4つのうち、何をテーマとして伝えるかの選択が必要なのではないかと思います。

作者ご本人の中では、恐らくこの4つの要素というのは緩やかにつながっているので、こういう描き方になるのかなと思うのですが、
(多分、「人は利得より…」の中に、他の3つの要素が包含されて理解されているのだと思いました)
読み手からするとそこは別個のものとして扱われるだろうと思うので、そのあたりを客観的に見つめ直す作業が必要なのかなと思いました。


あまこうさん「リアルとフィクションの狭間」

普通に共感してしまいました。うんうんと頷きながら読んでいました。。
いい年して漫画を描いている人間が持っている悩みがキレイに列挙されていて
かつコマ割りもこなれているので、「なんかいい感じ」の読後感があり、
かなり描き慣れている方だな、という印象を受けました。


俗人ちんさん「葛藤の修行生活」

面白かったです。
ひとつひとつのエピソードに、現実味のようなものを感じました。
(なぜ感じたかはよくわかりませんが…)
修行僧というのも、普通の人が体験していなさそうな話で、
強い武器をお持ちだなと思いました。

あと、9ページ下段の「本当の話かわからないけど、決断ができる人なんだなぁ」「うらやましい」という部分と、修行を全部終わらせてから、就活を決めるラストのシーンは、
思わず声が漏れました。表現できませんがとても良い部分だと思いました。

恐らくこういう読み切り「あるある」として、
何かしらのハプニングやらエピソードがあり、
それによって最初と最後で主人公の価値観や行動が変容する、という
ひとつの定形パターンみたいなものが存在していると思われますが、
この主人公は、きちんと最後まで務めた上で、
スッキリと就活について決意をしているので、そこに妙な生々しさを感じられて良かったと思いました。


ハミ山クリニカさん「先生は私を贔屓したのだけれども」

まず最初に… 「私」が「三木」だとわかるのが3ページ目なのでそこは直したほうがいいかなと思いました。
(ページ内の「先生」と「三木」が目を合わせていないので、「三木」が「私」なのか「いつもトップのあいつ」なのかがわからないので最初で「?」がついた)

全体的には、ひとつひとつのエピソードが「わかるようでなんかわからない」というのが最初の感想でした。
総括した「解決すべき問題点」としては、主人公がつかず離れずでうまくやれている(と自分で言っている)にも関わらず、一人を強調されると何故か過剰に反応してしまうという認知の歪み?なのかなと思いましたが、
「松沢がウザい」とか、「ワンさんの関係」とかのいろいろなラインが平行して走っているように見えて、自分としては最後のページに数個の「?」を抱えたまま到達することになりました。

もう少し、三木が抱えていた(抱えていると自分で思っている)問題を細かく整理していく作業が必要なのではないかと思いました。


kubotaさん「不思議としか言いようのない気分だった」

実在の人物を出す、という試みが新鮮で思わず唸りました。
kubotaさんは、実力もさることながら、常に新しい何かに挑戦しようとされているのがすごいですね。

読んで最初に思ったのは、「この話主人公とウッディ、どっちが主人公でどっちがウッディでも同じように読めるな」でした。
アピール文で、「主人公の試合に対する興味のなさを念入りに描きました。」とありましたが、主人公もウッディもそこまで試合に興味があるように見えず、かつ、おじさんが熱狂的になっているのを見て、「ああ、そういうおっちゃんか」みたいな反応だったので、「普通はそこまでサッカーに熱狂的にならないよね」があたかも共通事項のように見えてしまい、主人公のキャラが薄くなっているという問題があると思いました。

例えば熱狂的なグランパスファンの友人に無理やり連れて行かれるとかして、おじさんも含めて「盛り上がらない奴/盛り上がる奴」で1対2の構図を作っておけば、「サッカー観戦とは本来、熱狂的に盛り上がるもの」という常識の中で、全くサッカーに興味がない主人公、ということでキャラが立つのかなと思いました。

あと、もう一つ言ってしまうなら、「不思議な感じ」は、どちらかというと興味のない人間よりも、より積極的にその人を意識している人間のほうが感じるものなのでは?とも思いました。
このあたりは私固有の感性かもしれませんが。


シギハラさん「ウッカリさん」

普通にめっちゃいい漫画やん、と思いました。
シギハラさんはすでに面識があり、持ってる空気感も近しいものがあるので、
若干その部分がプラス評価を与えている可能性があります。

まず、「万引きする主人公」の時点でかなり面白いし、
その後、タッグを2人で組みそうになるところにも面白さを感じました。
そして、最後に相手役の子が純真で、主人公の悪事が断裁されるところは
かなり爽快感がありました。
あとシギハラさんの可愛い絵柄で、主人公と相手の女の子2人とも
少し狂っているところもいいなと思いました。

改善点として、技術的な部分を向上させたらもっと良くなるなと思いました。
例えば、3ページ目の相手役が出てくるところは、もう少し大きくコマをとって、
主人公にとって印象的なシーンとして演出した方が良いし、
6ページ目の、腰を折られるシーンが分かりづらかったので、コマ割りを工夫するなどして、この部分をもっとわかりやすく、インパクトが大きくなるように演出したら、
めちゃくちゃいい作品になると思いました。


motokoさん「祖母の素顔」

「祖母の葬式にいながら祖母のことを忘れてしまう」というシチュエーションがサイコパスチックでかなり自分の好みだったので印象に残りました。
ただ、同時に「結構無難な終わり方をしたな」という印象を受けて、後半で盛り下がった印象を受けました。
最初で期待させられた分、「ああ…なんか普通のお話だったな」みたいな感じです。

人の多い場所でたくさんの人がわちゃわちゃと出てきている状況であるにも関わらず、淀むことなく読めたので、実力がある方だなと思いました。
多分自分は同じことをしようとしたらかなり苦労するだろうなと思い、そういう部分については、唸りながら読ませていただきました。


poteさん「ゆいのランドセル」

コマ割りがめちゃめちゃ上手い、ということと、中身のツッコミたくなる度合いのギャップが印象深かったので感想を書かせていただきました。

これは自分が身につまされたあるあるとして、「自分がコンプレックスに思っていることが、意外と傍から見るとそうでもなくて、そのままマンガのネタとして使うと空振りしてしまう」というのがあると思います。

自分はもういい大人なので、その立場からすると、「小学4年だったらまあランドセルそのまま忘れるくらいのチョンボはあるんじゃない」という印象を受けます。

ただ一方で、「ランドセルを忘れてめちゃくちゃ焦っているさま」は傍から見ていて面白いと思うし、「めちゃくちゃ恥ずかしいという感情」は共感できます。
(私は中学生に上がったばかりのとき、小学生では登校中にしていたヘルメットをうっかりかぶって登校してしまって、校門付近で気づいてめちゃくちゃ恥ずかしかった思い出があります。)

「ランドセルを忘れてめちゃくちゃ焦っているさま」をメインとして描くなら、例えば主人公がそもそも忘れ物をしている人間はバカだ、という思想を元々持っているとかだったら面白いと思います。

「めちゃくちゃ恥ずかしいという感情の共有」をさせたいのであれば、まずはいきなり大学生に時間が飛ぶということをやめ、最後まで小学生の時代のままで描ききることが必要なのかなと思いました。

そのあたりの方向性がもっとソリッドになると、よりこのネタを面白く活かすことができるのではないかと感じました。


片橋真名さん「母は迷探偵」

ストーリーラインが面白いなと思いました。
読者に対して先を読ませないようにして、驚きを提供して楽しませようという姿勢が見えているのが素晴らしいと思いました。
自分も意識したい…。

ただ、小学生が恋人というのは、モラルの観点からトランスジェンダーの域を超えているのでは?という心のツッコミが入りました。
また、結論として母の推理は外れているわけで、そうなると「母は名探偵」というタイトルも正しいタイトルなのかちょっと疑問に感じられました。
【※訂正→「母は迷探偵」でした。この部分の指摘は私の誤読によるものです。大変失礼いたしました。】

あと、なんとなくですが、この話はお母さんがむしろ主人公の方が自分としては好みの話になるような気がしました。
多分ほとんどが主人公の手のひらの上で進行しているからじゃないかと思います。


くたくたさん「どうせゾンビ」

めちゃくちゃ好きな作品です。
あと、かなり練られているなとも感じました。

良かったなと感じたところは以下です。
・「涙も出ない」と主人公・ヒロインが言うところで画面の構図を同じにしてあり、共感を示唆しているところ
・第2の人生を「ゾンビ」に置き換えてゆるやかなポジティブさを示唆しているところ
・「ゾンビになる前だってどうせ人間でしたよ」「ゾンビになるとゾンビの生活があるだけなんですね」というセリフはかなりグッときて、最後のオチとして素晴らしかった

ネームとしてきれいに流れていかないところが数点ありましたが、そこさえ直してしまえば素晴らしい作品になるなと思いました。


清水しのさん「懺悔室の清水くん」

最初の印象として、いい意味でも悪い意味でも「なんかプロの人が描いてるっぽいな」と思いました。
多分薬師さんが語ったエピソードが略奪愛とかでなく、「フェラチオ」という具体的なものを持ってきたのは、最初の部分でインパクトを持たせたかったのかな、とか、「いやぜってーおもわねー」でフォントを大きくしていったのは、ここで逆転感を演出したかったのかな、とかいう、「読者をこう動かしたいんだろうな」という意図はすごく感じられました。

薬師さんのクズエピソードについて、ビジュアル的な訴求がもう少しあったほうが良いのではないかと思いました。会話での説明だけで進んでいるので、「いやぜってーおもわねー」に共感が乗りにくい構造な気がします。
例えばフェラチオを推していくのであれば、唇を舌でなめる癖があるとか、ペットボトルの水を飲んだ時の唇のアップがあるとか、とにかく何かしら、特に主人公が思わず薬師さんの口の動きに注目するシーンがあるといいなと思いました。

あと、自分がやるなら、主人公の清水くんは、最初薬師さんに対して全く興味がない、むしろ見下している、から始めるかなと思いました。
全く興味がない人→フェラチオをほのめかされてついつい、興味を引くようなことを言ってしまう→けんもほろろ
のほうが、より清水くんの浅はかさが出て良いのではないかと思いました。


田山さん「生きてるかもしれない」

率直な感想として、自分の理解の範疇を超えてる作品だな…と思いました。感想を書こうとしても書けなそうな作品、と思ったので、そのことを残しておこうと思います。

一見ハチャメチャそうに思えて、「修辞」の1ページとかが普通にめちゃくちゃ面白かったので、読んでいて余計に「???????」となりました。策士??? 何か明らかにヤバい奴なのに、どこか可愛くて興味を持ってしまう女の子みたいな作品だ…。

この作品に対してどういう指導が行われるのか、ということに興味が湧く作品だと思いました。


桃井桃子さん「ぬいぐるみの衣装製作が得意な先輩」

絵が可愛くてすごく好みです。線質もすごくいいなと思いました。自分はこういう線は引きたくても引けないので羨ましいです。
自分が百合漫画が好き、ということもあって、ドキドキしながら読みました。

あと、この作品を読んだ学びとして、百合漫画は普通に可愛い女の子と女の子がてぇてぇしてるだけで楽しめるものなんだなーという発見がありました。
(自分も百合漫画を描いていて、なにか特別なことをしなきゃいけない…という思いに駆られてなにか特別なことをしようとしていたので、肩の荷がすっと降りたような気分でした)

あともうひとつ、自分語りになってしまうのですが、好きなタイプの作品を読むときは、あまり分析脳みたいなものが働かないんだなということを知りました。


横たくみさん「I am a Snoozer」

今回の課題作で一番の推しは?と言われたら、何の迷いもなくこれ!と推せる作品です。
とにかく上手すぎる。新人賞の受賞作かと思いました。

この内容を16ページで、しかも詰め込みすぎる印象なくやっているところは本当にすごいと思いましたし、
画面の見やすさ、主人公のかつての夢であった絵を示すやり方もかなり自然・スムーズで、相当な「描き慣れ」を感じました。

後輩の影響で行動変化していることを示すために、最初の朝のシーンのスマホのアラームを、目覚ましに置き換えているところもすごい。

嫉妬心にかられて、思わずアラを見つけに行こうとする自分がいましたが、残念ながら自分には指摘できる欠点を見つけることができませんでした。
どういう手順でこの作品を作られたのか、是非ノウハウを伺いたいと思いました。


感想は以上です。


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