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北京入院物語(67)

 私も厚かましいときは厚かましいのですが、遠慮するときはまたよく遠慮します。
リハビリ科の主任に安くしておきますと言われましたが、いくらになるかとうとう聞けませんでした。
理由はそれだけではなくて、大きな病院(1300床)の科の女性主任ですから、猛烈な迫力で、威厳があります。
まるでメスライオンと向かい合っているような気がします。
そのオーラに押されたということもあります。

 結局退院時に渡される全治療明細書までいくらか分かりませんでしたが、恐る恐るリハビリ科の料金を日割り計算すると・・・なんと1回100円でした。
ただ激安は激安だけの理由もありました。

 包さんとリハビリ室に入り、機械の前にやってきたのですが、リハの先生は部屋の隅で数名かたまって談笑しています。
包さんは心得たもので、さっさと私を訓練台に乗せ、ベルトで縛り、スイッチを操作して垂直まで立てかけます。



 医師はまったく気にしていません。
20分ぐらいでひざが痛くなってくると、さっきの逆をして包さんが訓練台から降ろしてくれます。
医者は談笑しています。
車椅子に座りなおすと、入ってきた入り口から帰ります。
医者は相変わらず談笑しています。
・・・とまぁ、こんな感じでした。

 とにかくリハビリ室の医師は仕事らしい仕事をしません。
いや、そういうと彼らは怒るかもしれません。
数人で会議をするのが仕事なのだと。
リハビリ室には自転車式の訓練機やバーベルなど、一そろいの運動機器がおいてあり、病人はそれを使って「自主訓練」をしています。
今度は医師はパソコンでゲームをしています。

 屋内の端には鞭打ち等で使う牽引装置があり、医科大学の実習生が受付と操作をしています。
ヘッドギアのような装具の装着はその研修生がしますが、機械のスイッチを入れるともうすることがありません。
実習生はずーーと分厚い本を読んで時間をつぶしています。
毎日リハビリ室に通いましたが、医師がこの研修生に指導する場面は最後までありませんでした。
これでは実習生は図書館に通っているのと違いがありません。
ですからリハビリ室は、図書館みたいに静かな超のんびりした時間が流れるのでした。
北京入院物語(68)

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