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童貞の憧憬

僕の好きな人は、ムダ毛は生えない。

肌荒れはしないがたまにかわいらしいニキビはポツンとできる。もちろんウミなんかは溜まらない。

ムネは自己主張控えめだがそのスタイルからしたら完璧な黄金比に見えるほどだ。

世界の残酷な部分とは無縁の生活を送っているし、笑う時は見た目なんか気にしないでクシャっと笑う。生えそろった白くて綺麗な歯が見える。

名前を呼ぶとサラサラで水みたいな髪をなびかせて振り返って大きな瞳でこちらを覗き込んでくる。

いつも猫のような流動的な動きで僕を翻弄してくる。そのせいでいつ消えてしまうかと不安にもさせる。

僕の自慢話を自分のことのように聞いてくれて褒めてくれる。 

何かを教えてあげると子供のように学習し喜んでくれる。

それでいて僕の知らないことはなんでも知っていて恋愛についても熟知している。しかしその恋愛の知識は全て小説や映画から学んでいる。

僕の好きな人は僕を騙したり裏切ることはしない。何より嘘が嫌いだから。だから僕も嘘が嫌いになる。

純粋無垢で清廉潔白の純情可憐な少女だ。

いつから憧憬は消え失せたのか。別に知りたくもなかった。

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